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楽しいお風呂 前編

この巫女服、常に着ていたんだよな。どういうわけか最初から着ている状態だったし。


単純に結んであるのを解けばいいんだろうけど、固く結ばれてるのか全然解けない。


「ふんっ!」


「ふぬぬ……!」


「はぁ、固すぎ…」


全力で解こうとするが、びくともしない。この姿になって身体能力上がってるんだと思ってたけど、それでも解けないなんてどんな固さなんだ……


「油羅様、油羅様が人間に見つかったときの状態は知りませんが、その時の印象が象徴昇華のときに反映されてるんじゃないですか?」


センさん!それ、めっちゃ的を射てると思うぞ!


「その可能性大かも」


「油津様は自分でなんでもそつなく(こな)してしまいますし、自分でやりたがるので、こういうのは久しぶりですね…」


少し、懐かしむ声色でセンさんは言いながら、軽々しく巫女服の紐を解いた。


「え、うそ……」


「身体の使い方ですかね、上手に動かせばちょっとの力で大きな力を生み出せるんですよ」


センさんは少し得意気に語る。センさんの尻尾がふわふわゆらゆらと動いた。

その間にも僕の服は素早く脱がされる。足下を見たら既に畳まれていた。


自分が、誰かに脱がされるという事象はあり得ないくらいの恥ずかしさを伴う。

二人で入るということは逃れられないところまで来てしまった。


「人間の男の人だとこういう、所謂お風呂イベント?みたいなのを好む人とか多そうですけど油羅様は違うみたいですね」


「そんな変態は一定数いても少ない部類に入ると願いたいよ……」


「そうですね、人間の調査も結構してますけど、結構理解できないことが多いんですよね、油羅様も理解できない部類ではありました、今は関わるようになってなんとなくわかりますけど」


人間の調査なんてことやってるんだ。しかも僕を事前に知ってたことからだいぶ詳しいところまでやってるみたい。


そんな話をしていたら、僕は既に一糸纏わぬ姿になっていた。

反射的に上と下を隠す。


「私も着替えてきますね」


センさんは意も介さず僕から離れていく。


「僕の巫女服、着替える度に手伝ってもらわないといけなさそうなの、申し訳ない感じがするなぁ」



僕は更衣室からおそらく浴室につながる扉を見つけた。

というかお風呂というより温泉って感じだなぁ。

更衣室の時点でだいぶ広かったし、浴室はやばそう。


扉に手をかけ、開ける。


「おぅ、まい、がぁ」


そう言わずにはいられなかった。


ひっっっっっっっっっっろ!!


なにこれ?どっかの王様がいるお城の風呂ですか?

いや、実質神だからそれ以上の存在だからそう考えると普通?いやいや、え?


えっぐいわぁぁ……


「びっくりしますよねー」


「にゅわあ!!」


変な声出ちゃった。


「せ、センさん…もっと着替えるのに時間かかると思ってた」


「まぁ、私は従者ですので」


どういうこと?


でも“従者”なんだ、メイドじゃないのか。

いや、やってることメイドと同じじゃ?


「私も最初にここに来たときはびっくりしました」


「流石にこんなに広くなくてもいいのではないかと思いましたが、定期的に動物霊のみなさんも入れるようにしてるからだと、油津様は言ってました」


動物霊のみんなも入れるようにこの広さなのか、なら納得だなぁ。


「なるほどぉ」


「立ち話もここらへんにして、油羅様、身体を洗ってあげますよ」


センさん?これでも僕は14年は生きてるんだぞ、身体を洗うなんて造作もないですよ。


「流石にそれくらい自分でできるって」


「油羅様はその長い髪の毛を洗った経験が、あるのですか?」


「な、無いけど……」


「それにまだ、自分の身体のことをよくわかってないでしょう、もう諦めて現実を見てください、そんな状態じゃ身体を洗うということすらままならないでしょう?」


「それに、さっきから虚空ばかり見つめて、見て呉れが良くないですよ」


うっ、でも無理じゃないか、そんな急に。

急に女の体を見ろだなんて、しかも女性が居る前で!僕は男だぞ!今は女だけど!自分の体だけど!


「そんなこと言われても直ぐには変えられないですよ………」


「……そうですか、確かに今まで急展開に事が進んでましたし、まだその姿になって時間もあまり経ってないですもんね」


「なら、目を瞑っておいてください、私が洗います」


「あ、はい」


あ、待って、了承しちゃった。身体を洗われることを了承しちゃった。


いやちょっと行動早いって。もう洗うところまで来ちゃったんだけど、というかこんなに近かったんだ、目の前の広いお風呂に気を取られてすぐ横にあったのに気づかなかった。


そりゃそうだけど鏡がある。それにより、自身の身体とセンさんの体が見える。

自分の体を見て、目を逸らそうとしてセンさんを見てしまって、また目を逸らす。


「私にも、失礼ながら油羅様にも、色気と言われるものはありません、それなのになぜそんなに目を逸らすのか、よくわかりません」


「あなたには分からないでしょうねぇ」


いつかに流行った人のセリフを吐きながら僕は明後日の方向に目を向ける。


「まぁいいです、早く洗いましょう」


肩をすくめながらセンさんは言う。


僕は、備え付けられている椅子に腰掛ける。もう既に目は瞑っている。


「はい、じゃあ髪の毛洗いますよ」


まずはシャンプーを使わずにシャワーで洗い流す。


待って、センさんの肉球が最高すぎる。肉球が当たってる感覚が気持ち良すぎるんだけど。



 

肉球を堪能している内にほとんど洗い終わったみたいだった。


「前の方と尻尾は自分でやってくださいね」


ここは気合でどうにかした。


「尻尾を洗うのが意外と時間かかったなぁ」


尻尾自体が1つ1つ大きいので、洗うとなると、だいぶ手間が掛るということが今回わかった。


油津さんとかどうなっちゃうんだ?ありえないくらい時間かかりそうだけど。


「先に入っとこう」


そう思って、口に出す。お風呂に入ろうとして足を入れた。


「熱っ!!」


なにこれ45℃くらいあるんじゃないの?


少しずつ慣れていかないと入れない。これじゃあもはや温泉じゃないか。もともとお風呂なんて規模じゃないけど。


…………ちょっと慣れてきたかな。このまま少しずつ入っていけば……。


そこに簡単に奥の方まで入っていくセンさんが現れた。


「せ、センさん!?熱くないの?」


「熱いですけど、我慢できないほどではありませんよ」


この時、僕は開いた口が塞がらなかった。

評価が来るとうれしくなって、モチベが上がります!!

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