43話 騒動後
「あの頃が懐かしいわね~」
フローラが過去話をしながら湖に向かっている。
それはいいんだが、ポチは大号泣していた……。
当時はわからなかったが今になると理解しているみたいだ。
「今度は柚葉を連れて行きましょう! きっと喜ぶわよ! あとエミリーとアオイと一緒にね」
柚葉はともかく、絵美里とアオイは関係はない。
ポチが見てもわからない。
それにしても柚葉か、最近会っていないが、何をしているだろうか?
まだ先の話になるが、この機に会うのもいいな。
王都にいるエミリに連絡して見るか。
湖の近づくたびに瓶や食べ残しのカスなどが、周りに散乱している。
これは酷いな……。自然をなんだと思っている。
環境破壊として教皇の責任として罰するしかなさそうだ。
俺たちは風魔法を使って拾いあげ湖に到着すると、濁って大量のゴミが浮かんでいた。
これはポチが怒っても仕方がない。
先ほどと同様に風魔法で拾い、隅々まで回収をし、浄化魔法を使い、濁った湖は瑠璃色で透き通り綺麗になった。
ひとまず解決した。
ポチは尻尾を振って喜んで湖の中に入った。
「あっ、待ちなさい!」
あとはオリオントに任せて俺はフローラとポチを遊んでいるところを眺めていよう。
◇ ◇ ◇
あれから3日が経つ。
信者はエゲインに来ることはなく追い払いことができた。
そしてカロメンは封鎖していた門を開放し、行き来できるようになった。
これで普段どおりの日常に戻れそうだ。
ちなみにポチはフローラのペットとしてカロメンに認定してもらい。攻撃対象から除外された。
あっさり承諾できたのは――。
「これ、ポチの住民税よ、喜んで受け取りなさい」
フローラはポチの甲羅に生えている結晶を取り外し、その一部――両手に持てるほどの塊をあげた。
この純度も申し分なく余裕で豪邸を建てられるの価値がある。
あげたら断ることにもいかないだろう。
あとは面倒事に起こさないようにお偉い――アレクにも献上をするつもりだ。
フローラからの贈り物は泣いて喜んで承諾してくれる。
門を開放したともにユーディアにポチを見せると――。
「私と同じ髪色で綺麗!」
と喜んでいた。怯えることなく平気だった。
ほかにもポチがジュエリータートルとわかると、見に来る人が多くなり人気者になった。
なぜか商人らも来て「ありがたや~」と言って拝んでた……。
その後、商人の間では商売繫盛のご利益をもらえる縁起物にされた。
まあ、変なことしなければいいけどな。
夜になり、街には戻らず湖でテントを張って今日は野営する。
もちろんフローラのワガママだ。今日の気分はポチと一緒に寝たいと。
落ち着いたことだ別に問題はない。もちろん、ユーディアも一緒だ。
安全は確保しているし大丈夫だ。大丈夫だが……。
「久しぶりの夜景は綺麗ね」
「ああ、とても綺麗だ。けど、もっと綺麗なのはベリアミス君だよ」
「もう……サイフォードったら……」
ベリアミスとサイフォードがいるのはなぜだ?
落ち着いたとはいえ、気が緩み過ぎではないか?
護衛の兵士を数名つけているが、領主の娘は別の問題だ。
ベオルクが来て安全の確認をしてからにしてほしい。
「「「けっ!」」」
イチャついている2人の姿を見て兵士たちは気に食わないようだ。
わざわざデートのためにご苦労さん、文句はカロメンに言ってくれ。
「ユーディア、あんなふうにはなってはいけないわよ」
「そうなの? ロマンティックでいいと思うよ」
「そういうことじゃないわ。いい、他人に迷惑をかける恋愛は論外よ。もし恋人ができたら他人にも気を使うのよ。恋愛マスターであるこの私が言うのだから絶対よ」
いつから恋愛マスターになった? フローラなんて恋愛したことなんて見たことないぞ。
「フローラちゃんって恋愛したことあるの?」
「数え切れないほどあるわよ。あの頃が懐かしいわ~」
噓をつくのはやめてくれ。けど、ユーディアはニヤニヤしながら言っているから本気では聞いていないようだ。
深夜になると、フローラはポチの甲羅の上に乗って眠りにつく。
俺とユーディアは焚火にあたってのんびりしていた。
「フフフ、フローラちゃんてば満足そうな顔をして寝て、風邪をひかなければいいけど」
「精霊は風邪をひかないから大丈夫だ。悪いな、フローラの冗談に付き合わせてしまって」
「大丈夫、フローラちゃんと楽しくお話できたからいいよ!」
「無理だったら受け流せよ」
「そんなことはしないよ。だって、毎日が楽しいよ」
満面な笑みで答える。
強がってはいないようだ。まだ旅をして浅いがいろんなことに触れて楽しんでいるようだ。
騒動は起きたが、ユーディアに何もなければ問題はない。
「これからも、いっぱい楽しい思い出を作ろうな」
「うん、期待しているよお兄さん!」
期待されては困るな……俺にプレッシャーが……。
期待に添えられるように頑張りますか。
その前に――。
「フローラ、起きてくれ」
「起きているわよ。念のために感知魔法を設置したけど、反応が出るとは本当に迷惑だわ」
念を入れて本当に正解だった。かなりの速さで街に向かっている。
普通の人の速さではないぞ。
「悪いが、みんなを任せていいか? 俺は不審者を見てくる」
「もちろん、平気よ。早く片づけてちょうだい」
「お兄さん……気をつけてね……」
「心配するな。あの2人には言わないでくれよな。せっかくのデートを台無しにしたくない」
「わかった」
「よろしい、じゃあ行ってくる――」
このタイミングで不審者が来る目的はあれしかない。
本当に単純でわかりやすい。もう少し芸というものを学んでほしいものだ。
面倒だが、手間がかからないのはマシではある。
俺は急いで街へ向かう――。




