部族国家
とある世界には複数の国家があり、部族国家トライフィーもその一つである。この国は部族国家と言われるだけあって数十個の部族が集まってできた国だ。
その部族の中にも序列があり最高位の四つの部族は四大部族と呼ばれている。しかし君臨者は四大部族出身ではない。さらに言うとどの部族にも属していない。
その理由を話すことになるとこの国の成り立ちから話すしかない。
戦乱の時代、当時は国としてまとまっていなかった各部族は自衛を余儀なくされていた。
その部族たちは自分たちの住む地域をよく知っているのに加えて独自の技術を発展させている。それによって防衛時には個々の戦闘能力が高く統率もとれていて、二倍近くの兵力差がある戦いだろうと勝利をおさめてきた。
そんな折り、攻めてくる隣国が現在の部族国家がある位置を挟んで反対側の国を手に入れるために本腰を入れ始める。それによって複数の部族の集落を落として拠点にするために、部族に仕向けていた兵士が大幅に増えた。
そのため、いくら地の利があろうとも人数差があり、戦いは厳しく、少しずつ部族の数が減っていった。
そのことに危機感を覚えた四つの部族が集まって会議が行われ、複数の部族でまとまり国を作るべきだという意見がでた。その意見に四つの部族の長が全会一致となり、周辺の部族に呼びかけていく。
当然、賛同する部族もいれば、誇りのために断る部族もいた。
だが、時間が経てば戦況が悪くなっていて、賛成する部族が多くなる。四つの部族の想像以上に集まってくれる部族が多かったため、全体の長をどうするのかという話になった。
そこで連れてこられたのが遠くの国の王族だ。攻めてきている国と大した関わりがなく、連れてくることができる王族が遠くの国にいたためその王族を何とか説得して連れてきたのだ。
その王族を王に据え建国されたのが今の部族国家である。
建国の際に行われた会議は始まりの会議と呼ばれており、その会議を行った四つの部族を最高序列として扱い、建国に集まった部族順に序列が高くなり議席数が多くなる。
建国に集まる部族は一生少ない議席なのかと言われればそうではない。この序列は功績をあげると上がることもある。そのように議席は決まっている。
勿論、議席数が多いほど意見が通りやすいため所持議席数が最大の四大部族の意見は通りやすい。
この国の議会の権力は最高であり、他の国と違い王の権力は無いに等しい。
どこかの部族が最高権力を保持しないためにトップを部族出身では無い王族にし、議会政治にしている。
部族国家の説明と言えばこんな感じである。
複数の部族が集まっている部族国家だが、どの部族からも注目を集めている人物が二人いる。
一人は、王家の次女アレッタ様。
近代的思想を取り入れていこうとする動きを見せ、部族国家の進歩を進めているお方であるが姿は中々お見せにならない。
もう一人は透き通るような白い髪に整った顔を持つ美丈夫。四大部族の一つウォーカー族のウォーカー家長男つまり次期族長であるメルヴィル・ウォーカー様だ。メルヴィル様はウォーカー家の相伝術式《創糸操術》を齢六歳にして完全に会得した紛れもない天才。
今回の話はアレッタ様とメルヴィル様のお話である。