14話 落ち着かない少女
この事をフローラで念話で伝えると。
『もう解決したの!? なんだ、レオが早く行動すればすぐに終わったじゃない……』
少々拗ねている。
まだ解決はしていないけどな。
『そんなことはないぞ。昨日、フローラが魔道具を見つけなかったら俺は慎重に行動に移せなかなったぞ。これもフローラのおかげだ』
『へへへ、そうかしら~。レオが素直に褒めてくれた~』
そう言わないと、数日以上は拗ねるから俺が困る。
今回は散歩して上機嫌だから、そこまではなかった。
まあ、すぐデレてチョロくなるけどな。
『それで、村はすぐ出るつもりなの?』
『いや、今まで通り、長期滞在する。準備が必要だからな』
『まあ、いいわ。レオに任せる。それじゃあ、準備が整うまでゆっくりしているわ』
『そうしてくれ、だけど、夕日が沈む前には戻ってこいよ』
『わかっているわよ。山菜は期待して待ってね――』
これでフローラに伝えることができた。
さっそく、準備に取りかかるか――。
――ふぅ……とりあえず、やるだけのことはやった。
気づいたら、昼食の時間であった。
すぐに終わらせて料理を手伝いをしようと思ったが、さすがに無理だった。
食卓に移動すると、ユーディアは顔を膨らませてイスに座っていた。
「気分はどうだ?」
「ひどいよお兄さん……。やることはいっぱいあるのに……」
「別にユーディアがやらなくても、みんなに任せればいいだろ?」
そう言うと、周りの子どもたちがうなづいた。
「そうだけど……。私だけ動かないのも……」
まだそんなこと言うのか。かなりの重症だ。
「今回だけ休んでも罰は当たらないぞ。そんなにみんなのことが信用できないのか?」
「そうじゃないよ……。みんな……私が休んでも大丈夫なの……?」
子どもたちは再びうなづいた。
「わかった……休むよ……」
気が抜けたのかテーブルに頬をくっつける。
やっと観念したか。
普通はなら喜ぶところだが、残念そうでいるとは……。
とりあえず、1日は休んでくれそうだが、懲りずに明日も駄々こねそうだ。
そうなったらまた睡眠魔法を使う。
昼食を食べ終わると、ユーディアはイスに座って、子どもたちが後片づけをしているところを暇そうに見ている。
「わ、私も……手伝いたい……」
本当に懲りていない……。
休むって言葉を知らないのか?
「なあ、別にここにいなくても、好きなこと――趣味などやって気分転換すればいいさ」
「私、山菜採りが趣味なの……」
マジかよ、だから周りが見えなく無我夢中になるのか……。
まさか、大事な趣味を奪ったのか?
「ほ、ほかに趣味はあるだろう? 村でできる一つや二つあるだろう?」
「あるけど村でできることではないの……外でできることなの……」
どれだけアウトドアなんだ?
「魔物がいて危険だろう……」
「うん……。この趣味はお母さんと一緒に出かけないと行けないの……。今はもう無理だけどね……」
「その趣味はなんだ?」
「銀鹿――シルバーディアーの観察だよ。ここからちょっと遠くにいて私1人では見にいけないの……」
まさかシルバーディアーか……。
観察って……あの群れは狩ってはいけないのか……?
かなり気まずいぞ。
「珍しい鹿を観察するだけで狩らないのか……?」
「そうだよ、お母さんの趣味だけど、あのきれいな銀色の毛並みに見とれちゃって私も好きになったの。だけど、向かってきた危険な鹿はお母さんが魔法で狩って村のごちそうにしていたけどね」
よかった、狩っては大丈夫みたいだ。
もし、禁止だったらこの村にはいられない。
「実はユーディアと会う前にシルバーディアーの群れを――」
「ぎ、銀鹿に会ったの!? それも群れに!? いったいどこにいたの!?」
ユーディアは急に立ち上がり俺に詰め寄る。
顔が近い……。
「わかった……。話すが、群れと言ってもな――」
半分以上狩って逃げていったことを話すが、目が輝いていた。
「群れでいたなんて聞いたことも見たこともない! 私も見たいな~」
「悪いな、その半分を狩ってしまって……」
「お兄さんは悪くないよ。狩られる対象なのは、しょうがないよ」
そこは割り切っているのか。
しかし、いまだに俺の見て目が輝かせている。
ああ、なんとなく察したよ。
「シルバーディアに会いたいのか?」
「はい! 久しぶりに会いたいです! それに、シルバーディアーは私の名前の由来でもあるの!」
「だからユーディアのディアはそこから付けられたのか」
「みんなそう思っているけど、ちょっと違うよ。銀鹿から取れる魔石は赤紫色している装飾品として使われている鉱石のユーディアライトに似ているからユーディアって付けられたの。さすがにお母さんは銀鹿は好きだけど娘に鹿の名前を付けるのに抵抗があったよ。それでたまたま狩った銀鹿からユーディアライトに似た魔石が出たから、娘にぴったりな名前だと思ってユーディアって付けられたよ」
随分とややこしいな……鹿じゃなくて鉱石の名前かよ……。
鹿関係ないぞ……。
待てよ、ラピスラズリが家名だから石関係が好きなのかもしれない。
そうでなければユーディアに石の名前にしない。
それでもシルバーディアは母親との思い出でもある。
久しぶりに会いたいよな。
しょうがない、一肌脱ぐか。
「わかった、俺と一緒に捜そうか? 長く滞在するからそのくらい余裕がある」
「いいの!? ありがとうお兄さん!」
ユーディアはあまりの嬉しさに俺に抱きつく。
まだ喜ぶのは早い。
「ただし、明日もゆっくり休むことだ。明後日行くから備えておくように、これは約束だからな」
「わかった! 絶対に約束を守るよ!」
そう言うと、力強く抱き続ける……。
細身なのに力が強い……。
「そういうことだ。そろそろ離れてくれないか?」
「その前にお兄さん……銀鹿の肉はあるよね?」
ニヤリと笑っている……しかも離れてくれる様子もない。
はぁ~しょうがない、1頭分だけおすそ分けするか。




