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46話 気にしている


「フフフ、よろしくねリネラちゃん。滞在しているまでだけど、困ったらお姉ちゃんに行ってね」


 ユーディアは手を取り合って歓迎をする。

 自分より年下と思っているのか。


「何かと勘違いしているが、私は18歳だ」


「えぇ!? 私より年上なの!? 私よりも背が小さいから年下かと思った!?」


「見た目で判断しないでくれないか? 背のことは少し気にしている……」


 成人はしていると思ったが、18歳か。まあ、俺たちからしたらまだまだ子どもである。

 多分、幼少期にロクに食料を食べさせてくれなかったと思う。

 いや、今でもそうか。瘦せていて肉があまりついていない。

 腕は申し分ないリネラだが、配属の奴を送り込まないということは依頼主であるグリッチ・ウォグデンは大金をはたいていないようだ。

 

 だから安上がりの信者とリネラを使ったかもしれない。

 もし、ウォグデンが高額を出していたら俺が来る前にカロメンは暗殺されたかもしれない。


 ある意味運が良いが、大迷惑だったのは間違いない。


「ユーディア、まだまだなようね。アタシは成人していると見抜いていたわよ。成人の魅力がわかってないようね」


 その成人の魅力とはなんだ? 確かにフローラなら魔力で年齢を当てられてるが。


「背はともかく、ベリアミスたちに怪しまれないようにしないとな。悪いがリネラ、今日はテントで休んでくれ事情は歩きながら説明する」


「了解した」


 歩きながらリネラに俺たちの自己紹介をして、湖に戻るとベリアミスとサイフォードはまだイチャイチャして自分たちの世界にいた。


 俺たちがいなくなっても気にしていないとは……。ある意味都合が良い。


「そろそろ、戻ったほうがいいぞ。父親が心配するぞ」


「そうですね。名残惜しいですが、帰りましょう。あら? 隣にいる子は誰ですの?」


「今、話すことができない。明日カロメンに相談する。その後にわかるぞ」


「訳があるなら仕方がありません。わかりました。では私たちはこれで――」


 模索することなく兵士たちとこの場を去る。


「私を疑わず行ってしまうとは……。どういうことだ……? 私を怪しく思わないのか……?」


「俺たちが信頼できるからだと思う。そう思ってくれ」


「あなた方はいったい何者なんだ……?」


「お兄さんとフローラちゃんは魔王さんと和平条約を結んだ勇者メンバーだよ」


「ゆ、勇者メンバーだと!?」


「教会にとっては憎き敵だろうな。嫌ほど聞かされてないか?」


「そうだ、特に勇者マクエは教会の裏切り者と言われている。暗殺対象にもされている。見つけた者は返り討ちにされたと言われた」


 やっはりマクエは標的にされているか。

 ん? おかしいぞ。


「ちなみに見つけた場所はわかるか? まさか魔族領とか入っていないだろうな?」


「魔族領なんて入れるわけがない。おそらくこのメーアス領にいるときだ」


 マクエめ、勝手にこっちの領に入って来るなよ……。

 見つけ次第説教してやる。


「ははーん、さてはレオ、あのクソガキに説教したいのでしょう? アタシも手伝うわよ」


 マクエのことだと喜んで引き受けてくれるよな。


「頼んだ。約束を破ったなら容赦なくやっていいぞ」


「まかせてちょうだい! フ・フ・フ……積年の恨み、晴らすことができるわ……」


 ()()恨みとかないくせにただ、からかいたいだけだ。

 愚痴は多いが。


「フローラちゃんが恨むほどの何が……?」


「勇者マクエ……大恩人に何をした……? やはり侮れない……」


 2人は深刻そうに考える。いや、真に受けないでくれ。


「気にしないでくれ。それより、体調は大丈夫か? あまり食べていないように見える」


「食事は限られてい物しか与えられてないぞ。硬いパン、干し肉、酸味が強い果実だけだ」


 食事まで管理されているのかよ……。

 洗脳されると、ただ従うしかないか。

 

「なんて酷いの!? それじゃあ、早死しちゃう! 今すぐに栄養のあるものを作るから待ってて!」


「私に気を遣わずとも――」


「いいから、おとなしく待ってて!」


 ユーディアは調理器具を取り出して野菜を切り始めた。

 ユーディアにとて放っておけない事案だ。


「はぁ……、あなた方はお節介にもほどがある……」


「素直に認めなさいよ。街に入ったら数えきれないお節介が待っているわ」


 フローラの言うとおりだ。これだけでお節介で言っているようでは身が保たない。

 これから普通を学んでいくのだから。


「できたよ! ゆっくり召し上がってね!」


 作ったのは野菜たっぷりのシチューだ。

 皿に盛りリネラに渡すと目が輝いていた。スプーンを持ちゆっくり口に運ぶと――涙を流して無言になって次々と運ぶ。


 今までよく耐えてきたな。普通なら壊れてもおかしくはない。


「まだ熱いからゆっくり食べて! あとよく嚙んで食べて!」


「ユーディア、シチューは飲み物だからよく嚙んで食べるのはわからないわ」


「固体が入っているから飲み物じゃないよ!?」


「いいえ、飲み物よ! とある偉人精霊はシチューは飲み物と断言していたわ!」


 だから、とある偉人精霊って誰だよ……。


「ハハハハハ! こんなに賑やかなのは初めてだ!」


 くだらないことを言っているとリネラに急に笑い出す。


「俺たちはいつもこんな感じだから気にしないくれ」


「そうなのか? けど、私には何もかも新鮮だ。あなたたちに出会って本当に感謝している」


「それは俺たちに再会したらにしてくれ。またここに戻って来るからさ。すぐには戻ってこないけどな」


「わかった。私はいつでも待っている。そのときは必ず恩を返す」


 まだ先の話だ。だが、あの教会とは比べものにならない充実な生活が待っている。

 その点は約束する。

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