49話 密会……
ベオルクに代わってエーゲルが話してくれた。
教皇にこの件に問い詰めたが知らんぷりし、話しにならなかったみたいだ。
ユーディアの件も、部下がやったことで自分は悪くないと一点張りという。
聖審教会がやりたい放題なのがわかった――王様でもあるアレクに好みのある女を使って利用していたということだ。
この件の契約――サインもそうだが、情報も漏らしていると判明した。
ほとんど密会だとわかった。
けど、アレクは――。
「今回は私に不備がある! ガラマサ枢機卿にはしっかり言う!」
罰則をしないで現状注意だけの話になっている。
…………もうアレクに任せてはいけない……。
密会の時間ってあったのか?
俺たちがいたときなんてフローラがちょっかい出して相手していたが。
そうなると、俺たちが依頼でいないときに密会していた可能性がある。
そして、今はやり放題だな……。最悪だ……。
あれだけバカなことをやって現状注意とは王様失格だ……。
よほど関係を断ち切れたくないほどの好みな女を教会が用意したのかもしれない。
「先が心配だ……」
「我もそう思いますぞ……いい年して女癖が直らないのはおかしいですぞ……。むしろ、元気なのが不思議だ……」
エーゲルは深いため息がつく。
俺も思った。老いても元気なのは異常だ。最愛の妻を亡くして悲しまないで女を求めている奴だしな……。
「こうなったら早めにベオルクを新国王として即位させないと」
「同感です。女がらみで聖審教会と繋がっている陛下は頼りになりませんからな。まだ殿下がマザコンというだけで信頼はできます」
王国騎士はベオルクと活動しているから信頼は厚い。
ベオルクは良い意味で国――このメーアス領を変えていくかもしれない。
「問題が上がどう動くかだ」
「はい、陛下が教会との関係が浮き彫りになったので、教会に反対する貴族が殿下をすぐさま即位しろと動きますよ。ただ、つるんでいる貴族どもも黙っていません。陛下を守ろうとして今後は慌ただしくなります」
「教会につるんでいる貴族に守られているせいで今回の件は進展がなさそうだな……」
「そんなことはありません。問題を起こしたでグリッチ・ウォグデンはアオイに任せました。あの子爵は間違いなく裁かれるでしょう」
あいつが捕まるならいろいろとボロが出るはずだ。
とりあえず教会が大きく動くことは多少はないだろうと思いたい。
「はぁ……はぁ……二度とやるか……」
フローラは汗がびしょびしょになって、ゆっくりとイスに座った。
ベオルクはビンタされて顔が腫れているが、ご満悦だ。
「ありがとうございました。それで、フローラさん、お願いとはなんですか?」
「あの子――リネラを教会から守ってちょうだい……。あと私たちが雇っているから絶対に変なことはしないで……」
リネラを守るために我慢したのか。
先を考えているとは優しいじゃないか。
「詳しいことはまだわかりませんが約束しますよ」
これから事情を説明するが、まあ大丈夫だろう。
教会の内情は詳しく聞かされると思うが。
「ベオルクさん、あの……村のみんなは……?」
ユーディアはおそるおそる聞くけど、やっぱり気になるよな。
「今、調査中だから心配しなくても大丈夫だよ。子どもたちは聖審教会が絶対立ち寄らない場所に移動させたから安心してくれ」
「良かった……ありがとうございます」
まだ、日が浅くて進展はないが、すぐに調査しているのはさすがだ。
「そうだ、レオさんにも言わないといけませんね。子どもたちはエミリ姉さんにお願いしてダイネットに向かわせています」
「ダイネットということは柚葉に預けてもらうってことか?」
「はい、柚葉さんは面倒見が良いので適任かと、エミリ姉さんがしっかり説明するので安心してください」
確かに柚葉に任せられる。ダイネットは絶対に教会の奴らは行きたくない村だ。というか一般の者でも無理な場所だ。
柚葉に頼むのだったら「よろしく頼む」と手紙に書いてエミリに渡せばよかった。
「柚葉さんってお兄さんの知り合いの?」
「そうだ、ポチと一緒に旅をした親友だ」
「お兄さんの親友ならみんな大丈夫だね!」
この点には絶対的信頼をしてもいい。
仮に教会がダイネットに来たら恐ろしいことが待ち受けていると手紙で報告してきたしな。
「ダイネットね、いいじゃない。柚葉が作る羊羹が久々に食べたいわ。行ってない場所だし、予定として入れておきましょう」
「そうだな、先になるが、予定には入れておこう。ユーディアもみんなと会えるしな」
「やった、ありがとうお兄さん、フローラちゃん!」
そうなると、エミリと合流しないといけないか。王都は避けて違う場所で会うと手紙で送ろう。
「それと……レオさん……申し訳ございません……。父上の失態で……」
「過ぎたことは仕方ない。俺もいたとき気づかったのもある。これから頑張ればいいさ」
「あ、ありがとうございます!」
「期待しているぞ、次期国王陛下」
「はい! もし国王陛下になったらフローラさんを1日お借りして――」
「いやに決まっているじゃない!?」
「俺は構わないぞ」
「ちょ、何を言っているのよ!?」
「悪い、ベオルクをやる気にさせるためだ。自分のためだと思ってくれ」
「…………しょうがないわね……。ベオルク、死ぬ気で早く王様になりなさいよ! ただし、遅かったはなしよ!」
「ありがとうございます!」
これでベオルクのやる気が上がったな。
まさかフローラを1日貸すだけでやる気になるとは、お安い御用だ。
フローラには悪いが。




