疲弊の色
だいぶ間が空いたので、もしかしたら変になってるかもしれないけど許して ; ; orz
……あれ? 意識を手放してはいないはずなのに、手放せなかったのに、可笑しいな、さっきまで何をしていたのか思い出せない。
僕は気がつくと、木の床にぺたんと座っていた。
「ものすごく痛かったのは覚えてる……外傷というよりは内傷のような」
気配を感じて顔を上げたら、まずその惨状に目を見張った。
自分の周りの家具や床、壁はボロボロに壊されていた。外の景色がよく見えるくらいには壊れている。
「……そうよ、象徴昇華は…体の組織から一新させるから……その表現であってる」
瓦礫をどかしながら油津さんがこちらに歩いてくる。
少し、疲れが見えているけど、どこか安心したような表情をしている。
「あ…油津さん…これってもしかして?」
周囲の被害状況を見ながらそう尋ねると、油津さんは少し遠い目をして言った。
「抑えるのに必死だったんだからね?まさか此処まで拒絶反応があるとは思ってなかったから」
「それより油羅ちゃん、おめでとう!無事に神の一員になれたんだね!」
「痛みによるショックで身体が死ななかったのも本当に良かった……」
油津さんはそのまま僕に抱きつくと、少し痛いぐらい強く抱きしめた後、泣き出してしまった。
「もう……これからはこんな怖い思いさせないでね……」
「………………えっ?」
僕は油津さんが弱音を吐いたのだと気づいた瞬間、至極驚いた。油津さんはいつも堂々としてて、泣いたり、弱音を吐いたりするイメージなんて全くなかった。
「……」
「……」
「痛い思いさせちゃってごめんね」
「油津さんの所為じゃないよ」
「……」
油津さんが僕を抱きしめるのをやめると、すぐに立ち上がり、部屋の外を見た。
「この部屋は後で直さないと」
風が流れ、葉擦れの音が鳴る。
外に見える茜色は夕暮れ時を知らせていた。
瓦解したこの部屋に、この景色は驚くくらい似合っていた。
「今日は……流石に身体が疲弊してる。油羅ちゃんも象徴昇華の影響で身体は疲れてると思うから、休んでね」
そう言うと僕の頭を撫でてから油津さんは自分の部屋の方向に歩いていった。
僕も部屋に戻ろうかと思ったが、壊れていたんだった。
「……油羅様、お困りでしょうか?」
「あっ、センさん!」
振り返ると、霊体であるはずのセンさんは多くの傷を負っていた。
「すみません、部屋の外部を守りきれなくて…」
「そ、そんな、センさんが謝るようなことじゃないよ」
「神社全体が壊れるようなことにならなかっただけよかったじゃん」
象徴昇華が始まったとき、結界を貼りにセンさんが外に出ていたのは覚えてる。
今なら分かる、センさんも神力を持っている。だからこそあのとき、油津さんはセンさんに任せることができたのだろう。
「油羅様は、本当に優しいんですね」
「えっ?いやいや、そんなことないよ、だって」
「はい、分かってます。油羅様は嫌いなものはとことん嫌いですよね」
「う、うん、だからそこまで優しい人なんかじゃ」
「みんなのことを平等に好きになれる人なんて誰もいませんよ」
「誰だって嫌いな人、苦手な人はいるものなんです」
「油羅様みたいに、苦手な人は苦手でも、許容できる範囲が広く、本心から人に寄り添うことができる人のことを優しい人と言うのです」
「……ありがとう、センさん」
そう言うとセンさんは朗らかに笑みを浮かべて……
「センさんっ!?」
「すみません…少し、疲れました」
安心しきったのか、倒れてしまったセンさんを抱きとめる。霊体であるのに重さは感じることに少し驚くが、それより早くセンさんを休ませないと。
「センさん、センさんの部屋ってどこですか?」
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センさんの部屋のベッドにセンさんを寝かせて、様子を見る。顔色が悪く、呼吸も安定していない。
やはり、そんなに浅い傷では無さそうだ。
「……油羅様、そんな顔をしないで下さい……かわいい顔が台無しですよ」
「センさん……誂ってるの…?」
「ふふっ、油羅様、これくらいなら寝てれば治ります、安心して下さい」
きっと、センさんなりの気遣いなんだろう。
僕を安心させるためにこんなことを言ってるんだろう。
心配なのは変わらないけど、人の心配ができるくらいは体力が残ってるみたい。
そう思ったらなんだか眠くなってきたな……
「ゆ、油羅様!?大丈夫ですか?」
油羅は既にスースーと寝息を立て始めていた。
「……気絶に近い眠り方なのが少々怖いですが……こんなにも気持ちよく眠っているなら安心ですね……」
「油羅様、おやすみなさい」




