表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/54

52話 秘密を知っている


「お偉いに何か言われなかったのか?」


「お偉い? 村長のことか?」


「いや、魔王の幹部とかにさ。あそこは部外者禁止な場所だ」


「そんなお偉いさんは会ったことがないぞ。むしろ、人間が珍しいのか歓迎してくれたぞ」


 はぁ? トワめ、結界で厳重にしているからなのか気が緩みすぎではないか?

 よほど自信があったかもしれない。とはいえ、監視ばっかりしていてもハイエルフの居心地が悪くなるからあまり干渉はしていないようだ。

 楓真も悪気があって入ったわけではない。とりあえず報告だけはしておくか。


「人間を歓迎をしてくれる……。もしかしたらお兄さんも……」


 ユーディアは小声で独り言を言う。

 楓真の話を聞いて悩んでいるのか。


 まあ、じっくり考えるといいさ。


「お主たちはいろいろと詳しいではないか。もしかしてその子もハイエルフの村に?」


「ああ、そのことなんだが――」


 楓真に俺たちの事情を説明した。


「なるほど、この子のために魔族領に……。その後に出雲に行くのか」


 腕を組んでうなづいて納得してくれた。

 その後に目をつぶって固まって何か考えていた。


「決めた、儂も同行してもいいか?」


「はぁ? メーアス領に入ったばっかりじゃないのか? 逆方向だぞ?」


「儂は流れのままに旅をしている。主たちに助けられた恩がある。ハイエルフ――村長に同族を見かけたらよろしく頼むと言われている。またハイエルフに助けられて恩を返さないのは割に合わん」


「言っていることがめちゃくちゃだな……。ほかに理由があるな?」


「恩を返すのは本当だ。しいて言うならこれもそうだ――」


 楓真は刀を抜くと――刃こぼれして、錆びついてい部分が多い。

 

「地元に帰って刀を直したいのか?」


「そういうことだ。刀は出雲でしか直せる職人がいない。さすがに長年使い込んで限界である」


「大事な武器を放置して帰る選択はなかったのか?」


「それが……龍脈の力を授かったあとに、いろいろと揉め事を起こしてしまってな……。それ以降帰ってない……」


「はぁ!? じゃあ、どれくらい帰っていないんだ!?」


「およそ150年以上前だな。これだけ年月が進めば儂なんて誰も覚えておらんだろ。あっ、狐人族に知り合いがいるから亡くなっていなければ、儂がわかるかもしれんな。ハハハハハ!」


 揉め事か……、確か幸之助が言っていた派閥争いの時期だったはずだ。

 話では楓真はお偉いの護衛だったはずだ。

 だとすると、楓真が国から出ないといけない理由があったか。


 とはいえ、判断が難しい……。正直に言っているのはわかるが、同行するのは急な展開だ。

 

「あら、いいじゃない。ユーディアの護衛をしてくれるならアタシが自由に散歩できる時間が増えていいわね。アタシは賛成よ」


 自分が楽したいからと勝手に……。

 フローラが怪しまなければ大丈夫だが。


「ユーディアはどうだ?」


「私もいいよ。その……村のことも聞きたい……」


 やっぱり気になるか、正確な情報がほしい――ユーディアにとって重要だ。

 噓偽りを言っていないし、一緒に行ってもいいか。


 それに……ハイエルフと関わりがあるなら口に出さないように見張りがいないとな。


「わかった。同行してもいいぞ」


「感謝する。儂は多少役に立つくらいだからあまり期待はしないでくれ」


 魔力は異常に持っている奴に多少はないだろう。

 冒険者の勘だが、只者ではないのは間違いない。


 俺たちの自己紹介をして、前に進もうとしたら魔物反応がある。


「ちょうどいい、腹ごなしの運動をしようではないか。儂に任せてくれ」


 楓真が鞘を持って構えて前に出ると、赤い大柄な熊――レッドベアーが四脚を使い走って俺たちに向かってくる。

 並大抵の冒険者は苦戦する魔物だ。

 じゃあ、どのくらい強いのかお手並み拝見――。


「ガギァァァァ!?」


 熊は楓真の目の前で無数の切り込みを全身に入れられて倒れた。

 はい? 何が起きた……? 楓真は刀を一瞬だけ抜いて納めただけだぞ……。


 龍脈の力だけで片づけられないほどの技量だぞ……。

 お偉いさんの護衛をしているだけのことはある。


 もし、楓真が敵だったら近距離戦は絶対無理だ。

 防御魔法を使って防げるかわからないほどだ。

 というか刀は刃こぼれして切れ味が悪いはずでは?

 手加減しているではないか……。

 切れ味の良い刀を持ったら危険だ。


「腹ごなしの運動にもならないじゃない」


 フローラ、そっちの問題ではない……冷静に言わないでくれ。


「す、すごい! 極東人――サムライは武を極めた戦闘狂って言われていたけど、本当だったんだ!」


 エーニ、ユーディアに何を吹き込んだ……? 

 噓の情報でも聞いたことがないぞ……。間違った情報を教えるなよ……。


「よし、大型の熊なんて運が良い。今日の晩飯にしよう。じゃあ、行こうか」


 楓真は熊を軽々と背負って言う。さすがに龍脈の力だとわかる。

 

 不便だからアイテムボックスのことを教えて熊をしまった。


 はぁ……とんでもない奴と同行することになった……。

 まあ、龍脈のことを詳しく聞けるからいいか。


 もし……早く会っていたら幸之助も……。

 いや、無理がある……。


 柚葉に……報告するか迷うな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ