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11話 精霊の報告


『何か探ることができたか?』


『ちょ、いきなり念話を送らないで!? びっくりしたじゃない!?』


『お取込み中か?』


『そうよ! 次からはアタシが落ち着いてからにして!』


 いや、そう言われても無理だろう。 

 なんのための念話なんだ……。

 

『まあ、いいわ。経過報告だけど、あの自称商人がいる家は魔法で姿を消しても認知できる魔道具が設置されて侵入できないわ』


 まさか魔道具があるとは予想外だ。

 そんなに見せられないものがあるのか?

 ますます怪しくなった。


『侵入できないなら無理だな』


『そうね。でも子どもたちからいろいろ聞いてみるわね。レオは山菜採りに集中してね』


 フローラから念話が途切れた。

 調べることができないならしょうがない。俺もユーディアからアタナトのことを聞いてみる。


「お兄さん、ここにもいっぱいあるよ! お手伝いお願い!」


 気づくとユーディアは遠くにいて俺を大声で呼んでいた。

 早すぎだろ……少し念話でやりとりしていたのに、もう周りの採ったのか。

 張り切るのはいいが、後半は体力が持つだろうか?


 そう思いながら彼女に駆け寄る――。


 ……前言撤回、心配無用だった。


 昼過ぎになっても山菜採りに夢中だった。

 休憩しようと言っても「まだ大丈夫」と急斜を進んでいく。

 自分が気が済むまで無理なようだ。

 まあ、移動しながら水分をとっているからまだいいか。


 毎回、山道を移動していれば普通に体力もついて慣れるはずだよな。

 俺の余計なお世話だったかもしれない。


 しかし、採りながらアタナトについて聞こうとしたが、無理だ。

 村に戻ってから聞いてみるとしよう。


「うん、このくらい採ればみんな喜ぶ!」


 夕日が沈む頃になってようやく、ユーディアの足が止まった。

 まさか昼飯を食わないで採り続けるとは……。

 俺がいるから早く切り上げると思ったがそうではないらしい。

 自分が満足するまでなようだ。


「少し休憩したら戻るか?」


「大丈夫だよ! 急いで帰らないとみんなのご飯が遅くなる!」


 俺の手をつないで急かしながら戻る。

 これを毎回続けているのか?

 体力――若さで片づけられるならいいが、無理をしすぎだ。

 

 俺が強く言わないのがいけないが、今日は言わないおく。

 次からは言うとしよう。


 辺りが暗く頃には戻り、門前にはみんな出迎えてくれる。


「遅いじゃない! もう少し早く帰ってきてよ!」


 フローラは顔を膨らませてご機嫌斜めだ。

 まあ、何も調べることができなったようだ。


「ごめんごめん、お腹空いたんだね。みんな、急いで支度するよ」


 ユーディアと子どもたちはその場を離れて食事の用意にいく。


「ちょ、待ちなさい――はぁ……そういう意味で言ったわけじゃないわよ……。あの子、そのうち倒れるわよ……」


 ああ、心配していたのか。


「次から言うから心配するな」


「そうしてちょうだい。みんなあの子が一生懸命、村のことを考えていることを聞いたわ……。

子どもには重すぎるわよ……」


 子どもたちから聞いたのか。

 それなら心配せざるを得ない。頼れる人がいないから無理に頑張っているのは確かだ。

 

 俺たちが村を出るまで加減ってのも教えないといけない。


「それと、あの自称商人のことだけど――」


 フローラの話によると――アトナタは家に引きこもったまま一度も出てこなかったという。

 子どもたちに家に入ったことがあるかと聞いてみたが、人には見せられない機密書類があるとのことで誰も入ったことがないらしい。

 それと、アタナトは「良い人」と口を揃えてみんな言っている。

 何か足りないものはすぐに用意をして大人がいなくても生活できると。


 良い人で片づけられるならいいが、誰も家に入ったことがないのは不自然だ。

 村の人にまで警戒するほど、何か隠している。


「ありがとう、明日は俺が調べる。ゆっくり休んでくれ」


「そうしたいけど、あの子のことは大丈夫なの?」


「大量に採ったから明日は行かないだろ。「倍以上採れた」と上機嫌でいるからさ」


「ふ~ん、なら大丈夫そうね。じゃあ、お言葉に甘えて明日は散歩することにするわ」


 散歩か。フローラのことだから遠くまで飛んで暇つぶしに行くだろうな。

 たまに魔物を狩ったりして散歩の領域を超えている。


 本人が気分転換していれば俺は止めはしない。


「ご飯できたよ!」


 ユーディアが大声で俺たちを呼ぶ、もうできたのか。

  

 食卓が設置している場所に移動していると――美味しそうな匂いがする。

 もうみんな揃って、テーブルにはパン、肉と山菜の炒めものと、トマトと山菜のスープが置いていた。


 ……全部おいしかった。


 旅をしていなければ、ここで隠居したかもしれない。

 本当に子どもだけで作れるのが不思議だ。

 

 しかし、こんなもったいない料理をアタナトが食べないのは損をしている。

 いや、怪しい奴に食べさなくて正解だな。

 

 明日、暴いてやる。



 ――就寝の時間。



「うぅ……お母さん……」



 ユーディアの夜泣きが始まった。

 昨日と同じで回復魔法(リフレッシュ)をかけて安静にさせる。


「はぁ~困ったハイエルフね~。早く治りなさいよ」


 俺は何も言ってないのに、自らフローラは一緒に寝る。

 なんだかんだ、いろいろと心配しているようだ。


 村にいるときは頼んだぞ相棒。

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