22話 お別れ
食事を終わり、お別れの時間となった。ベオルクが用意してくれた馬車に子どもたちに乗った。
「みんな、ごめんね……。けど……必ずまた会えると信じているから……」
子どもたちはユーディアが一緒にいけない事情はベオルクに聞かせれており、わかってくれているみたいだ。
けど、別れるのはやっぱり嫌で出発する最後まで離れなかった。
「この子たちは安心して暮らせるように保証するから心配しないでくれ」
「ありがとうございます……。ベオルクさん、お願いしてもよろしいでしょうか……?」
「なんだね言ってごらん」
「もし、お母さんのお金を取り戻したら、そのお金でみんなの生活費として使ってほしい……」
「そんなことはしなくていいぞ。聖審教会から賠償を支払ってその金で賄える。その心配はいらない」
「ダメです。これはお母さんと私の問題です。みんなを巻き込んでしまった責任です……」
別にユーディアとエーニの責任ではない。あのクズどもが行った犯罪だ。
「わかった。君が気が済むのだったらこの子たちに使わせていただく」
「おい、ベオルクそれはダメだ」
「最後まで聞いてください。聖審教会から賠償分で賄えない場合は君の母親のお金を使わせてもらうよ」
そういうことか、多額の賠償だから金を使わなくても済む。ベオルクもわかっているな。
「お願いします」
「ああ、任せてくれ。ところで……」
ん? フローラを見てもじもじしている。あっ、そうだったあれを忘れていた。
「ちょっと待て、すまないがアオイ、いつもの――」
「はいはい、殿下はいつものですね。わかりました先に行ってますね」
アオイはいつもので理解してくれた。子どもに悪影響だからな。
「みんな、またね!」
ユーディアは馬車が見えなくなるまで手を振って見送った。
見送った後に俺とフローラとベオルクはユーディアから離れてあれを――。
「フローラ、悪いが頼んだ」
「はぁ~わかったわよ。やればいいんでしょ――」
フローラは変身魔法を使い、今は亡き王妃――ベオルクの母親になった。
「よくやったかわいい息子よ。さぁ、思う存分抱きついて――」
「は、母上! あああああ会いたかった!」
ベオルクは変身したフローラに涙を流して抱きつく。
そう、生粋のマザコンである。
ベオルクが幼い頃――アマリアに甘えていたときに亡くしてしまい、ショックで落ち込んいた。
それでアレンに頼まれて何度もアマリヤに変身して元気づけていた。
年をとれば落ち着くと思ったが、重度のマザコンになってしまった。
もう20代後半になる息子にそろそろ結婚してくてと言うが――。
「母上と全部同じの人が現れるまで結婚しない!」
当分は独身を貫くようだ。
マザコンだけがネックだが、しっかり者で問題はない。
ただ……周りを気にしないで自分の世界に入るのはやめてほしい。
ドン引きしているぞ。
「あああ……母上……私はいっぱい頑張った……もっと褒めて……」
「ああ、よくやった……十分によくやった……」
早く終わらせたいのかフローラは嫌な顔する。
それ以上はやましいことはしないから大丈夫だ。
条件付きとして抱きつくだけにして、ベオルクに対して肯定的なことを言う決まりをしている。
まあ、それ以上は、うん、いくらアマリアになったフローラでも危ない橋を渡らせてはいけない。
フローラ、俺を見て「解放してくれと」目で訴えないでくれ、俺もどうすることはできない。
十数後、ようやく解放され元の姿に戻り、地面に倒れる。
かなりダメージを負ったな。
「はぁ、はぁ……もうこれで最後よ……。結婚相手早く探しなさい……」
「見つかるまでお願いします。あと、私の結婚式で母の姿を――」
「いやに決まっているでしょ!?」
さすがに結婚式はやめろ……。度が過ぎる……。
「そうですか……。少しは考えてくださいね……。では私たちはこれで――」
そう言いながらアオイたちの後を追う。こいつ……懲りないな……。
変なことが起きたが、ベオルクは信用はできる。
手紙で報告を待つとしよう。
「みんなにまた会えるといいな……」
見送り終わるっても動かずに不安そうな顔をする。
自分の立場からしてもう二度と会えないと思っているのか。
「大丈夫さ、ベオルクが解決してくれる。もし、教会が衰退するならみんなと会える。時間がかかるけど、それでも待てるか?」
「本当に?」
「まあ、保証はできない。だけどまた手紙を送って相談してみる。安全に会える方法なんていくらでもあるからさ」
「ありがとう、お兄さん。私、また会えると信じて、そのときが来るまで弱音を吐かない」
「我慢はしなくていいぞ。辛いときは辛いって言えよ」
「もう、お兄さんったら、私はそこまで子どもじゃないよ」
慰めようとしたら顔を膨らませて逆に拗ねてしまう。
それでも少しは不安を取り除くことができた。
また子どもたちと再会できる案を考えてベオルクに手紙を送るとするか。
口で言ったことは絶対守る主義だ。守らなかったら後味が悪くなる。
「はは、悪い悪い。じゃあ、俺たちもそろそろ行くか。その前に母親の墓で挨拶して行くか?」
「済ませたから大丈夫。いつでも行けるよ」
子どもたちと挨拶で忙しかったのにいつの間に?
俺たちも早く出発するから、済ませたのかもしれない。
「そうか、じゃあ、改めて出発するぞ」
「レオ……。抱っこして……」
「はいはい」
まだ深手を負っているフローラをおぶって、村から出る。
すると、ユーディアは村に振り向いて――。
「今までありがとう!」
大声で感謝を伝えた。
「さあ、行こう。お兄さん、フローラちゃん」
少し涙をこぼして笑顔で言う。
やっぱり、離れたくはないだろうな。辛いと思うが、その先は良い未来が待っていると保証する。
幸せを見つけるまで見届けるさ。
そのためにも目指すはここから北東の方角にある魔族領だ。




