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信仰

彼女らが油羅に出会ったのは、丁度一ヶ月前。

あの少女たちは、神様というものを信じて信仰している訳では無かったが、あのとき確実に目に入ったものがある。


人間には到底出来ないような身体能力で、森の中を駆けるあの姿は、嫌でも信じざるを得なかった。


もちろん嫌なんかでは全く無かった。


「ねぇねぇ、あの神様にまた会えるかな〜?」


「どうだろう?でもまた会えるでしょ!」


「今度は他の子も連れて行ってみない?」


「油揚げとか必要かな〜?」

 

油羅は知らなかった。本当の意味で優しい人間がいることを。

あんなにも純粋無垢で、素直に目を細めて、自然と口角を上げる人間を知らなかった。


─────────────────────────


「油羅様、神力を集める、つまり、信仰を集めるためには最初が肝心です。最初は頻繁に姿を見せた方がいいかとお見受けします」


センは油羅の従者ではあるが、信仰を集める狐としては大先輩である。


「油羅ちゃん、1人だと寂しいでしょ?私も一緒に行こうか?」


「いや、いいよ」


「え!?いいの?やったぁ!!」


「違う、そういう意味じゃない」


「え……」

 

「……セン……最近、油羅ちゃんが私に冷たいと思うんだけど」


喜んだり落ち込んだり、感情の起伏が激しい。

普段の油津がもっと冷静なのは、油羅からすると全く想像ができないだろう。


「油津様、油羅様はグイグイ来られるのが得意では無いのです」


「でも……」


油津は、象徴昇華の影響で子供らしくなった油羅にメロメロになっていった。


結界として、油羅に対して庇護欲が全開になってしまい、どこへ行くにも心配して、付いて行きたがるようになってしまった。それでも最近は、流石にくどいと思い、断念するのだ。


ただ、今回は違った。


「じゃあ、付いていかない代わりに、この妖具(ようぐ)を身に着けておいてくれる?」


「これは?」


油羅が渡されたのは、アメシストが施されたヘアピンだった。


「油羅ちゃんに危険が迫ったとき、これに付与した術式に(のっと)って防御結界が発動されるようになってるの。さらに、それがもし発動したら、私の持ってるこの妖具に通知が来るようになってるから」


そう言って油津は、同じくアシメストが施された、ネックレスを持って揺らした。


「そんなすごいのを僕に?」


油羅は、そのアメシストに付与されている神力の多さに驚愕し、狼狽していた。

いつもおちゃらけているように見えている油津のことだが、やはり九尾の狐である。そのことを改めて認識させられた。


「もちろん!何時何時、何が起こっても油羅ちゃんが無事であるために、それを身につけておいてほしい」


「わかった、ありがたく貰っておく」


油羅はそのヘアピンを見て、少し微笑んでから、身に付ける。


「良いね〜似合ってるよ〜」


「そっか」


油羅は素っ気なく返すように装った。でも、声が嬉しそうなのを隠しきれていない。

油津とセンはそれに気付いたが、指摘せず、暖かく見守った。


─────────────────────────


油羅は1人で行くつもりであったのだが、行くのにテレポートすることが必要だったことを思い出して、テレポートもとい、転移が行える人を連れてこないといけなかった。


「油羅様……私は、油津様よりは下手ですよ」


そこで油羅が最初に声を掛けたのはセンだった。

油津は油羅が出かけたあと、すぐに神社に赴いた。御供え品を受け取りに行ったのだ。

 

「でも、付いていかない代わりにこれを貰ったんだから、油津さんは除外することになるよ?」


「……察しが悪いというか純粋というか」


「?」


「あぁ、油羅様が私で良いというのなら、私の力を行使させていただきますね」

 

センは、油津にはもっと油羅と一緒にいてほしいと思っている。

油津が気に入った、悠久の時を共にできる1人だけの家族なのだから。

センは、そう考えていた。


「それじゃあ、行こう!」


「そうですね」


そうして油羅とセンは、あの小さな摂社に向かうのであった。

もっと言葉とかを上手に使えるようになりたい。

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