プロローグ
満月が闇を照らす真夜中の森。
獲物を狙う魔物が蔓延る恐怖の時間。
しかし、いるべき彼らはそこにいなかった。
今、それらすらも凌ぐ凶暴な者達が暴れているからだ
聖剣と刀がぶつかり合う。その衝撃は地面を穿ち、木々を粉砕した。
耐えられなかったのは刀を振るった忍者だった。
大木3本と岩を巻き添えにしながら数百mは吹き飛んだ。
忍者はかろうじて無事で宿敵相手に立ち向かう。
牽制として千もの手裏剣を放つが宿敵である聖剣使いには傷一つ付かない。
「ならば!分身の術!」
分身の術で100人もの分身を生み出す。
全員が同じ刀と剣術を持ち、戦術的忍術も同じく使える。最強の忍者部隊の誕生だ。
分身忍者部隊は聖剣使いを一斉に襲う。
しかし、聖剣から放たれた雷により分身達は一瞬のうちにに霧散した。
自慢の神速も忍法も通じず万事休すかと思われたとき、聖剣使いに次なる刺客が強襲する。
闇の中にジェット音が響き渡る。
「ビームブレード起動。デリート開始」
鋼鉄機械の鎧、パワードアーマー戦士が彼方より参戦。
ガントレットから出力されたビーム剣の一振り。これには流石の聖剣使いも回避した。
しかし、ジェット推進による機動力で聖剣使いへ追いすがる。
2対1、これだけでは終わらない。
「火炎豪速球火炎豪速球!」
聖剣使いの背中に衝撃が襲う。
聖剣使いは、これが炎魔法だと瞬時に気がついた。
3人目の刺客、三角帽子の女魔法使い。魔法の絨毯に乗り空から聖剣使いを襲撃した。
一瞬の隙を突き3人は聖剣使いへ必殺技を仕掛ける。
本来彼らは仲間では無いが、利害の一致として徒党を組んでいた。
それほどまでに黒い鎧をまとった聖剣使いは脅威だった。
「忍超技術、千人分身!人間流星突撃群!」
「ビームキャノン最大出力!シュート!」
「大雷撃魔法!黙示録ノ裁雷!」
かつて各世界を救い、悪を震え上がらせた英雄の最強の技だ。
どの攻撃も受けようすれば骨も残らず死ぬのは確実。
しかし、この聖剣使いは違う。
突如聖剣から雷よりも炎よりもまばゆい光があふれ出した。
漆黒の鎧をさえも染めあげるほどに、白い光は広がっていく。
魔法使いはそれが、自らが使う魔力よりも神聖なものであると気がついたが時は既に遅かった。
その時満を持して、聖剣は彼らに向けて振るわれた。
破壊の光、英雄の中の大英雄と呼ばれた勇者の技だ。
技が放たれた瞬間、光が森を包み表土へと変えた。
川はもちろん木々や岩をも蒸発、地面からは炎が上がる。
残ったのは横たわった3人の人間と黒の勇者のみ。
ランドセルを背負った少年、白髪の老人、制服姿の女子高生。
それぞれ既に事切れていて、手には手帳がにぎられていた。
彼らを葬った黒騎士の勇者はきびすを返し立ち去った。
黒騎士の勇者が姿を消した瞬間、表土となった森は崩れ去りコンクリートジャングル、東京の街に戻る。
激闘があったはずの場所では人々は何事も無かったかのように行き交いしている。
その雑踏の中、勇者であった者はいた。
そして、自分にしか聞こえない声に導かれながら長き戦いの報酬を享受しようとしていた。
「――私の願いは」
転生ロワイヤル開幕 ▼
小説家ヒーロー、アキランダーセブンです!
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