表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/24

1.追放


 マイクロ家は公爵家の家系だ。

 王族の血筋を引いている俺の家系は、必ず特殊な能力を持って生まれた。


 その日、執務室に呼び出された俺は父に告げられる。


「正式な手続きが済んだ。アルム・マイクロ。今日をもって、お前を我が家から追放する」


 気だるげそうに言う父に、俺ことアルムは小さく俯いた。

 拳を握る。


 王家の血筋を持ちながら、魔法の才能もなく、俺は誰からも理解されない能力を持っている。


「アルム、私は大きく期待していたのだ。それを裏切り、失望させた罪は重いのだぞ!」

「話を聞いてください! 何度も説明はしたはずです。『今は魔法が使えない』と、魔法を擬────」

「ええい! 黙れ! その説明は聞き飽きたわ! そうやって、無能を曝け出すな! この恥晒しが!」


 いくら取り繕うとするも、父は聞く耳を持とうとはしなかった。

 俺は幼少期、【擬人化】が発現した。

 

 その能力は、触れた物や概念に人の言語と知恵を与えるというものだった。

 

 だが、俺の魔力や知恵によって知能が変わってしまう特性があった。


 持っている能力がなんであれ、使い方次第ではきっと役に立つと信じているし、俺は将来、父の誇りになりたいと思っていた。


 それに、俺はこのマイクロ家でかなり働いている。


「【擬人化】した草や石たちは、庭の手入れや屋敷の掃除に活躍してくれています。俺の能力だって、使いようによっては……」

「それで、私が大事にしていた壺を割ったのか?」


 俺は言葉に詰まる。

 俺の追放が決定的になったのは、父上が大事にしている壺を俺が割ったと言われたからだ。


 だが、そんなことは記憶になく、俺がやるはずがない。


「俺じゃありません!」

「お前の兄、フィムがそう言ったのだ。それに雑用など使用人でも雇えば済む話ではないか。お前に居場所を与えてやっているのだ。この広い屋敷の全ての雑用をするのは当然のことだ!」


 確かに、その通りだ。

 俺のやってきた仕事に代わりは存在する。


 マイクロ公爵家の広さは使用人100人居て、四日で掃除が終わるかどうかだ。


 俺はそれを一日で終わらせることができる。


 本当に俺は要らない子なのか……?


「……父上、俺が小さい頃に言った約束を覚えてますか」

「はっ、子どもの戯言など忘れたわ」


 唾を吐き捨てるように言う父に、俺は言う。


「……最強の魔法使いになる、です。そのために、ひたすら努力をしてきました」


 父上が唯一、その言葉を聞いて喜んでくれた。 

 だから目指そうと思った。


「どうか、もう一度待ってくれませんか……? 必ず、必ず父上の期待に応えて見せます……」

 

 マイクロ公爵家という名に恥を欠かせぬよう、死に物狂いで本や勉強を重ねた。

 父や家族からも信じてもらえず、追い出される。


 そんなのはあんまりだ。


「ふんっ図々しい餓鬼だな。我が子ながら恥ずかしい。即刻出て行くが良い。アルム・マイクロ。いや、ただのアルムか」


 付け加え、父上が言う。


「お前の夢なぞ、叶う筈もないだろう。現実を見ろ、この無能が」


 *


 俺はそれから、家を出るための準備をする。


 手に持っていた雑草を握る。

 そうして、唱えた。


「【擬人化】」


 今の俺は魔力がほぼなく、ゼロに等しい量しかない。

 幼少期に魔力のほとんどを使った後遺症に、魔力が回復しなくなっていた。

 

「あい~!」


 光に包まれ、手のひらサイズの小さな生き物が現れる。

 

 俺は雑草を【擬人化】した。


「ごめんな……今の魔力じゃ、一体しか作れないんだ。一体じゃ大変だろうけど、屋敷の雑草たちに『自由に暮らせ』って伝えに言ってくれ」


「あい……? あい!」


 【擬人化】した雑草がスタタ……と走り去っていく。

 

 彼らは、俺の言うことを聞いてくれる。

 せめて、これまでの苦労を考えると自由にさせてやるべきだろう。


 たくさん仕事して、頑張ったもんな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >どうか、もう一度待ってくれませんか……? 待てと言うならせめて自分から期間を設けた方が。待ってと言う時に回数指定する人初めて見るように思います。アバウトすぎる陳情は説得力に欠けてて…
[気になる点] 話は理解できないです。 まずはスキルの有用どんか議論してます。 >「【擬人化】した草や石たちは、庭の手入れや屋敷の掃除に活躍してくれています。俺の能力だって、使いようによっては………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ