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第5話 仕方のない結論


「逃げるって選択肢も一応あると思うよ〜。」


「それは出来ないかな。勝手に逃げたらそれこそ捕まると思う。」 


 本当にどうしよう……。

 魔王様も魔王様の側近の方も絶対に怒ってると思うし、勝手にいなくなったらオヤブンさんにまで迷惑をかけちゃうと思う。


「そういえば、あの魔王はキミと目の色が似てたよ〜。優しそうな魔族だったね〜。折角村長さんが時間をくれたんだから〜、色々調査してみようよ〜。くよくよしててもダメだよ〜。」


「……そうだよね。切り替える!」


「その意気だよ〜それじゃあ〜異世界渡りの先輩のボクが〜キミに世界異変の調査のお手本をみせるよ〜。ついてきて〜。」


 そういって、タガメが村の人に聞き込みを始めた。

 正直世界異変とか考える余裕はないけど、きっと私を労って言ってくれてるのはわかった。


「勇者イワオかい? あいつに家に入られて、家のものが盗られてもその時はそれが当然のように思えちまってね。」


「勇者イワオは不思議な人族だったよ。あいつにされること全部が当たり前だって思っちまった。だが、村の惨状を見ればわかるだろう。当たり前なんかじゃない……。」


「う〜ん。勇者イワオの目的はよくわからないけど、王様はどこにいる? って聞かれたかな。」


 タガメがいろんな人に手当り次第聞き込みしてる。

 タガメを相手にしても普通に接してるのを私は羨ましく思って見ていた。

 私は見た目が違うだけでいじめられてきたのに、何で異世界だとみんな普通に接するんだろう?

 魔族と仲が良いからなのかな?


「聞けば聞くほどよくわからないな〜。キミはどう思う〜?」


「え? ごめん。何だっけ?」


「もう〜ちゃんと聞いてて〜。キミは世界の崩壊を止めたいんでしょ〜。」


「ごめんなさい……。」


 正直、魔王様か側近の方が私達を監視してるんじゃないかと思って、気が気じゃない。

 話は聞いていたけど、他にも色々考えちゃって、考える余裕がなかった。

 タガメは相変わらず呑気な声だけど、こんなに早く適応するなんて、本当に漫画の主人公みたいだ。

 

「キミは勇者イワオについてどう思う〜?」


「何か能力を持った人間……とか?」


「能力を持つ人間か〜。その可能性はあるよね〜。でも〜能力に対して理解があるってことは〜キミの世界にもそういう人がいたの〜?」


「え? 漫画とかアニメとかで見て。」


「なるほどね〜。」


「それはそうだよ。私はずっと漫画やアニメの世界で生きたいって思ってたから……。」


「そっか〜それなら想像の産物を目の当たりにしても動揺しないのに納得だよ〜。」


 漫画やアニメの世界だと緑とか青色の髪でもみんなから受け入れられていた。

 私はそうじゃなかった……。

 だからいつか、そんな世界に行きたいってずっと思ってた。

 でも、実際に異世界に来てみて思った。

 私は多分向いてない……。


「ボクもキミと同じ様な意見だね〜。協力者がいる可能性もあるかな〜。大事にはなってない様だけど〜もうちょっと情報がほしいね〜。」


「これって大事じゃないの?」


「世界異変ってなるともっと規模が大きくなるよ〜。でもそうだね〜ここに住む人達にとっては大事だよね〜。」


 タガメが村を見渡す。

 昨日よりも少しはましになっているけど、悲惨な状況には変わりない。

 きっと荒らされてから時間は経っていないんだと思う。


「そういえば〜。魔王はなんでこの村に来たんだろうね〜。何か知ってるのかも〜。」


「……今は、その話は置いておかない?」


「切り替えたんじゃないの〜? ボクの見立てだと相当優しい王様だよ〜。」


 切り替えたけど、会えるほど切り替えられてない。

 というか、切り替えるのなんて無理だよ。

 聞き込みをしてるときも、気が気じゃなかったもん。

 なんか、見られてるんじゃないかとか、色々考えちゃってたもん。

 冷静になると、何であんなに舞い上がったのかわからないし。

 タガメの見立てに信用が置けるかもわからないし。


「村長さんのところに戻ろ〜。」


「うっ。それは……。」


「村長さんにはお礼をしないといけないよね〜。」


「それはそうだけど…。」


 これ詰んでない? 

 オヤブンさんにお礼を言いたいけど、不敬罪になっても困る。

 謝っても許してもらえるかどうかわからず、このまま魔王様がいなくなるまで待ってから戻って、オヤブンさんか魔王様に反感を買うのも忍びない。


「結局……謝るしかないか。」


 私の選択肢は結局、戻るしかなくなっていた。

 憂鬱な私と違って、この村の人は荒らされた後でも農作業を営む人や、状況がひどい家には手伝いに来ている人もいる。

 重苦しい雰囲気はあるものの、無気力に陥っている人はいない。

 この様な体験を過去にしているのか、人間性なのかはわからない。

 けど、これだけ働いている人たちを眺めていると、異世界転移者で右も左もわからないとしても自分が何もしないのはバツが悪い。


「そうそう〜。村長さんが風習を気に入っていたみたいだから〜キミの世界の謝る時の作法をみせると良いかも〜。そういうのない〜?」


「一応あるけど……。」


 あれをやるの嫌なんだけどな。

 どうしてもいじめられてた頃を思い出しちゃうから。

 そんなことを考えていると、誰かがこちらに近づいてくる足音が聞こえた。

 振り返ると、自身の後悔の元凶がそこにいた。

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