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10話 マスターからの依頼


 ギルドの奥にあるマスターの執務室、その一角にあるソファーに座るよう俺とローリンは促された。


「そこの若いの……ええと君は」


「ノアといいます」


「ノア、ギルドに入って早々に災難だったな。ヘンリーは腕こそ立つのだが、どうにも初心者潰しをしたがる節がある。下級冒険者を育てたい身としては困った男だ……。昨日、受付のエマからローリンを助けてくれた新入りがいると聞いてやって来たが、とんでもないことになっておったわい」


 マスターは紅茶を啜って「落ち着く味だな」と言った。


「ノアよ。改めて我がギルドの仲間、ローリンの救出に礼を言う。それに馬車で会った時から引き締まった体躯とは思っていたが……王国兵流の近接格闘術を使い、その風鱗をたった数日で超級魔道具に変貌させた。君は一体何者なのかね?」


 一瞬、どう答えたらいいかと悩んだ。


 けれど風鱗を譲ってくれた上、仲裁までしてくれたマスターに嘘はつきたくはなかった。


「……正直に言うと、宮廷近衛兵団を先日クビになったんです。風鱗はスキルで強化したに過ぎません」


「スキルでアーティファクトを強化……⁉ ……そっか、ノアが私を助けてくれた時、その短剣型のアーティファクトが光ったのってそういうことだったんだ……」


 ローリンは納得した様子で俺の風鱗を眺める。


 マスターは「そうだったか……」と頷いた。


「元宮廷近衛兵団所属の兵士、なるほどヘンリーを組み伏せた実力についても納得する他ない。……いや、すまない。まさか宮廷近衛兵団をクビになったとは、よほどの事情があるのだろう。嫌なことを思い出させてしまったな」


 ……実際のところはスキルが非戦闘向きだったというだけだ。


 大した事情でもないが、それを打ち明ける前にマスターが話を切り出した。


「ところでギルド内での会話から、君たち二人は既にパーティーを結成している……ということでよいのかな?」


「はい、その通りです。それがどうかしましたか?」


「うむ、好都合だと思ってな。……これを見てほしい」


 マスターが自分の机の上から一枚の依頼書を手に取り、俺たちの前の机に置いた。


「魔法石採掘ですか? よくある依頼ですよね」


 ローリンは依頼書を確認しながらそう言う。


「左様。内容はダンジョンに入っての魔法石採掘になる。F級でも受注できる内容だ。ただし少々、問題もあってな……。このダンジョンには先日、C級討伐対象のグリフォンが飛び込んだとの情報がある。できればパーティーで動いてほしい依頼でな」


 魔物にも冒険者同様にF~Sの等級があり、C級討伐対象はC級冒険者で対応可能な魔物を意味する。


 本来なら魔法石採掘の依頼と言えど、F級冒険者が挑んでいい相手ではないが……。


「ノア、君の身のこなしと超級魔道具の力を見る限り、等級こそ現在はF級だがその実力はC級を超えていると思われる。……それにこの魔法石採掘は地方の貴族直々の依頼なのだが、魔法石採掘をやりたがる冒険者も中々いないのでな。もしこの依頼を達成すれば報酬金はもちろん、ローリンと共に一気にD級への昇格を約束したい。如何かな?」


「とても嬉しい申し出ですが……どうして俺にそこまでしてくれるんですか? F級からE級を飛ばしてD級まで行くなんて、滅多にないものと思いますが」


 するとマスターはどこか悪戯めいた笑みを浮かべた。


「この街にも冒険者ギルドは多く、常に冒険者と依頼の取り合いが起こっている。より冒険者と依頼をギルドに招き入れるには、ギルドに力があると達成済みの依頼を増やして周囲に見せつける必要がある。故に、君のような実力のある者を低級のまま遊ばせるなど愚の骨頂……そうは思わんかね?」


「評価していただけて嬉しいです。グリフォンの討伐なら前職でも経験があるので俺は構いませんが……後はローリンの意思ですね」


 そう問いかけると、ローリンは即座に「やります!」と返事をした。


「こんな機会滅多にないもの! それに私のスキル【破魔印】は大きな魔物にも効果があるし、ノアの援護ならできると思います」


 マスターは「うむ」と頷き、俺たちに地図と書類を手渡してきた。


「依頼地の地図と依頼の概要になる。しっかりと目を通して、無事に依頼を達成して戻ってきなさい。二人には儂も期待している」


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