4.魁 煌の過去と始まり
久しぶりに前世の夢を見た。
布団から起き上がると顔を洗面所に洗いに行く。
今日から新しい学校に通う日だ。
今から約一年前、父親から一つの紙を渡された。
「来年から月都学園という新しい学園が設立されるらしい。煌、おまえはここに通いなさい。」
そう言って渡された紙には学園についてのことが書かれているパンフレットだった。
俺は無言でそれのページをめくった。
最初は学園長などの先生たちの話、次のページには新しく設立される用の校舎マップ、とどんどんページを読み進めた。
そして最後に受験についてと学園の場所が記載されていた。
どうやらこの学園の入試は普通の学校とは違い、半年前の夏に行われるらしい。
最後のページを閉じると俺は顔を上げてこう言った。
「わかりました。」
そう一言、言葉にした。
その時の父親は少し安心したような顔をしていた。
鏡の前に立って目を閉じる。
開いた窓から入ってきたまだ少し寒い風が顔にかかる。
俺は懐かしい気持ちになりながら目を開ける。
長い黒髪を一つに結わえながら昔のことを考える。
俺は小さいころから同年代の男子に避けられていた。
男の髪の毛が長いのが珍しかったからか「なんであいつ、あんなに髪長いんだよ。」「女みて~だよな。」と遠くから俺のことを言っていたのを覚えている。
いつも膝を抱えている俺に家族は優しく接してくれた。
妹の美愛も「お兄ちゃんは世界一かっこいいんだよ。」といって励ましてくれた。
今、美愛は小学5年生なのであと2年もすれば俺と同じ学校に入学してくるだろう。
魁家は平安時代から続いている家で、代々その子孫には妖力を持つ特殊な家だ。
妖力を保つために髪を伸ばすのが我が家のしきたりで昔から髪を伸ばしてる。
俺はそんな魁家の中でも特に妖力が強いんだとかで髪を伸ばすのは決定事項だった。
髪を伸ばすといっても足元まで伸ばさないといけないというわけではないので、いつも腰より下に伸びたら切りそろえるようにしている。
新しい制服を着てまた鏡の前に立った。
「よし。」
誰もいないのに意気込むように一言そういうと学校の鞄を持った。
玄関で靴を履いて立ち上がって後ろを見る。
今日は家に誰もいなかった。
「行ってきます。」
そう一言残して戸をガラっと横に開ける。
戸に鍵をして門のほうへと向かう。
ちょうど庭の掃除をしていた仙道さんが「いってらっしゃいませ。」と笑顔を向けて送り出してくれた。
庭に植えている桜の木が満開に咲き誇っている。
風で飛んでくる桜をひとつ手に取って門に向かった。
これから、自分を変える日々が始まる。
始まる学園生活を想いながら門を出て学園へと向かった。
後ろでは、春の風が通り過ぎていく音だけが聞こえた。
いったん今回で魁 煌の話は終わりです。来週は違う人の話になります。次回の投稿は来週の日曜日の20時です。




