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28話 変わっていない……


 中はテーブルについて食事をしている人たちで賑わっていた。

 1階は食堂になっているようだ。


「いらっしゃい。って親父じゃないか。後ろにいるのはお客さんか?」


 エプロン姿で接客していたのは長い金髪をしばっている青年である。

 この子が、オリオントとフェリシアの子のようだ。髪色は母親で鋭い目つきは父親に似ているのがわかる。


「そうだポモロ。お母さんはどこにいる? お母さんの知り合い――恩人を連れて来たんだ」


「母さんならそこに――あれ、いない? エレーゼ、母さんはどこに行った?」


「お母様は奥にいます。呼んできますね」


 奥で受付をしている小柄で橙色のツインテールの髪型をした魔族の子がカウンターから離れて奥の扉の入っていく。

 

 数分経つと、魔族の子と一緒に出てきた……全然老けていないフェリシアだ。

 オリオントとそこまで歳は変わらないはずなのに20代の美貌保っているのは不思議だ……。

 そうだ、フェリシアの魔力は普通の人間より多く、老けづらい体質を忘れていた。

 今でも魔力は変わってなく、下手すれば100年以上は美貌を保ち長生きはするはずだ。


 俺たちと気づくと駆け寄ってきた。


「レオさんとフローラ、お久しぶりです」


「よっ、元気そうだな。全然老けていなく驚いたぞ」


「お互い様ですよ。2人も変わらないままで。依頼でこの街に来たのですか?」


「そのことだが、引退して旅をしている途中だ。たまたまオリオントに会って宿に紹介してくれると言ってな」


「旦那が私の宿を紹介してくれたってことね。ほとんど空いているから好きな部屋を選んでください」


「空いているって、まさかあれか?」


「察しのとおり、聖審教会どものせいで、遠方からのお客さんが激減しておかげで宿泊でのお金が稼げなくて困りましたよ」


 やはり街の影響が出ているみたいだ。本当にいい迷惑だ。


「ならスイートルームはあるかしら? 3人でよろしく」


「おい、勝手にスイートルームを選ぶな。連泊するから普通の二部屋で――シングルとダブルで頼む」


「野宿したから贅沢していいでしょ! たまにはスイートルームがいいわ!」


「ではスイートルームを半額で提供しますよ。二部屋と同じ金額になります」


「おいおい、いいのかよ? 半額にしたら割に合わないぞ」


「当分お客さんが来ないので安くするつもりです。それに恩人方にゆっくりくつろいでほしいです」


 フェリシアのご厚意ならありがたく使わせてもらおう。

 というか別々に寝ようと思ったが勝手に決めるな。まあ、スイートルームに泊まれるならいいか。

 今回はフローラのワガママに乗る。


「じゃあ、スイートルームで頼むよ。俺はまだ、オリオントと話があるから先にフローラとこの子――ユーディアを案内してくれないか?」


「わかりました。エレーゼ、案内よろしくね」


「かしこまりました。こちらです」


 魔族の子にフローラとユーディアは2階に上がっていった。


「しかし、父さんと母さんが恩人と言うこの方はいったい何者なんだ?」


「昔に言っていた。悠久の冒険者だよ」


「えぇ!? この人が!? 精霊と契約して不老不死で、勇者と一緒に魔王トワイライトに和平条約結んだという英雄様!?」


 ポモロが驚いて大きな声で言うと、賑わっていた周りの人が静かになった。

 そこまで驚かなくていいんだが……。


 すると、魔族たちが食事を中断して俺に駆け寄り、片膝をついて頭を下げる。


「レオ・セラナイト様ですね? 我々、魔族がメーアス領にいられるのは勇者一行――あなた様のおかげです。感謝しきれません」


 大柄の魔族が口に出す。

 そういうことか……なぜ門番の奴が俺のことを知っているのは魔族たちが言ったみたいだ。


「俺は勇者と一緒にいただけだ。感謝されることはしていない」


「そんなことはありません。あなた様が魔族に危害を加えることなくに我らの魔王――トワイライト様と交渉したと伝えられてます。謙遜する必要はありません」


 あー、事実を伝えられていたか。確かに俺が危害を加えないように魔王(トワ)に交渉した。

 魔族側は本当の話を伝えたみたいだ。だが、俺たちが住んでいる領は勇者が和平条約を結んだと伝えられている。


 その方が都合がいいからだ。別に功績や名声なんてどうでもいいから気にしてはいない。


 ただ、真実を知りたかった。なぜ、人間より長命種で力や魔力があるのに俺たちの住んでいる領を支配しなかったことだ。

 そんな力を持っている魔族が気になっていた。もしかしたらと思って聖審教会所属の勇者(マクエ)を利用して魔族領に入って確かめると、俺たちに怯えていた。

 逆に人間が恐ろしい存在と認識していた。だから誤解を解くようにトワに交渉した。


 元はと言えば、あの腐りきった教会のせいだけどな。もう考えたくはない。

 だが、マクエが聖審教会の洗脳から解かれて教会を吹っ飛ばしたのはせいせいした。


「もう昔のことだ。お前たちが人間と暮らしているだけで結んだかいがある。どうだ、人間と暮らして楽しいか?」


「もちろんです。トラブルなど起きてなく穏やかに過ごしてます。あの、もしよろしければお礼と言ってはあれですが食事を奢らせてください」


 律儀だな、まあ、ありがたく奢ってもらおう。


「何言っているのさ、食事代は宿泊費の中にはいっている。カッコつけて言うけど、奢らせはしないよ」


「オカミさんそれはないよ……。俺のメンツがつぶれたじゃないか……」


 フェリシアが言うと周りは大爆笑していた。

 賑やかで良い雰囲気だ。本当に和平条約して良かった。


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