33話 最低限
部屋に戻り、まずは手紙を書かないと――。
「レオ、ベオルクの手紙はアタシが書いて送るわ。そのほうが楽よ」
珍しく手伝ってくれるとは意外だ。信者の件も手伝ってくれるし、機嫌がいい――ここを気にいったようだ。
スイートルームに泊まれば嫌でも機嫌が良くなるか。
フローラはなんだかんだ、まともに書いてくれるから意外に助かる。
「じゃあ、任せた」
「任されたわ!」
――商都のギルドに手紙を書いてあとは送るだけだ。
「できたわよ。確認のために目を通して」
どれどれ――俺が言ったことはしっかり書いているが……最後のほう大丈夫か?
「問題なが最後の「早く成果を出したらお礼をしてあげる」はちょっとマズいじゃないか?」
「ベオルクが早く仕事させる魔法の言葉よ。この街が大変だからこのくらいしないと」
「確かにお礼のためにすぐに行動するが、また王妃になって抱きつかれる覚悟はあるのか?」
「ないわよそんなの。リップサービスなものよ。せがんできたら「仕事が遅い」って言うわ。けど、変身して褒めるだけのことは考えてもいいわ」
こういうときこそ悪知恵を働かせて上を動かすのは、ある意味怖いもの知らずだ。
フローラしかできない――特権だな。
エゲインのためには大いに助かるが終わったあとは俺は知らない。
あとは送るだけだ。
アイテムボックスから事前に紙に描いた魔法陣を出して手紙を上に置いて魔力を注ぎ――転送が完了した。
暇ができたとき描いて正解だった。今後も送るようなことになるだろうし、時間があるときに量産しないとな。
さて次だ。宿を出て門の方に移動する――。
門前に来ると外でギャーギャー騒いでいる声が聞こえる。
こんなに罵声が響いてよく兵士は耐えられるな。そのうち病んでしまうぞ。
「昨日よりピーピーピーピーうるさいわね。近所迷惑でいやになるわ」
近所迷惑よりもっと酷いけどな。
「レオ様、こちらにご用ですか?」
昨日話しかけてくれた兵士が話しかけてくる。
「ああ、信者がうるさくて見にきた」
「申し訳ございません……。私たちにはどうすることができません……。しかも教皇が姑息な手を使い信者を追い払うことすらできません……。城壁を上ってくる者もいて侵入してしまいます……」
「だろうな。だから俺たちが少しだけ手伝う。ちょっと待っていろよ」
俺は風魔法を使い、高く飛び――城壁の上へ。
「レオさん!?」
見張りをしていたデニーツが急に飛んできた俺たちに驚く。
「調子はどうだ?」
「最悪ですよ……。本当にマズいですって……。手出ししない話になっていますが……このまま放っておくのは危険です……」
城壁の下を見ると、信者集まって、踏み台にし半分以上、上っている。
昨日より数が増えている。しかも、鈍器を持つ奴が多く、壁の叩いている。
門の扉では斧で叩く奴もいる。
もはや狂信者だ。
「安心しろ、侵入はさせない。フローラ、城壁の強化をしてくれ」
「はいはーい」
俺は城壁に先端に魔法で見えない防壁――ネズミ返しを周りながら取り付ける。
フローラは、床に手を当て、城壁全域に魔力――防壁魔法をコーティングさせ、さらに沈黙魔法を城壁の外に発動させて、信者の声が聞こえなくなった。
とりあえず憂鬱な思いをして済むだろう。
信者は魔法で固めたのに躊躇わず城壁を破壊したり、上ってきたり、叫んだりするが、もう無意味だ。
俺たちがいるかぎり壊したり侵入はさせない。
「す、すごい……こんな簡単に魔法で城壁を強化した……」
「やることはやったぞ。見張り頼んだぞ」
「は、はい! ありがとうございます!」
魔法で固めたが確認のために様子は見る。壁と扉を破壊を試みようとするが、弾かれてしりもちをつく。
上っている奴は何か訴えているが聞こえない。
そして、ネズミ返しの前に近づくとにやついて勢いよく先端に手を掴もうとするが、ネズミ返しに手が当たりバランスを崩して次々と落ちていく。
腕を組んで見ていたフローラは鼻で笑う。
「ふっ、シロアリでも魔法を把握できると思ったけど、ただのバカね。ゴミのように落ちるのは滑稽ね。レオ、面白いことしたわね。褒めてあげる」
「それはどうも、フローラの魔法も相変わらず完璧だな」
「そ、そんなこと言われても……な、何もでないわよ……」
顔が赤くなりもじもじする。
逆にその反応は困る。突然言った俺が悪いが。
落ちた信者は悔しがってまた上り始まる。何度やっても無駄だ。
「とりあえず街の安全は確保できたな」
「そ、そうね。もうすぐ昼食の時間になるわ。戻りましょう」
俺とフローラじゃ城壁から降りると下にいる兵士たちが集まる。
「レオ様、フローラ様、ありがとうございます!」
膝をついて敬意を払う。
「まだ解決はしてないぞ。あくまで防衛を強化しただけだ。気を抜くなよ」
はっきり言ってたいしたことはしていない。
俺たちはゆっくりしたいから手伝っただけだ。
あとはカロメン次第だ。
宿屋に戻ると、ユーディアがイスに座って待ってきた。
俺たちに気づくと厨房の中に入りジャガイモのキッシュを持ってきた。
「おかえりなさい! 出来立てだから食べて食べて!」
俺は切り分けしたキッシュを取って食べた。
おっ、チーズが入っておいしい。




