41話 親友との過去④
ポチを保護して3週間が経つ。
周辺の湖を全箇所をまわったが、何も起こらず終わった。
「ここには龍脈が流れるところがなかったか。まあ、しょうがないか」
相変わらず落ち込むことなく、前向きだった。
そもそも龍脈が流れている場所があるなら噂が流れるはずだ。
王都周辺は龍脈が流れている場所はない……おそらく何かしらの変動が起きてもだ……。
ここの領にずっといるが、地中に魔力なんて出ている場所なんて見たことがない。
あったらすぐにわかる。
「レオ様……ほかにありますでしょうか……」
柚葉はまだ諦めていなかった。ほかか……あるにはあるが、俺は行ったことのない場所だ。一応、遠い場所もチェックしてある。
だけど龍脈が流れている確証はない。
「ダメだぞ柚葉、依頼は王都周辺の依頼だからそれ以上は規約違反だよ」
「ですが……」
俺も納得してない。確かめる価値はあるか。
「俺は構わない。ここから少し離れるがいいか?」
「おお、そうですか!? では追加で――」
「俺が勝手に決めたことだ。金はいらない」
「ありがとうございます! やはりレオさんは優しいお方です」
「お世辞はいい。だが、幸之助の体力を考えると1ヶ所だけだ。それでいいな?」
「はい、問題ありません!」
幸之助は咳をしたりして体調を崩すことが多くなった。
これで見つからなかったら俺が探せばいい話だ。
ギルド連中には文句を言われるが、友のためと言えばいいだけだ。
情報であるメーアス領の中間にある湖に出発をした。
そこは一番俺たちがいる領で綺麗な湖と言われている。
もしかすると思って選んだ。
5日が経過し、ようやく着いた。
湖はかなり広く濁りもなく瑠璃色で綺麗だった。そして深さもかなりある。
心を奪われるほどの湖があるとは知らなかった。
しかし……魔力を感じることがなかった。ダメだったか……。
「ここになかっただけでも良い収穫です。またの機会にしましょう。レオさん、フローラさんありがとうございました」
俺たちに頭を下げて感謝した。
それでも幸之助は落ち込むことはなかった。
この様子だとまた探しに行くようだな。
まずは自分の体調を治してからだ。
その前に俺が見つけて楽をさせるけどな。
さて、予定どおりに次はポチを――。
「あっ、待ってポチ!?」
ポチは急に湖に駆けつけ中に潜っていく。
ほかの湖はそこまでではなかったが、ここはよほど気に入ったみたいだ。
もう奥に――見えないところまで行ってしまった。
フローラは追いかけて湖に入っていった。
しょうがない、戻ってくるまで待つか。
十数経過すると、ポチを持って慌てて出てきた出てきた。
「みんな大変よ、ポチが下に落ちている岩をむしゃむしゃ食べていたわ!」
岩を食べていた? ジュエリータートルは普通の岩は好んで食べないはずだ。
もしかすると――。
「なぁ、食べていた岩はどのくらいある?」
「大量にあるわ! ポチが食べきれないほどの量はあるわよ!」
フローラが言うなら間違いはないか。ポチが食べたのは火山岩なのかもしれない。
大昔にここ周辺は噴火に巻き込まれた可能性がある。周り――平地は風化してなくなっているが、湖の中――水中では風化せずに保つことができる。
そうなると、ここはポチにとって住める良い環境だ。
フローラにポチをここに置いていくと説明すると――。
「いやよ! もうポチはアタシのペットなんだから一緒にいるの!」
全然話を聞いてくれない。ダメだ、本気で飼うつもりかよ……。
「フローラさん、ポチは喜びながら湖に入っていきました。水と火山岩があるということはポチにとって最高の場所です。いくらフローラさんがなんでもできる精霊でも環境には勝てません。このままでは早死にしてしまいます。長生きをしてほしいのであれば、ここでのんびり暮らせた方がよろしいと思います」
「な、なんでよ……せ、せっかく……懐いていたのに……いやよ……」
幸之助が優しく言うと、フローラはボロボロと涙を流した。
自分でもわかりきっていたか。
「お辛いのはわかります。私はポチに長生きしてほしいです。基本的な寿命はわかりませんが、10年、20年――数百年と元気な姿がみたいです」
「な、なによ……、不死の体になってから言いなさいよ……」
「私は諦めませんよ。みんなで長生きして笑い合えたらいいなと思います」
「わ、わかったわよ……。じゃあ、みんなで定期的にポチと会いましょう……。絶対よ……」
「はい、約束します」
フローラはポチを手放すと、再び湖に入っていき、俺たちに振り向いて少し見つめると、中に潜って見えなくなった。
まさかワガママな精霊を説得できるとは思わなかった。いや、商人としての話術なのかもしれない。
とにかく、ポチの問題は解決した。
これで俺は幸之助のために湖を探すことができる。
………………。
…………。
……。
あれから1年以上が経つ。
俺はあらゆる場所――湖を探した。
結果は……全部からであった。早く探さないといけないという焦りがでる。
そして最悪なことが起きた――幸之助の体調が悪化して寝たきりとなってしまった。




