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2話 契約終了


 ――2週間後。


 結局エレメントドラゴン――ゼフィルの手助けをした。


 お願いされたとき、目立ちすぎて無理だと言ったら、急に身体を眩しいほど発光させ――輝きが消えると、黒色のドレスを着た頭に漆黒の角2本と尻尾の生えたワガママボディの美女が立っていた。

 彼女曰く魔法の研究をして【人化】を取得したとのこと。

 はじめからその魔法を使ってくれと言ったが、花粉症で集中できなくて無理と言われた。

 

 被害報告は出ていないし、大目に見ておいた。


 ゼフィルは周りを荒らしたことにお偉いさんに謝りたいと言って、アレクの元へ――。


 謁見の間で謝ると――。


「美女だから許す!」


 とアレクは言って問題は解決した。お前……相変わらず女には優しいな……。

 ゼフィルは申し訳ないと思い、詫びとして自分の鱗を渡して迷惑料として受け取ってと言う。


 エレメントドラゴンの鱗は国宝級の素材だぞ……。

 国の財産1割を余裕で賄えるぞ。

 アレクは美女の鱗だと喜んで受け取り、城の客人――いや、客龍として好きなだけ泊まっていいことになった。


 その間に俺は花粉症対策としてゼフィルに解毒(デトックス)を教えた。

 人化の魔法は使えても回復系の魔法は複雑すぎて自分からは覚えなかったと言う。

 とりあえず最低限――基礎を覚えさせて家に帰る準備ができた。


 王都を離れて目立たない場所に移動し――。 


『何から何までありがとうございました。これで私の家に帰ることができます』


「今度から気をつけろよ。元気でな」


「また鼻水流して来るんじゃないよ~」


『さよならお二方、また会える日を――』


 俺とフローラは龍の姿に戻って空高く羽ばたいたゼフィルを手を振って見送った。


「ねぇ、レオ、本当にゼフィルに頼まなくてよかったの? 龍に乗って旅ができたじゃない?」


「そんな急ぎではないし、ゆっくり旅をしたいからな。遠出をゼフィルに付き合わせて迷惑がかかるだろ」


「しょうがないわね。じゃあ、この旅が終わったらゼフィルの故郷に行かない? なんか面白そうだし」


 王都から北西にある山奥に住んでいてエレメントドラゴン一同、歓迎するとか言っていた。

 大勢で歓迎するほどなことはしていないが、フローラの言うとおり龍の里なんてめったにない機会だ、面白そうではある。


「そうだな、すぐには行けないが予定には入れとくぞ」


「本当ね! 約束よ!」


 そう言うと空を舞うように飛んで喜んでいる。

 最初はバカにしていたフローラだが、すっかり仲良くなった。

 新しい友達が増えてよほど嬉しいみたいだ。


「じゃあ、用も済んだし、正式にアレクに報告だ」


「ちょっと待ちなさい! もう少し喜びに浸してよ!」


 ――昼過ぎ頃。


 謁見の間に入り、アレクは玉座に座ってゼフィルの鱗を顔に当て、スリスリしていた。


「ゼフィルちゃん……もう少し……いや、ずっといてもよかったのに……」


 アレクは見送りしたいと言っていたが、ちょうど会議があり、見送ることができなかった。


「元気出せよ、また来るだろ? いつかわからないけどな」


「ゼフィルちゃん……」


 まったく話を聞いてくれない。重症だ……昔と今も変わらない奴だ。

 早く終わらせたいし、いつものをフローラにお願いする。


「しょうがないわね――」


 フローラは変身魔法で、金髪のドレスを着た女性――今は亡き王妃の姿を変える。


「――あなた……ワタクシより龍女が一番かしら……?」


「ひぃ!? アマリヤ、ち、違う! ご、誤解だ!」


 その声でアレクは子犬のようにプルプルと怯えてしまう。老いて50後半の大人が何をやっている。

 この姿を周りに見られたらがっかりするだろうな。

 アレク・イース・ビクレクト、もっと王様らしくしろよ。お前の父――先王みたいに……いや、先王とみたいにまったく同じ性格をしていたな。

 親子揃って変わりはないのが残念だ。


「アハハ! また引っかかった! 情けない小僧だ!」


「なんだフローラちゃんか……。いつも驚かさないでくれ……」


 フローラは元の姿に戻り大爆笑し、アレクはホッとする。

 この行為は一般市民がやったら首が飛ぶ。気に入られているフローラしかできない。

 

 話を聞いてくれる状態になり本題に入る――。


「アレク、これで契約は果たした。約束どおり俺たちは旅に出るぞ」


「そのことですが、契約更新は……?」


「「ない」」


 恐る恐る伺うが、俺たちはハモルる。そんな都合の良い話はない。

 俺は()()という特別な称号を与えられているが、王族――貴族らの言いなりにはならない。先王の契約だけの条件だ。

 もし、破ったら終焉魔法をお見舞いすると言って脅して、下手に俺に口出しはできない。


「そうですか……。わかりました……。これにて悠久の守護者――レオ・セラナイト、精霊――フローラよ我ら王族との盟約を見事果たしてくれた。ご苦労であった。其方たちは自由に旅へ羽ばたくがよい」


 これで王族との契約を果たした。本当に長かったな。

 かなりこき使われたが悪くはなかった。


「なによ、上から目線で、いやになっちゃう」


「ごめんよフローラちゃん~、しきたりだからゆるして」


「まあ、いいわ。レオ、早く行きましょう」


「待ってください。レオさん実はお願いがありまして……」


「なんだ? 依頼なら聞かないぞ」


「ち、違います。よろしければフローラちゃんを1ヶ月……いや短すぎる、1年くらい預からせて――いや、フローラちゃんをください! お願いします!」


 切羽詰まったようにどけ座した。

 本当にブレないな……。その発言でフローラは口を空けて硬直する。

 というかなぜ俺に聞く? 親でも保護者ではないのだぞ。


「お前……フローラをお嫁にしたいのか?」


 無言で何度もうなづく。思っている以上に重症だ。

 まあ、契約者の俺が言うのもあれだが、フローラは人目につくほどの美少女の容姿ではある。

 アレクは女には目がないが、嫁にさせるのに小柄(ロリ)まで許容範囲とは……。


「だそうだフローラ、アレクに嫁ぐか?」


「却下、老け顔の小僧なんていやよ」


「フローラちゃんのためならなんだってするよ~。国の財産半分あげるからさ~」


 暴走しすぎだ……。

 こいつに(まつりごと)を任せられるのか……? まあ、しっかり者の王子(ベオルク)が危ないとき、いつも止めているし問題ないか。

 ほとんど女絡みだが。


「国の半分ね……。少し考えていいわよ」


 意外な返答だ。フローラにしては珍しい。


「本当に!? 考えているならまだ旅に行かないでここで考えなよ!」


「どうしようかな~。じゃあ、嫁ぐなら姿を変えないといけないわね――」


「ひぃ!? アマリヤ!?」


 再び王妃の姿になった。なんだ、からかいたかっただけか。


「アナタ、私を愛してくれるかしら?」


「フローラちゃん……アメリアの姿は勘弁してほしいよ……」


「あらそう、この姿で愛してくれないのは残念だわ。じゃあね小僧、気が向いたら会いに行くわ」


 そう言ってフローラは先に謁見の間を出た。

 フラれたアレクは膝をついて、この世の終わりかのような絶望した顔をする。

 どれだけ一緒にいたい……。


「フラれたならしょうがない、ほかの女を見つけろよ」


 俺はアレクの肩を叩いて後ろを振り向く。


「レオさん……」


「まだ言いたいことがあるのか? もういい加減――」


「今までありがとうございました。ゆっくり旅を満喫してください」


「おう、どういたしまして」

 

 謁見の間を出てるとフローラが腕を組んで待っていた。


「玉の輿も悪くはないわね。ちょっともったいないことしたかも……」


「本当に考えていたのか?」


「まあね、だってあの小僧の死期はあと30年くらいだもの。我慢すればアタシに全部財産が入るじゃない」


 まったく死期を細かく見たのか。

 フローラは、相手の魔力を見て死期を判断できる。もちろん、契約者の俺もわかる。

 相手の魔力が薄くなればなるほど死期が近くなる。

 とは言ってアレクは王都の中で平均寿命より長生きはするほうだ。

 30年は俺たちにとってはあっという間に過ぎる。

 だが、フローラの性格からしたら我慢できるかわからない。


「さらに老け顔になっても我慢できるのか?」


「あの小僧がさらに老けるなんて変態度が上がるだけじゃない。ならいいわ、諦める」


 変態なのは今になっても変わらないが、老いるのは関係ないぞ。

 確かにあの年でスケベ度はマシマシにはなったが。   


「そうか、しかしやっと終わったなー。急いで食材を買って王都に出るか」


「そうね、ギルド連中に見つからないように早く済ませましょう」


 まだ王都を出るまで自由ではない。面倒な奴に会ってしまったら――。


「これはこれは、レオ様とフローラ様ではありませんか」

 

 最悪だ、よりによってギルド連中より厄介な男に会ってしまった……。

 長い廊下をゆっくりと歩く40代後半の肥満体で、両手には宝石の指輪、首には豪華な首飾りをつけた奴が――。

 相変わらず聖職者の身なりをしている詐欺師め。

 

 聖審教会最高責任者――教皇のセインデ・ガラマサだ。

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