油羅は神様…?
気侭に書いていくぞー!という意気込み
「こんなところに建物あるぅ!」
「え?あ、ホントだ!でも見る感じ随分長く使われてなかったみたいだけど」
「ちょっと雰囲気あって怖いかも…」
三人の女子が森の中に来ている。一人は活発に動き回る子で、1つ結びの髪を揺らしながら勝手に森の中に入っていった。
その子を追いかける形でその子の姉とその友達が森の中に入っていく。
小学五年生くらいの少女と高校生の少女二人だ。姉の方はハーフアップボブでその友達はセミロングのウルフ。
姉が「そんなに奥に行くと危ないよ」と言って引き留めようとするが、言うことを聞かなくてずっと森の奥に入っていってしまった。
そこで見つけたのは油羅のいる摂社だった。
「中を見てみようよ!」
「あんまこういうのって勝手に触っちゃダメなんじゃ……ってもう開けてる!?」
一番歳の低い女の子が古びた扉を開ける。
中の様子を一瞥すると、中には人が見える。巫女服に狐の耳と尻尾を携えたその少女と同じくらいの背の子が。気持ちよさそうに身体を丸めて寝ている油羅がいるのだ。
「ちょっと、勝手にやったら……え?」
扉を開いた少女が見入ってると後ろから高校生二人が来る。油羅を見つけると勿論驚いていた。
「……此処の近くって稲荷神社あったよね……?」
「確かに、ってことは……?」
「えー?この子神様ってこと?」
なんだかよく分からない状況になって静かになった刹那、声が聞こえる。
「……ん……?」
狐の特徴を持つ少女、油羅が目を擦りながら起き上がる。ゆらゆら揺れる白髪を掻き分けて、目を開けようとしたが、瞼が重くて開けれない。流石に長居しすぎるのも良くないと思い、眠い身体を叱咤して目を開ける。
「……?」
勿論目の前には先程の高校生達がいる。
まだ起きたばかりで頭が働かない。
「……んー……あ、え?」
油羅は今、目の前にいる彼女たちに見覚えが無いことに気が付く。
「……あ、あの…」
ウルフカットの高校生が話しかけようと声を出した。その時、油羅は完全に理解した。自分が一般人に見られていることを。
「あ」
ここなら人が来ないだろうと高を括った自分が馬鹿だったと油羅は後悔した。
それに今の状況から鑑みて、寝ているところや寝ぼけているところを見られたこと、それに心は男なので巫女服を来ている状態は女装してる感覚と同じである。
油津達は人間じゃないのが分かってるうえ、油羅からすると保護者といった感覚で、親のような安心感すれ芽生えてくる。それに対して目の前にいるのは不特定多数の人間、それも陽キャみたいな人たちがいるのは、恥ずかしさを覚えずにはいられない。
油羅は酷く狼狽して、顔を林檎のように紅く染めてしまう。
「………あ……あ……」
油羅は何も言えないまま硬直してしまう。
「かわいい…何歳かな?…」
一番小さい少女が呟く。
「あなたは、神様なの……?」
その子の姉が問う。
油羅は混乱してきた。
いてもたってもいられない。
「……ごめんなさい!!!!」
3人の合間を縫ってその場所から出る。
そして森の奥の方へ高速で走っていく。今の油羅の身体での最高速度だ。相当速い。そして木々の合間も縫って行って、すぐに摂社からは見えなくなった。
「足早すぎじゃない?」
「あれ、ガチの神様ってこと…?」
高校生二人が見合わせながら駄弁る。
「それにしても……」
「「かわいかったね」」
油羅を信仰する人が初めて生まれた瞬間であった。
「はぁ……はぁ……はぁ……ここまで来ればもういいでしょ……」
少女達から逃げてきた油羅は、疲れて倒れ込んでしまった。服が汚れるのも気にしないで仰向けで倒れていると、死角から油津が覗き込んでくる。
「ねぇ、もしかして人間に見つかったの?」
「え…なんでそう思うの?」
油羅は目を泳がせながら言う。わかりやすい反応に、油津は最早呆れる。
「そんなに目を泳がせながら炒っても説得力無いよ…?」
「あぁ…」
「全く、仕方ない、人間に信仰されるようになったときの注意点を教えておくから、よく聞いて」
油津は面倒くさそうに言う。
「ちゃんと聞いて理解してないと身を滅ぼすことになるから」
いつもと違って子供を躾けるように、説教をするかのように、少し強い口調だった。
初めてあったときと同じ威圧感を感じる。
「人間に信仰されるとなると、その人たちの認識に合った身体になっていくから、今のあなたの姿ではいられなくなるの」
「そして身体を改変するときに、相当の力が必要。その過程で想像を絶する程の痛みが身体を襲うの」
「それも数時間、勿論途中で挫折する奴は何人もいる」
「しかも身体を構築するときに、幾ら死にそうになっても絶対に死ねない。辞めようと思っても辞められない。完了されるまでずっと身体を壊される」
「ショックで死んでも幽霊になって身体の改変は続けられる」
「この身体の改変のことを象徴昇華と言うの」
「それは神と思われてなくても人間じゃない強い存在として思われるだけで起こる」
「信仰心、神力を得るというのはこういうことなのよ、わかった?」
「……は、はい…」
「もっとも、あなたは半分人間だし、多少透けて見える程度でしっかりと認識されただろうからどうなるかわからないけどね」
このときには既に元の油津の口調に戻っていた。
油津は心底心配で、嫌いな人間から信仰されるのは嫌だろうし、半分人間の油羅が信仰心を得た場合何が起こるのか分からなかったので、人間に会わせないようにしていた。
だが、油羅を束縛しても油羅が嫌がるだろうし、こういう怖い現実を見てほしくなかったから多少自由にさせていたし、人間に見つからないようにさせた理由も詳しく言わなかった。
結局こんなことになってしまったので、全部言うしかなかったのだが。
油羅は持ち前の理解力ですぐに理解はしたが、それと同時に恐怖で背筋が凍る。感情が元の2倍になったことにより、油羅はその強い恐怖感に身体が動かない様子。
そんな油羅を油津が抱き上げ、転移で自分たちの神社に戻る。
そうして一日が終わった。
一日分(しかも夜を除いて)を2ヶ月くらい掛けてやったのか……
動物霊はまだ動きません、少々お待ちを




