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51話 極東人


 外観は無傷で魔物に襲われてはいないが、気がかりなのが……底知れぬ魔力を感じる。

 極東人で間違いないが、本当に人間なのか? 魔族やエルフ――狐人族である柚葉より魔力を持っている……。

 こいつ、俺たちと同じ不老だ。

 柚葉にいろいろと聞いたがこんな奴は聞いたことがない。

 いや、もしかして――。


「大変、人が倒れている!? 大丈夫ですか!?」


「待ちなさいユーディア、罠かもしれないわよ。魔力を異常に持った奴なんて怪しすぎるわよ。この場面に749回出くわしたアタシにまかせない」


 フローラは気づいて警戒はしているようだ。だから749回とか数えていないだろ……。

 

 フローラはおそるおそる近づくと――。


「クッサ!? なによこいつ、ポチよりクサイじゃない!?」


 においがきつかったのか男の頭上に浄水魔法をかけてしまう。

 あっ、体が反応した。

 

「腹減った……」


 空腹だけかよ。このまま放置したら後味が悪い。

 聞きたいことがあるしな。


「ちょうどいい時間だし昼食にしよう。お前も食べるか?」


「め、飯……」


 返事はするが、動く気力はないか。


「フローラ、風魔法で運んでくれないか? あと服を乾かしてくれ」


「はぁ~、しょうがないわね。サムライ、運が良いわね。この美女が運ぶのだから感謝しなさい」


 風魔法で男を浮かせて街道から外れ、芝生に移動して昼食の用意をする。

 男をうつぶせに置くと服はすでに乾いていた。

 

「いっぱい作ってよかった!」


 ユーディアは収納鞄に入っている作り置きした大量のサンドイッチを出した。

 男の顔の近くに置くと、目を開いて急いでサンドイッチを取り、大きく口を開いて食べた。


「美味!」


「よかった! まだまだあるから食べて!」


「美味美味美味!」


 あっという間に平らげてしまい。俺たちに座礼をする。


「見知らぬ(オレ)に美味な食事を与えてありがとうございました!」


「お互いさまだよ! 気にしないで!」


「やはり、ハイエルフと出会うといつも優しくしてくれる! 本当にありがたい!」


 ユーディアをハイエルフとわかるのか……。

 出会うとか知っている口ぶりだ。


「おい、今この子をハイエルフと言わなかったか?」 


「そうだが? 何か言ってはいけないことなのか?」


「ここの領ではハイエルフは絶滅していると認定されている。もし、ばれると大変なことになる」


「そうなのか!? それはすまない、メーアス領には入ったばっかりでわからなかった」


「俺たち以外にハイエルフと会ったことは話すなよ」


「もちろんだ。もし、約束を破ったなら切腹しようではないか。あっ、儂は腹を切られても死なない体だった。ハハハハハ!」


 自分で指摘して納得している……。

 というか極東人は責任を負うと腹を切る? 

 瞬も失敗したら切腹して詫びるとか初め聞いたときは引いた。


「道端で倒れるほど腹を空かせて食料はどうした?」


「予定より食料の減りが激しく、すっからかんになってしまって限界で倒れてしまった! この体になったら食欲が抑えきれないのは困るが、運は良くなった! 危ないときはすぐに助けられるからなハハハハハ!」


 また自分だけで納得している。 

 

「なぁ、名前を聞いてもいいか?」

  

「儂の名前か? 大榊楓真(おおさかきふうま)だ」


 マジかよ……男の名前を聞いて驚いてしまった。

 まさか出会うのは偶然か……?


「この底知れぬ魔力は……龍脈の影響か?」


「龍脈を知っているのか!?」


「ああ……親友と探した……。お前のことも親友が話してくれた……」


「なるほど……。お主の親友にか……。病気で探したか……。親友はどうなった……?」


 察しておそるおそる伺う。俺は首を振って答える。


「そうか……。大変だったのであろう……。天国でゆっくり休んでいるさ……」


「そうだといいな……。なんで病気とわかった?」


「龍脈を追い求めるなんて、病気になった者しか考えられんよ。まあ、儂の経験談だ」


 なるほど、こいつ――楓真は病気になって龍脈で治したってことか。

 

「その代償が食欲ってことか」


「そのとおりだ。だが、このくらいの代償なら軽すぎるけどな……」


 楓真は言葉が詰まる。何かいけないことを言ってしまったか?


「まあ、とにかく、似た者同士――寿命が尽きらない者同士に助けられるとは何かの縁ではある」


 俺とフローラもわかったのか。ユーディアもそうだが【魔力感知】が並大抵ではない。


「お前、種族は人間だよな?」


「いかにも、龍脈で力を授かった人間だ」


 やっぱり龍脈の影響か。

 なるほど、不老が以外にも力もくれるのか。


「じゃあ、ユーディアがハイエルフとわかった? というか会ったことがあるのか?」


「実は、魔族領に迷い込んでしまって、お腹を空かして倒れたらハイエルフに助けられて、村にお世話になった」


 おいおい……ハイエルフが住む村に行ったのかよ……。

 村に入れさせるとかあり得ない――部外者は禁止されていると聞いているぞ……。

 しかも村の周りに幻惑の結界が張って見つけるのも不可能と聞く。


 まさか、これも龍脈の影響で無効にされているのか……?

 とんでもない奴に出会ってしまった。

 

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