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【side】Restart  作者: 漉凛
1紀生 過去編1
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7.北東 涼の過去

僕には前世の記憶が2つある。

一つ目は地球で過ごした記憶、二つ目は異世界で過ごした記憶。








北東(ほくとう) (りょう)、それが一つ目の前世の名前だった。

北東家は代々貢路家に仕える家の一つで家紋には白菊が描かれている。




僕はそこの家の長男として生まれた。

たった数十分という差で僕は兄になってしまった。



僕たちは双子で弟の名前は陸、僕とは違ってとても素直でいい子だ。

二人でいるのが当たり前、それが僕たち双子だった。






数十分早く生まれた僕は陸のことを大切な弟として扱ってきた。

それは今も変わらない。




ある日、貢路家の集まりに呼ばれた僕たち家族は貢路家の屋敷に来ていた。

そしてその日に初めて出会ったのが本家の人達、貢路 愛珠海と貢路 弓弦だった。



その時教えてもらった花はスプレーマム、花言葉は「清らかな愛、高潔、気持ちの探りあい」などがある。

きっとさり気なく彼女も探りをいれていたのかもしれない。




僕たち双子のことを彼女たちは優しく出迎えてくれた。

最初は警戒していた弓弦も次第に心を開いてくれた。



彼女達と遊ぶようになって長男の優志(ゆうし)とも仲良くなった。

噂ではいつも決められた量の勉強を完璧毎日こなしている優秀な兄妹だと聞いていたからきっと本人たちは近づきがたい人達なのかと思っていたけどそうでもなかったことに驚いた。



3人の中でも浮世離れしている愛珠海はいつも僕たちに笑いかけてくれて、いつも勇気と希望をくれた。

彼女は元々病気を患っていて今まで病状が良好だったがある時、急変した。

16歳の誕生日まであと一週間というところで病状が急変して彼女は儚くなった。






僕は彼女が亡くなる前に密かに相談したことがあった。

自分は北東家の家を継ぐのに向いていないと。



それをそれとなく彼女に言った時彼女はこういった。



「そっか、家を継ぐ...ね。きっと涼はずっとそのことを悩んできたんだね。それは私が決められることではないけど、アドバイスすることとしたら二人で話合って決めるのがいいんじゃないかな?」

彼女は月を見上げながらそう言う。



「話し合って決める...それがいいかもしれないね。でも、陸は遠慮しないかな?急にいなくならないかな?僕、怖いんだ。陸が僕から離れていくんじゃないかって。」



「遠慮なんていらないんじゃないかな?逆にさ、涼はどう?陸に隠し事されてずっと何も言われないのと、逆に全て思いを言ってくれるの。」



「僕は...言ってもらえたほうが、いい。」



彼女は笑う。

「それなら、話合わなくちゃ。貴方たちは血のつながった兄弟なんだから。これ、あげる。」

そう言って彼女は白いアネモネを僕に渡した。







枯れてしまう前に押し花にしてしおりにした白いアネモネは今でも持っている。

彼女に相談して実行しようとしたときに両親の会話を耳にした僕は考えを変えた。




「なあ、やっぱり家は涼に継がせるべきじゃないか?」



「そうね、陸もそのほうがいいんじゃないかしら。」




と言っていたのをたまたま聞いてしまった僕は音を立てないように自室に帰って一人で泣いた。

大人は大人の都合で僕たちの行動の制限をしてくる。



それが僕は嫌いだった。

僕はこの時決めた。



大人になったら家を出ていこう、と。







20歳になって成人式で会った優志に小声で話しかけた。

「優志、実は....」



それを聞いた彼は驚いていたが「わかったよ。」と言って頷いてくれた。







僕は24歳になる前に家を出て優志のところでひっそりと住ませてもらうことにした。



朝早く起きて、最低限の持ち物を持って家を出た。

使用人には「いままでお世話になりました。両親には僕は帰らぬ旅に出たとお伝えください。」と言って

家の門を出た。


白いアネモネの押し花が入ったしおりを握りしめた僕は空を見上げる。

陸には最低限のことを書いた手紙を置いてきた。



僕は優志と待ち合わせしていた場所へと行く。



彼は僕にこう言った。

「本当にいいの?陸を置いて行って。」



僕は少し俯いた後に彼を見て答える。

「これは僕が決めたことだから、恨まれてもかまわない。僕は行くよ。」

まるで自分に言い聞かせるように言った。



彼は目をつぶって数秒した後に目を開けて言う。

「わかった。」






目を開けると病室のベッドの上にいた。



隣には優志が腰を掛けていた。

「ああ、起きたんだね。涼、君は....」



彼が何を言おうとしているのかが分かった僕は首を横に振って彼の言葉を止める。

「そっか、僕に残された時間は少ないんだね。...優志、ありがとう。できればでいいんだけど、このことは陸には言わないで...きっと陸はこの状況を....受け入れられないから。」




僕は外を見る。

雨が降る空は曇っていて、今の自分の感情のようだと思った。




僕は18歳の時に不治の病にかかってしまったことを知った。

これは僕しか、いや、僕と優志しかしらないことで、もちろん僕の両親もしらない。



あの時聞いてしまった両親の言葉で僕は一つの決心をした。



いつか消える僕は家を継ぐべきではない、だから僕は陸の前から姿を消そう、と。

そして、20歳の成人式の時に僕は優志に優志のところでひっそりと住まわせてもらえないかと言ったら彼はすぐに首を縦に振ってくれた。

24歳を迎えるまえに俺は姿を消すために準備をした。



陸が家を継いでも周りから何も言われないように、苦労しないように。

そして僕は陸の前から姿を消した。




そして、僕の最期が近づいていることがわかった僕は入院させてもらった。






僕はゆっくりと目を閉じる。







「おやすみ、みんな元気でね。」







僕はそこで永遠の眠りについた。













目を閉じて生涯を閉じた僕は知らなかった僕の残した言葉にただ一人涙を流した人がいたことを。

白いアネモネの花言葉は「真実、期待、希望」という意味があるそうです。次回の投稿は来週の日曜日の20時です。

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