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27話 元同僚


「大丈夫か!?」


 軽装の鎧を着た門番の人の男が駆け寄ってきた。俺たちは馬車を降りて確認をする。

 

「俺たちは何もされていないぞ」


「それは良かった。しかし……少女が飛んで魔法を使うとは……あなた方はいったい……?」


「この方――レオさんの契約精霊だ。俺たちはギルドの要請で街を守るために来た」


「契約精霊……レオ…………はぁ!? あの勇者――マクエ様と旅をしたレオ・セラナイト様ですか!? 勇者メンバーのレオ様が助けに来てくれたのですね!?」


 ん? なんで俺のことを知っている? 前来た時はそこまで有名ではないぞ。というかなぜか俺も要請を受けた感じになっている。


「悪いが俺は旅の途中で、たまたま馬車に乗っていただけだ」


「そ、そうですか……? てっきりこの街を救ってくれるかと……」


 門番は膝をついて落ち込んでしまった。

 手伝うのは確かだが、あまり期待させると後々面倒くさくなる。


「俺たちで不満かよ? だいたい依頼内容と全然違うじゃないか。契約違反にも――」


「その話は俺がする」


 デニーツが話している途中で割り込んできたのは50代後半の白髪で身長2mはある大男だ。


「なんだお前かオリオント」


「お久しぶりです。レオさん、フローラ嬢、相変わらず若いままで」


「あら、あなただったの。随分と渋い色男になったわね」


「俺たちは老いることもないからな。エゲインでのんびりすると言っていたな。調子はどうだ?」


 まさか、オリオントに会うとはな。

 オリオント・ブールは30年――王族と契約する前にたまにだが、ギルドの大型の依頼で行動をしていた。

 当時は20代後半で活躍していた上級冒険者だ。

 40代に入ると、体力が落ちてそのまま引退してしまった。俺的にはまだまだ現役でやれそうと思っていた。本人の意思ならしょうがない。

 引退表明したときは周りの冒険者が驚いてやめないでくれと泣き叫んでいた記憶がある。


「おかげさまで、ですが、引退しても忙しくて――」


「エゲインのギルドマスター、オリオントさんですか!? 詳しくお願いします!」


「ギルドマスター? お前、引退したんじゃなかったのか?」


「ギルド設立のとき、誰も立候補する者はいませんでした。一からギルドを始めるなんて誰もやりたくありませんからね。そこでちょうど、俺がいて無理やりやらされているわけですよ」


 うわぁ……最悪だな。引退した者に押しつけるのではない……。

 

「話を逸らしてしまった。お前たち、話はギルドでする。レオさんはどうしますか?」


 まずはオリオントの話を聞いてから男爵に会うか。

 知り合いがギルドマスターなら詳しく聞ける。


「俺たちも行く」


 オリオントについていくギルドに向かうことになった。


 それはいいが、なぜかユーディアは――。


「お兄さんが勇者一行で……魔王さんの友だちで……。そうか、だから魔王さんと友だちで……」


 いろいろと状況に整理が追いつかないようだ。


「俺はすごい奴ではないぞ」


「お兄さんがおかしいよ……。勇者一行って魔王さんと対話して和平条約を結んだ中の一人って……」


 その話は知っているみたいだ。昔の勉強をしているとは関心だ。


「まあ、なりゆきでやっただけだ。気になるなら話そうか?」


「今はちょっと無理かも……。いろいろと整理しないといけない……」


「あら大変ね。体調が悪いなら先に宿屋に行かないといけないわ」


 どうせフローラは面倒な話になるから先に行きたいだけだろうな。

 確かにユーディアのことを考えれば宿屋で休ませたい。長旅で疲労が溜まっているはずだ。


「でしたら俺の妻が経営している宿に案内しましょうか?」


「お前の奥さんが経営しているのか? 確かお前の奥さんはフェリシアだっけ?」


「はい、そうです。俺の妻も覚えていたのですね」


 いや、忘れるわけがないだろ……。

 フェリシアは当時は美人冒険者で何度も周りに口説かれては断っていた鋼の女だ。

 自称美女のフローラでも認めるほどの美女だ。

 だが、オリオントは違った。下心なく仲間と接して、それに惹かれたのかフェリシアが猛アタックをしてそのまま結婚した。

 それを機に冒険者を引退をした。結婚したあとも周りに嫉妬されてオリオントは少々大変だったと思う。

 あの頃が懐かしい。


「あの美女ね。アタシと同じカリスマ性があるなら繫盛してるに違いないわね。喜んで泊まるわ」


「フローラ嬢が即決してくれるのは光栄なことだ。そうだ、お前たちも泊まるといい。安くするぞ」


「では俺たちもお願いします」


 デニーツたちには申し訳ないが、先にフェリシアが経営している宿屋に向かう。

 それにしても街は大きくなったな。俺が前来たときは周りが殺風景で街というよりは村の部類だったが、しっかり整備されて人や建物が増えて活気に満ちている。

 なによりも角が2本生えている魔力の多い人――魔族が中に溶け込んでいることだ。

 そう考えると和平条約したかいがある。この街が魔族を受け入れているおかげでもある。


「着きましたここがその宿です」


 住宅街に入るとオリオント足を止めた。

 ここまで立派とは……。周りは木造住宅なのに場違いな石でできた2階建ての横長の建物だ。

 軽く50人以上は泊まれるほどの広さはある。しかも木でできた扉の隣に置ていてある看板には「鋼の心」と書いてあった。

 宿屋にしてはネーミングセンスが……。


「立派だけど鋼の心なのに石の建物なんだ」


 フローラ、そこをツッコムところではない。もっと違うところがある。


「みんな名前に対して言いたいところがあるが、気にしないでほしい。これでも妻が必死に考えた名前だから」


 問題なのは宿の中だ。ここまで立派なら期待はできる。扉開けて中に入る――。

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