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第1話 異世界渡り

 目覚めると、私は森の中にいた。

 慌てて周りを見渡すとタガメが気持ち良さそうに眠っていた。

 起こした方が良いと思うけど、なんか申し訳ない気持ちになってとりあえずそっとしておいた。

 

 でも、初めての異世界に少しワクワクしたけど、なんか異世界って感じがしない。

 見たことのある木に見たことのある果実。

 これは多分桑じゃないかな?

 食べると美味しいと思うけど、間違っていたらちょっと怖い。


 そうして森を見渡していると、タガメが起きた。

 小さな手で目をこすっているのが少しかわいい。


「あ、起きたみたいだね。え〜と、タガメ?」


「キミ誰〜? 何でボクの名前を知ってるの〜?」

 

「え? 冗談……だよね?」


「ボクは精霊だから嘘をつかないよ〜。冗談も何も〜キミはこの世界の人〜?」


 想像も出来ないことが今起きている!!

 もしかして……タガメは二人いる? とか?

 いや、多分ないないない。

 だって私のこと知ってたし。

 

「私はあなたに連れられてこの世界に来たんだけど……。」


「そうなんだ〜。」


「そうなんだ〜。じゃなくて! 異世界に来て初めにこれは流石に困るから! ちょっと、何が起こってるのか説明してほしいんですけど!!」

 

「ボクも説明して欲しいぐらいなんだけど〜、キミの素振りからして〜ボクがキミを連れて来たってこと〜?」

 

「そう!」


「なるほど〜。」


「なるほど〜、じゃなくて!!」


「そっか〜。」


「そっか〜でもない!! せ・つ・め・い・し・て!!!」


「う〜ん。知らないことは説明出来ないよ〜。でも〜ボクも異世界渡りの反動で一部の記憶が無くなるんだよね〜。ただ〜よっぽど切羽詰まった状況だったのはわかったよ〜。キミも大変だね〜。」 


 タガメが能天気に笑ってる。

 終わった。

 私の異世界渡りは何となくもう詰んでる気がする。


「とりあえず〜キミに起こった出来事を話してよ〜。こうみえてボクは賢いんだよ〜。」


 タガメの能天気さに苛立ちながらも私は教会で起こった事を話してみた。

 タガメが腕を組みながら私の前でパタパタと羽ばたきながら頷いている。

 なんかその姿にも少しイラッとする。

 

「う〜ん。信じられないけど〜、キミの言うことを信じてみるよ〜。ということで〜これからよろしく〜。」


「よろしく〜。じゃないんですけど……。とりあえず、私を元の世界に戻れるの?」


「難しいと思うな〜。」


「え?」


「ボクの能力についてボクは説明してなかった〜?」


「してない。」


「もう〜、ボクもうっかり屋さんだね〜。てへ〜。」


 きっとこのモヤモヤは殺意だと思う。

 暴力反対派の私でも流石に手を出しても良いと思う。


「羽を掴むのはやめて〜。」 


「他には!」


「もう〜キミは恐ろしいね〜。まず〜キミがこの世界に来たのはボクが異世界渡りって能力を使ったからだと思う〜。異世界渡りをするには条件があるんだけど〜、一つは世界異変の解消だね〜。」


「世界異変?」


「異世界渡りは異変が起こってる世界にしか行けなくて〜、異変っていうのは最終的に世界を滅ぼすものになるんだ〜。」


「じゃあ……異変を止めないとこの世界が滅びるってこと!!」


「その通りだよ〜。ただ〜世界が滅びても異世界渡りは使えるようになるから〜滅びるのを待つっていう手もあるよ〜。ボクは世界が滅びるのを目の当たりにすることの方が多いよ〜。」


 呑気に語ってるけど、重大なことを言ってるんだけど。

 その姿にも少しイラッとするけど、今はそれどころじゃない!

 

「待って! 世界が滅びたら……私も死ぬんじゃ。」

 

「生き物の全てが滅亡するって場合もあるけど〜ボクは精霊だから大丈夫だよ〜!」


「ほら! じゃないから! 私はただの人間!ニ・ン・ゲ・ン!!」


「そういえばそうだね〜。まずいね〜。」


「そうだね〜じゃないよ……。」


 ダメだ。もう挫けそう。

 なんだか涙が出てきた。


「もしかして私の世界は滅びることになったから使えたってこと?」


「確証を持って言えないけど〜もしかしたらキミ自身が異変だったって可能性もあるね〜。ただ〜他にも一つ大きな問題があって〜。」


「何!?」


「さっきも話したけど〜キミが元の世界に戻れる可能性は極めて低いってこと〜。ボクの異世界渡りは行く世界を選べないから〜キミに救ってほしいって言った人もこの世界にいるかわからないよ〜。」


「待って……。それじゃあ、私は何のために異世界に来たの……?」


「でもでも〜希望はあるよ〜。ボクと似たような精霊はいないし〜ボクは嘘はつけないよ〜。もちろん騙すような精霊でもないから〜ボクもキミみたいな人間と行動をするなんて今回が初めてだよ〜。」


「つまり?」


「もしキミが元の世界に戻りたいなら〜、ボクと一緒に世界の異変を解消するか、世界の滅亡を待てば〜元の世界に戻れるかもしれないって事〜。」


 笑顔で私を見る自称精霊が凄く胡散臭い。

 私騙されてる気がする。

 やっぱり、花園先生を信じたほうが良かったんじゃないかと思えてくる。

 でも、もう選んじゃったから今更戻ることも出来ない。


「どこにいくの〜?」


「とりあえず、世界の異変を解消しないといけないんでしょ。もう起こってるかも知れないから、まずは人がいるところにいかないと。それに、お腹も空いてきたし。」


 世界がどう滅亡するかはわからないけど、そうなったら私も死ぬ可能性の方が高い。

 だから、世界異変ってのを解消して世界の滅亡を回避しないといけない。

 もし私を救ってくれた人がいなくても世界を渡って探してって……それ途方も無いじゃん!!

 どうしよう……。

 考えても仕方ない! とりあえずこの世界の異変を解消しないと!


 あれ? でも、あの男の人はすでに私に会った口ぶりだったから、何となく時系列がおかしい気がする。

 あの人の話だと私はあの人を救ってから生まれた世界に転生したって事になる。

 そう考えると、私はあの人を救う未来は確定してるってことだ!!

 

「ねぇ! 私あの人を絶対に救えるかも!」


「あ、多分時系列のズレの話だと思うけど〜、絶対は無いよ〜。時系列的にはキミが救うのが先だから〜キミが死んだらその人は救われないままキミも助けられずに終わるよ〜。異世界を渡ってきた先輩の反省だよ〜。」


「反省って……。」


「実際に似たような例はあるんだよ〜。タイムマシンがある世界で〜今の自分が未来の自分を見てこうなるからって何もしなかった世界〜。結果は〜過去の人が何もしなかったから未来が変わって〜、世界は滅亡の一手になった〜。」


「でも、世界は無数に枝分かれしてるって漫画とかで……。」


「枝分かれはしていたとして〜今この世界で生きるキミには関係ないと思うんだ〜。もし、キミが救えるからって何もしなかったら〜キミ自身はどうなると思う〜?」


 私に疑問を投げかけてくるその姿に開いた口が塞がらない。

 悪意はないってわかるけど、嫌味に聞こえるその声が私の胸に刺さった。


「大変だと思うけど〜これからよろしく〜。」


 そうして私の異世界渡りはスタートした。

 世界を救うとかいまいち理解出来ないけど、生きるためにも今は頑張るしか無い!


 ぐぅ〜


「まずは食べ物を見つけないとだね〜。」


 なんか、情けない始まり方だよ……。


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