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32話 男爵の判断


 あの教会は俺が知らない間にこんなに好き勝手やっていたのか……?

 俺はあいつらには面倒だからと情報に傾けないのが悪いのはあるが、ここまで酷いとは思わなかった。


 今からベオルクに手紙を送っても間に合わない。

 王都から急いでも1週間以上はかかる、

 

「最悪な状況だな……」


「まったくです……。ただ……他にもウォグデン子爵から手紙が来まして……ベリアミスとの婚姻を考えてくれるなら教皇に話をして信者の抗議をやめさせてやってもいいと書いてありました……」


「ウォグデン……あの無駄に横に長い中年のグリッチ・ウォグデンか。そいつが今回の黒幕か?」


「うえ~、あのクッサ~イデブのことね。二度と近寄りたくないわ」


 フローラは、はっきりと言ったな。

 王城の晩餐会のときに、骨付き肉を片手に持って鼻息を荒くし、興奮しながらフローラに近づいてきたことがある。

 フローラはもちろん――。


「クッサ、近寄るな!」


 と言って水魔法で滝のように降らしてずぶ濡れにさせたことがある。

 あいつは怒ると思ったが、逆に興奮して喜んでいた変態だったな。  


「間違いありません……。何度も婚約の話をしてきましたが、お断りしてきました。まさか教皇と繋がっているとは思いませんでした……」


「金を払ってまでベリアミスと結婚したいのか。いや、あの捨て駒の信者を使えば安上がりで動かせるか」


「やはりそうでしたか……。魅力的な女性なんてこの世にたくさんいるのにどうして私の娘に……。商都(コルランド)にいる(ティティエ)が帰えれない……」


「ティティエが商都って……大丈夫なのか? というかなぜ商都に?」


「ご心配なく、妻には護衛がついていますので心配いりません。ベリアミスが作っている試作――化粧品の打ち合わせで行きました。妻が営業を担当をしておりまして好評なら工場で生産します」


 だから商都か。

 護衛がいてもかなりマズいな、聖審教会が活発に動いている場所だ。

 ばれたら狙われる。


「オリオント、商都のギルドに手紙を送ることは可能か?」


「この状況では厳しいですね」


「わかった。念のため、俺が魔法で商都の冒険者ギルドに手紙で送ってティティエを匿うようにお願いするがいいか? 金の心配はいらない。あそこのギルドでは恩を売っているからな」


「本当ですか!? ぜひお願いします!」


 カロメンは頭を下げた。


「俺はこの街の繁栄を願っている。気にするな」


「本当にありがとうございます! しかし……私も決断しなければなりません……」


「おいおい、娘を嫁に出すとか言うなよ?」


「これ以上悪化するなら視野に入れるかもしれません……。けど……大事な娘を渡したくはありません……」


「親としての判断ならそれが普通だ」


「私はたまたま成り上がった貴族です。貴族としての判断はできません……。本当に情けないです……」


「俺はその選択は間違いと思う。まあ、俺が言える立場ではないけど」


「そんなことはありません。妻のこと――どうかよろしくお願いします。もしよろしければ成長した街の姿を見てください。工場の見学できますので暇があれば立ち寄ってください」


 こうしてカロメンとの会話が終わり、屋敷から出た。


「ほんと、貴族ってめんどくさいわね。アタシなんか魔法で消し飛ばすのに」


 そんなことができれば貴族社会が崩壊してしまう。

 まあ、フローラに一理あるが。


「それが楽ならどれだけいいことですかね……。困りましたね……信徒を危害を加えない条件とは無理があります……。城壁を登ってきたら最悪です……」


「とりあえずこの事は兵士が冒険者に伝えると言っていたんだから帰って寝ろよ」


「はい……。しかし不安が……」


 オリオントがため息をばっかりついていた。大変なことだろうが寝ないと体が持つわけがない。


 別に危害を加えないで撃退する方法があるが、そうなると俺たちが目を付けられる。

 ユーディアの件もあり、できるだけ目立ちたくはない。


 はぁ……しょうがない。最小限のことはするか。


「わかったよ、手紙を送ったら少しだけ手伝う。お前はゆっくり寝ていろ」


「いいのですか……?」


「心配するな、危害を加えられないように魔法で細工するだけだ」


「ありがとうございます……。レオさんが手伝ってくれるなら安心して眠れます」


「しっかり睡眠を取れよ」


「しょうがないわね。レオがやるならアタシも手伝うわ。感謝しなさいよ」


「フローラ嬢……本当にありがとう……」


「つ、ついでだからね! つ・い・で! まだ感謝するのは終わってからにしてよね!」


 なぜそこでツンデレになる? 

 長年の付き合いでも不思議である。


 それはいいとして、手紙を送るため宿に戻る――。


 裏の扉から入ると、ユーディアはフェリシアとエレーゼと一緒にジャガイモの皮むきをしていた。

 もうすっかり馴染んでいるな。


「おかえりなさい。これからジャガイモのキッシュを作るんだ。よかったらお昼に食べてね!」


「キッシュか、それじゃあ、昼食前には終わらせないといけないな」


「またどこかに行くの?」


「冒険者と兵士の手伝いをすることになった」


「そっか、じゃあ、とびっきりおいしいの作るから待っているよ!」


 ユーディアは張り切ってジャガイモの皮を早くむき出した。

 張り切るのはいいが怪我はしないように。


 それじゃあ、さっさと終わらせるか。 

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