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相撲に関連する作品(相撲小説「金の玉」「四神会する場所」シリーズは、別途でまとめています)

白鵬論

作者: 恵美乃海

第69代横綱、白鵬翔を論じた文章です。


相撲愛好者の方が年に6回発行されている、

すもう瓦版「土俵」誌の編集発行人の方からご依頼を受け、本年7月下旬に執筆した文章です。


この文章をご収載いただいた「土俵」誌の発行日は、

令和3年9月27日。

白鵬の引退が報道された当日となりました。

  いつだったか、インタビューに答えている白鵬の背後に、双葉山の写真とジンギスカンの肖像画があった。

 彼の居室であったのだろう。

 その二人が飾られているというのは、白鵬のイメージにぴったりだ。


 白鵬も双葉山を力士の理想像として尊敬しているようだ。

 その残した連勝記録にこだわっていたし、63に終わったその連勝が継続していたときには、69連勝を破るのが自分の宿命、といった発言をしていたかと思う。

 後の先の立ち合いを試みていた時期もあった。


 が、白鵬の体内には、世界史上最大の領土を持つ帝国を築いた民族の英雄ジンギスカンの、荒ぶる征服者の魂も、その血脈に流れているのであろう。


 今、実際に相撲を取る少年の数はとても少ない。

 が、今の相撲界には少年時代から相撲を取り続け、各種大会で優秀な成績を残してきた相撲エリートが集結している。

 その相撲エリート達。そして年齢的には全盛期であるはずの力士達が、実質的には史上最強力士とはいえ、全盛期に比べてその力量は大きく下降したであろう36歳の力士に歯が立たない。


 世界史的と呼べるだけのスケールを持った英雄を生み出すことはなかった日本という島国で誕生し、長い歴史の中で種々の規範、様式が伝統となって磨かれていった相撲。

 その相撲というものが形作る円が、広大なユーラシア大陸全域を背景として、相撲という規矩にとらわれることのない、もっとスケールの大きな円を持つ人物に相対し、包含されてしまった。


「勝利」というその一点に全精力を振り向け、その世界の持つ常識から遥かに隔たった領域に到達する。

 それは時代に選ばれた最強者の特権。


 ジンギスカンの息子たちは、ジンギスカンの築いた大帝国を分割統治して、その領土を更に拡大させた。

 とはいえ、世界史上に屹立すると言い得る巨大な英雄はジンギスカンのみ。


 白鵬はその残した記録からも、そしてその存在自体も、相撲というものの従来の常識と限界を押し広げた。


 この力士を相撲史の正統から外れた異形の英雄と位置づけるか、その残した記録を虚心に受けとめ、史上最強力士と位置づけるか。


 白鵬が退場した後、相撲は伝統に回帰するのか。

 あるいは国際化の道に向かうのか。


 白鵬の歴史的評価は、そのひとつの指針になるのではないだろうか。


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