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38話 親友との過去①


 ――130年前の話。


 王都で俺とフローラは冒険者として依頼をこなしていた。ある日、奇妙な依頼が来た。

 周辺の湖を調査をしたいと、その依頼者がここでは珍しい()()()とのことだ。


 その依頼はみんな気味が悪く誰も受けなかった。遠いところまで来て湖と泉の調査なんて意味がわからないからだ。

 何か裏があると思っていた。


「あら、面白そうな依頼ね。レオ、討伐ばっかりで飽きたわ、たまにはゆっくり調査でもしましょう」


 フローラは勝手に受付を済ませて受けることになった。俺は面倒は嫌でキャンセルしようと思ったら、受付嬢に涙を流されてやめないでほしいと困っていた。

 周りの奴らも集まって「「「お願いします!」」」と頼ってきた。


 結局、半ば強制で受けることになった。俺はため息しかなかった。噂では極東人は傲慢で自分のことしか考えない野蛮な民族と聞いた。

 そんな人とは関わりたくなかった。

 早速受けると、受付嬢に応接間に案内されると、極東の服装――黒い羽織袴を着ている30代の黒髪の男に、隣には男と同じような黄色い羽織袴を着た黄色髪をした獣耳と太い尻尾をある若い獣人の女が座っていて、極東刀を持った2人と違う動きやすい青い羽織袴を着た長い黒髪をしばった20代くらいの護衛みたいな男が立っていた。


 俺たちが入ると、ソファに座っている2人は立ち上がり、腰の位置まで頭を下げた。護衛の男も続けて頭を下げた。

 そして頭を上げると笑顔で迎えてくれた。


 胡散臭いと思ったが、そうではなかった。男は俺に依頼を受けてくれたことに感謝し、その理由を丁寧に説明してくれた。物腰が柔らかく依頼主だった。

 俺の極東人がイメージは変わった。


 依頼主である男――飯田幸之助(いいだこうのすけ)は極東――出雲で商人をやっていた。しかし、派閥争いが激しく妻の狐人族の柚葉(ゆずは)、用心棒である青原瞬(あおばらしゅん)と一緒に国から逃げ出した。俺たちがいるジェイスト大陸に海を渡り、出雲と近隣のである龍国――龍宝(ロンパオ)に商人仲間の伝手で今までどおりに商人として働いて不自由なく生活していた。

 しかし、幸之助が不治の病が発症して長く生きられなくなったという。あらゆる手を尽くしたが、ダメだった。

 だが、まだ希望はあった。

 ()()――地中の魔力が溶け込んでいる湖に入れば病は消え、若くなり不老不死になると言われている。


 それで、この周辺に詳しい冒険者を紹介してほしいと依頼した。


 俺はそんなの迷信と思っていたが、20年前に極東のお偉いさんの護衛が()()が流れている湖に入ったところ、古傷が消えて老けた顔も若返ったと事例があったと話した。

 事例があるなら、そこの湖はいけばいいと話したが、その者が入ったら湖は消えてなくなり、空になる――1人限定と言われている。


 長く生きた俺とフローラでも聞いたこともなく、探すのは無理に等しいと言ったが、希望があるならと、頭を下げてお願いする。

 ここまで良い対応をすると断りづらくなり、湖の案内を引き受けた。夫婦は大変喜びで受けたお礼として報酬であるお金を渡してくれる。

 

 さすがに依頼が終わらないと受け取れないと言ったが。


「あなたは信頼できるお方です。私のわがままを聞いてくれる方にはすぐに払うのが道理です。どうか納めるください」


 前に払うと依頼を受けなく逃げ出す奴がいるのに、初対面で信用するとは……なかなかにお人好しだ。


 こうして俺たちは依頼を受けて幸之助が用意した馬車で湖に案内をする。

 とはいっても俺は地図に示した場所に御者に指示をして馬車の中でゆっくりするだけだ。


 別に俺たちがいなくてもいいような気がした。魔物対処に護衛もいて地図を渡せば必要ないと思った。


 まあ、魔物が多い場所にも行くし、護衛1人では厳しいところもあるか。


 俺たちの出番があるまで馬車の中でのんびりするのも悪くはない。

 

 最初は不服だったが、かなり良い依頼だ。フローラには感謝しかない。


 湖まで距離もあり、会話も弾む。意外だったのは護衛の瞬だった。最初は堅苦しいイメージだったが話してみると気さくで驚いた。

 噂では極東の武士は無口で部外者は関わりを持たないと言われていたが、まったくの大間違いだった。それを言うと瞬は大爆笑だった。


「異国の噂なんてそのようなものだ。拙者も遠方の者の噂では冷酷と聞いておる」


 他国としても同じような考えだった。結局、噂だった。 


 極東のことを聞いた――文化に食、価値観とか。

 なかなかに興味深い話だった。余裕があれば行ってみたい島国だ。

 まずはこの大陸の問題を片づけないといけない。


 馬車を止めて木影で休憩をした。


 柚葉はお茶の用意をして極東で食べられるお菓子――羊羹というものを用意して食べた。

 独特な食感で甘さが控えめだが、おいしかった。


 フローラは気に入ったみたいで、どうやって作るか柚葉に聞いたが、いろいろと面倒とのことで諦めた、


「私の妻しか作れない」


 と幸之助がなぜか自慢して、急に馴れ初め語り始めた。

 柚葉は狐人族の村長の娘で幸之助が惚れてしまい。猛アタックして的を射抜いたという。

 だが、村長の父が婚姻を認めてもらえず駆け落ち――大恋愛と、淡々と言う。


「その話はお腹いっぱいよ」


 とフローラは呆れて瞬は大爆笑だった。

 久々の賑やかで俺も笑ってしまった。こんな平和な日々が続けばいいと思った。

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