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1話 さらば、宮廷近衛兵団

「大変残念ながら、あなたの授かったスキルは【上限解放】になります」


「じ、【上限解放】……? 何ですかそれは」


 自分が授かったスキルなのに、思わず神官へと聞き返してしまった。


 俺ことノア・グライセルは幼い頃からラルフ王国の宮廷近衛兵団に入りたかった。


 理由は明白、ラルフ王国宮廷近衛兵団の長……現兵団長に子供の時、命を救われたからだ。


 故郷を魔物に襲われ、家も家族も失い、あと少しで魔物に食われるところだった俺を兵団長は救ってくれた。


 そして生気の滾る瞳で俺にこう言ってくれたのだ。


「決して諦めるなよ坊主。生きてりゃ何とかなるもんだ」


 ……魔物の群れ相手に一歩も退かずに戦い抜いた、その背に憧れた。


 だから俺は孤児院で暮らしながら朝昼晩と必死に鍛錬を重ねた末、二年前にラルフ王国宮廷近衛兵団の入団試験を受けた。


 最初は「成人の儀も受けてない未成年が入団?」と受付で顔を顰められたが、俺を覚えていた兵団長の「構わない。力があれば受け入れる」との言葉で受験を認められた。


 結果、俺は奇跡的に試験に合格し、その後はラルフ王国宮廷近衛兵団の第二班に配属され、日夜王国に尽くしてきた。


 ……けれど感じたのは力不足、即ち天から授かる才能ことスキルの有無の差。


 スキルはおとぎ話に出てくる魔法のような力で、戦闘向きのものでは炎や雷を放ったり、身体能力を魔物並みに強化できる。


 どんなに体を鍛え続けても、スキルがなければただの剣士だ。


 だからこそ俺も先輩たちのような強いスキルを望んだ、願った。


 兵団長のような魔物の群れを一掃できる男になりたいと、日々の鍛錬を欠かさず行いながら天に祈った。


 ……なのに今日、神殿で受けた成人の儀で授かったのは【上限解放】という謎のスキル。


「おかしい、スキルを授かっても力を感じない……?」


 人は誰しもスキルを授かったならその使い方が頭に浮かぶと聞く。


 なのに俺は何も感じない、何も思い浮かばない……。


「おいノア! お前、自分のスキルがどんな能力なのかさえ分からねーのか? あぁ?」


「カイル班長……」


 俺を凄んできたのは所属する第二班の班長、カイル先輩だ。


 カイル先輩は【煌炎】という炎系最上位スキルを持っている。


 その力で人々を襲う魔物を焼き尽くし、俺より少し年上ながらラルフ王国宮廷近衛兵団の第二班の班長を任されている。


「お前は剣士としちゃあまあ、そこそこだ。だがな、戦闘向きのスキルがなけりゃあ無駄に傷を負ってお荷物になるだけって俺は何度も言ってきたはずだ。……で、お前の授かったスキルは戦闘向きかよ?」


「それは。……分かりません」


「分かりませんだと? おいおい、自分のスキルさえ把握できない不確定要素を自分の班に置きながら今後も戦えって? 冗談きついぜ、他の団員にも迷惑かかるっての。……おい、ノア」


「はい、なんでしょうか」


 自分のスキルの力さえ分からない、そのショックで俯いていた顔を上げると、カイル先輩は言った。


「お前、近衛兵団抜けろ」


「えっ……?」


「だから、抜けろって言ってんだ。聞こえねーのか? 俺はお前みたいなお荷物背負いながらこの先仕事したくねーし、皆だって同じだろうよ。もしくは……俺の代わりに兵団長に言ってもらってもいいんだぜ? なあ、ノア」


 平の近衛兵団員で謎のスキルを授かった俺と、戦闘系の強力なスキルを持った班長のカイル先輩。


 兵団長がどちらの味方をするかなど一目瞭然だろう。


 何よりカイル先輩の言は正しい。


 ……今まで負傷した時も「ノア、お前は良いスキルを授かるといいな」なんて皆から誤魔化されてきたが……スキルを持たない、または戦闘に仕えないスキルを持った男が所属し続ければ、きっといつかはボロが出る。


 いずれいつかは……。


「……分かりました、カイル班長。俺も近衛兵団の兵士です。これ以上の無様は晒しません」


「ん、ならいい。ならこの神殿から一直線に兵舎に戻って荷物を纏めて出て行け。後の処理は俺がやっておく」


「はい。……ただ、兵団長に俺が謝っていたと伝えてください。兵団に貢献できないスキルを授かってしまい、すみませんでしたと」


「チッ、まあいい。その程度ならやってやろう。じゃあな、ノア」


 カイル先輩はそう言い、神殿から去っていく。


 俺はこれまでの努力は何だったのかと、足取り重く兵舎へ戻った。


《作者からの大切なお願い》


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