第158話 魔王城潜入
ピュラーは予定通り魔王城に潜入していた。
(こっちは順調かちら。気付いてないみたいなのよ。)
師匠は軍事の才能があるかちら。
ケルト族は魔族社会に疎いはずなのに、大した知識量なのよ。
族長の娘だったから、歴史の勉強もしたのかちら?
それにペルシャと接することで磨かれた観察眼。
魔族の中でも飛び抜けて凄いのよ。
「魔王城なんかに行かなくて正解だったのよ。」
魔王城のデザインが気に入らないぐらい禍々しいのよ。
殺伐とした雰囲気はあたしには気持ち悪いのよ。
中でも牢屋は気持ち悪いのよ。
誰もいないのに死臭が漂っているのよ。
「ラビトト族もいないのよ……。」
もう分かっていたことかちら。
でも、こんなに心が痛むとは思っていなかったのよ。
『生き残ったラビトト族がいたら、ピュラーさんの判断で助けてください。最悪、私達も乗り込みます。』
女王は優しすぎるのよ。
それにしても、勇者イワオは最悪の男なのよ。
「勇者イワオ様〜。ご寵愛くださいませ!」
「勇者イワオ様は私のものよ。」
「サイッコーーーー!!! エロゲー要素も入ってるとか、最高すぎるぜヘイブンガルド!!! 実際もこんな感じなのかな??」
意味わからないことを言っているのよ。
不快な嬌声は我慢するのよ。
「く〜! ペルシャちゃんと出来ないのが悔やまれるぜ!! アプデはよ!!」
意味わからない事を言ってる以外はのんきな会話なのよ。
有益な情報は無さそうかちら。
………な、なんなのよ! あれは!!!
「勇者イワオ殿、楽しんでいる所悪いが、なぜケンドを暴れさせているのだ? 余が鎮圧に向かったほうが良いのではないか?」
「おう、ベルゼルートか。あれは大したことじゃないから気にすんなって。」
「それなら良いが……。」
あれが……魔王様なのかちら?
化け物なのよ。
ピュラーには魔力を見る目はないのよ。
でも、本能が語るのよ。
あれは魔族が束になった所で勝てるはずもないのよ。
それなのに、なぜ魔王は勇者イワオに付き従っているのかちら?
「今後は引き続きラビトト族を探しつつ、反魔王軍の討伐だな。人族はそろそろだと思うから後回しで。」
「余も出陣した方が良いと思うのだが……。」
「そうあせんなって。ベルゼルートはもっと強くなって、最後には無双してもらう。なぁ、そうだろう?」
あれが更に化け物になると言っているのよ。
壁に問いかけてるのよ。
誰かいるのかちら?
迂闊に魔術を唱えられないのが悔やまれるのよ。
「ま、安心しろって。これも世界を平和にするために必要なことだ。俺を信じろ!!」
ニッコリと歯を見せてるけど、きもいのよ。
「それならば良いのだが……。」
魔王も魔王で何でこんなやつの事をしんじてるのかちら?
どこからどう見てもこいつは驚異にすらならないぐらい弱いのよ。
「勇者イワオ様、自分は本当にケンド様を止めなくて良いっすか?」
「もちろん、止めなくて良いっす!!」
あれがドラゴソ族のスルドってやつなのかちら?
どうして、四魔将クラスになってるのよ?
あたしの【危険察知】がビンビンに働いてるのよ。
「確かにあいつは強いが、経験値にならねぇし、経験値もくえねぇって通じないんだっけ? まぁ、これも俺の崇高な作戦ってわけよ。俺を信じたらお前らは強くなれただろ?」
魔王とスルドはうなずいてるけど、肝心のお前は雑魚同然かちら。
憎たらしいのよ。
絶対に報いを受けさせるのよ!!
「……勇者イワオ様はためらいがないっすね。」
「当たり前だろ! 優秀な参謀は即断即決!! ピカデリカが勝手に進軍する強制負けイベはマジで許せねぇけどな。」
「あれは、ガルディア様がいたっすから。」
「ガルディア? ああ、白虎か。あの程度のやつに負けるとか、無いわ〜。」
お前が言うななのよ!
今すぐ報いを受けさせたいけど、我慢なのよ。
あいつをみていると、気持ち悪くて吐きそうなのよ。
一応他も見たけど、大した収穫は無さそうかちら。
魔王城のくせに空き部屋が多いのよ。
こんなに空き部屋が多いのに、魔族を減らしたいってどういうことかちら?
訓練所もよくわからない訓練ばっかりなのよ。
何で魔族が訓練所を走っているのかちら?
腕立て伏せとかいう訓練も魔族に必要なのかちら?
宿舎の方は結構利用してるみたいなのよ。
ペルシャのファンと言ったところかちら。
肝心のペルシャは見つからなかったけど、ペルシャはあたしの存在に気付く可能性があったからいなくて良かったのよ。