表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/24

13.研究


 俺の魔力を分け与えたことで、元気を取り戻した患者が言う。


「す……すげえ~! この誰にも使われず、何十年も汚かった孤児院が綺麗になった!」

「あの小さいのがやったらしいぞ!」


 指をさされ、雑草ズが顔を赤くして照れる。

 

「あ、あい……」


「うおおお! うちに来ない!?」

「マジで一家に一人欲しいぜ!」

「可愛い!」


 ……なんか、狂信的な熱さを感じる。

 怖いから関わらないでおこう。


 俺が開発した魔法の中に、【魔力解析】というものがある。

 これは対象の魔力数値や魔力性質を測るというものだ。


 魔力消費はなんと驚異のほぼゼロだ。


(まぁ、ただ見るだけの物だからね)


 研究では大いに役に立つ魔法で、愛用している。


「【魔力解析】」


 【魔灰水病(ミスリル)】に罹った人間を検査する。

 

「アルム様、どうですか?」

「……魔力の流れは正常だけど、なんか変だ」

「変、というのは……?」


 なんと表現したものか、と悩む。

 しばらく悩んだのち、こう答えた。


「うーん……穴の開いた袋にずっと空気を送り込んでる感じかな」


 その穴が大きくなればなるほど、病の速度も上がる。

 かと言って、それによって育っている生物が居る訳でもない。


 体内の中で虫が育っているのではないか、という恐ろしい想像をしていたのだけど、違うようだ。


 魔力の流れ……これが問題だ。

 

(まるで、どこかに魔力を供給してるみたいな……そんな動きを感じる)


 死ぬまで魔力を吸い取るなんて、悪徳業者にも程がある。

 

「アグニ、ちょっと魔力貸してね」

「はい!」


 いちいち許可を取らなくても良いんだろうけど、やはり自分のものという感覚がない。

 アグニはアグニだ。一人の人間として扱っている。


 それに、魔力を貸してと聞くたびにアグニが喜ぶんだ。


「さてと……いくらでも魔力を喰え、【追跡(トラッキング)】」

 

 俺の魔力を流し込む。

 その映像が脳裏に現れた。


(……この場所から、エーティア街を抜けて……山のその奥……ここか)


 映像が見えた。

 俺たちが最初に薬草採取をした近くの山だ。


 そこにある池の奥深くに、流れ込んでいる。


「……なるほど。シアン!」

「はいはーい! なに? どうかした?」


 孤児院で元気になった患者たちを看病していたシアンが、洗濯物を抱えながら顔を出す。

 俺はシアンのおでこを、人差し指で叩く。


「ん? おぉ! なんか頭の中に映像が出てくる!」

「俺がさっき見た光景。魔力に光景を記憶させて、シアンの中に流した。ここに行くよ」

「うんうん! もう一回やって!」


 ……ツン。


「おぉ! おぉぉぉっ! 凄い! もう一回!」


 面白い感覚のようで、シアンは何度もせがんで来る。

 ……全然飽きないね、シアン。


 *


 おでこに真っ赤な点を作りながら、シアンは俺たちの横を歩いていた。

 到着した先はもちろん、さきほど見た魔力が流れて来ている所だ。


 シアンが言う。

 

「でも、足軽山に原因があるなんて知らなかった」


 エーティア街では、そこは足軽山と呼ばれているらしく、冒険者の間でもあまり近寄られない場所なのだとか。


「おそらく、だよ。何が魔力を吸収してるのか知らないけど、元凶を叩き潰せば、あとは治癒するだけだ」


 問題の場所に到着した俺たちは、池の中を覗き込む。

 魔力の流れも外からだと違和感を覚えない。


 でも、脳裏で見た映像は間違いなくここだ。


「アルム~、この池は別に対して問題なさそうだけど」


 シアンはその場にしゃがみ、池に指を入れる。

 冷たいようで、「冷たっ!」とひっこめた。


「アルム様、いっそのこと池ごと蒸発させてみましょうか?」

「いや……それはやり過ぎ」

「むー……」


 不服そうにアグニが、頬を膨らませた。

 最終手段ということにしておこうね。


 でも、変だ。


 頬に吹きつける風を冷たく感じながら、ふと思う。


(……魔物や動物の気配が感じない。妙に静かなのもおかしい)


 ポツン、と雫がシアンの頬に落ちる。


「あれ……雨?」


 そう言って、シアンが顔を挙げた刹那────。


「ッ!?」


 スパッ────。


 時が止まり、音が消えた。


 鋭い一閃が、周囲を蹴散らしていた。


 木々に囲まれていたはずなのに、一気に視界が開ける。


 池を中心に、まるで巨大な鎌を振り回したような跡が出来上がっていた。


(ここら辺一帯の木は全部斬られたな)


 冷静にアルムが状況を判断した。 


 土煙が舞っている中で、俺はシアンに声を掛ける。


「大丈夫か、シアン」

「……っ、へ?」


 何が起こったかあまり理解できていないシアンが、尻餅をついていた。


(俺が咄嗟に引っ張ってなかったら危なかったな)


「アルム様、お怪我は?」

「俺はないよ、ありがとう」


 一瞬の魔力の揺らぎ。

 それがなければ、今頃シアンの頸は真っ二つだろう。


 シアンの気が緩んだ瞬間を狙って来た。


 雨なんか降っちゃいない。空は快晴も良い所だ。


 わざと、雫をシアンの頬に落とした。

 その隙に、鋭利な斬撃を広範囲に放ってきた。


 知性のある……敵だ。

 シアンが思う。


(たった一瞬……気を抜いた瞬間に、何が起きたのか分からなかった。もしもアルムが私のことを助けてくれなかったら……死んでた……)


 そして、シアンは青ざめる。

 先ほどまで、何もいなかったはずの池の水面に……鎌を持ち、首の折れた魔女が佇んでいた。


「嘘……でしょ……【怨水の大魔女(エルダーリッチ)】だ」


 リッチか。

 確か魔物図鑑によれば、何年も魔物の怨念や自然の憎しみを吸収し、ようやく生まれる魔物だ。

 討伐難易度もかなり高く、遭遇する確率は低い。

 

 でも、シアンの言葉から察するに、ただのリッチではなさそうだな……。


「カ……カカカ……ヒヒッ! ハズシタ」


 俺は静かに、魔女を見据えた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「自然の憎しみ」 自然の憎しみ?どういうことでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ