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35話 公認


 屋敷前に着くと、門番を兵士をしている兵士が不機嫌な顔をしていた。

 何かあったのか?


「これは……イチャコラカップルを見て嫉妬しているわね。これ以上妬むと一生独身ね」


 そんな奴周りにいないぞ。また変なこと言って――いたぞ……。


 庭でベリアミスと同じ白衣を着た大柄の男――金髪の青年魔族がお互い涙を流して抱き合っていた。

 フローラの言うとおり目の前にカップルがいた。まさか魔族と付き合っていたとは。

 堂々と庭で抱きつくなんてカロメンは公認しているとは思う。


「ハハハ……お二人にはいろいろありましたので、そっとしておきましょう」


 オリオントは察したのか、俺たちを促す。

 自分の世界に入っているなら邪魔はしてはいけない。


「朝からいいもの見せてくれるわね。あたしはもう少しでお腹いっぱいなるわよ」


「ふ、フローラ姫!?」


 2人は気づくと慌てて離れ、顔が真っ赤である。

 ここは空気を読むところだろ。


「ハハハ、外ではなく中で思う存分やってください……」


「申し訳ございません……。吉報でつい嬉しく……」


「すみません……。今朝、噂で解消されたと情報が入って、つい……」


「わかります。次から気をつけてください。特に恩人の前では」


「そうでした!? レイ様、フローラ姫、本当にありがとうございます! 貴方様方のおかげでウォグデン子爵に嫁がなくて済みました。またサイフォードと一緒に過ごせるとは思いませんでした」


「レイ様、フローラ様、私からもお礼を言わせてください。また我々を救ってくださり、ありがとうございます」


 ベリアミスは深く頭を下げて、サイフォードという魔族は片膝をついて頭を下げた。

 娘には不安にさせないようにもう伝えたか。


「まだ安心してはダメだぞ。喜ぶならすべてが解決してからだ」


「でもレオ様とフローラ姫が動いてくだされば、もう解決したも同然です!」


 絶対的信頼だな……。

 まあ、これ以上バカどもがやらかさないかぎりは問題ないと思う。


「あら、わかっているじゃない。ほっと褒め称えなさい」


 胸を張って慢心するのではない。

 調子に乗るとまた頼られるぞ。


「付き合っているのはわかるが、まさか商品開発の同僚か?」


「はい、サイフォードとは一緒に化粧品の開発をしています。こういう知識と技術は魔族に頼らないとわからないので、その中でサイフォードが長けていて協力をお願いしました。それで一緒にやっているうちに惹かれてしまい……その……、とにかく、お父様には公認されていますのでご心配なく」


 自分から言って恥ずかしくなりとは。

 確かに魔族は知識、技術は人間は超えられない。やはりベリアミスだけでは商品開発難しいか。


 じゃあ、不老の俺たちを羨ましがるのはサイフォードと長くいたいのかもしれない。


「けっ!」


 兵士が我慢できなく、吐き捨てるように声を出す。これは嫉妬してもおかしくない。

 というかあの兵士ベリアミスが好きなのか?

  

「それ以上言わなくていいわ。お腹いっぱいよ。あとは中でイチャついてちょうだい。約束忘れないでね」


 フローラに兵士をチラ見して俺たちは促されて屋敷の中に入る。

 気を遣っているのはいいが、もとはと言えばフローラからだぞ。


 昨日と同じように客間で待っているとカロメン入ってくると――。


「本当にありがとうございました! これで教皇とウォグデンの問題がなくなりそうです!」


 ベリアミスより頭を下げて感謝していた。


「あとはベオルクが次第だ。これ以上のことはできない。あとは自分たちでやれよ」


「もちろんです! お礼は――」


「いらない、俺たちの気まぐれでやっただけだ」


「し、しかし……」


「お礼なんてベリアミスが頼んだ化粧液で十分よ。アタシは安いお金は受け取らないわよ」


「化粧液だけでよろしいでしょうか……?」


「アタシがいいって言っているからいいの。レオもそうでしょ?」


「ああ、そういうことだ。ゆっくり休んで後処理をしてくれ」


「ありがとうございます……」


 これでカロメンも少しは安心するだろう。

 

「しかし、ベリアミスが魔族と付き合っているのは意外だな。カロメンよく許可を取ってくれたな」


「ベリアミスが好きになった男です。魔族か誰だろうが関係ありません。娘の幸せが一番です。ですが……お嫁に行くのは……辛いです……」


 ボロボロと泣いてしまった。公認でも結婚まだ早いってことか。


「ですが、娘が魔族と結婚すれば、魔族と共存できる証明にもなり、周りにも認められやすくなります」


 確かに貴族の令嬢が魔族と結婚なんて聞いたことがない。

 これが広まれば事情があって結婚できない人間と魔族のカップルの懸け橋になる。


 ほかのお偉いより考えているのは感心する。


「――カロメン様、大変でございます!」


 急にドアが開くと兵士が慌てている。

 おいおい……また何かやらかしたのか?


「信者が侵入でもしたのか?」


「い、いえ、違います! み、湖の主が街に向かってきています!」


 まさか湖の調査をしようと思ったら主が現れるのかよ。

 しかし……このタイミングで向かってくるとは、あいつら……まだ決まったことではない。


 俺も見に行かなければ――。

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