3.天津風 煌の過去
俺には前世がある。
前世の名前は天津風 煌、今世の名前は魁 煌。
天津風家は代々不思議な力、魔力というものを持って生まれた。
魔力を持つ者は各国から重宝され、命を狙われることも多くない。
そんな俺は家の人が俺の正体を隠して生きてきた。
普段暮らすときに使っていた名前は姫氏原 煌。
俺は姫氏原家の息子として育てられた。
姫氏原家は天津風家との繋がりが強く、秘密厳守の約束を平安のころに交わしているためどこにも情報が流れないようになっていた。
ただ一つの家を除いては。
その一つの家とは貢路家、代々多くの家来や分家を抱える大きな家だ。
貢路家の影響力は強く、貢路家が本気を出せば国が動くとさえ言われているほどに強い家だ。
天津風家は貢路家に代々仕えている家だったのでどちらの家の情報も貢路家だけは知っていた。
姫氏原家と貢路家は昔当主同士が仲が良かったとのことで貢路家に嫁入りしていたりする。
俺が8歳だったある日、俺は庭にある椿の花を触るある少女を見つけた。
その日ちょうど天津風家に用事があった俺は天津風家の庭を見てから帰ろうかと思い、庭にいたのだ。
ミルクティーブロンドの髪に藍色と月白色をグラデーションの瞳をした少女はどこか儚げに見えた。
日本人とは遠くかけ離れているように見える彼女は憂いを帯びた顔をしている。
話しかけようと思ったが人とあまり話したことがないので声をかけられずにいた。
すると彼女がこちらに気が付いて微笑みかけた。
「こんにちは、貴方は...たしかこの家の天津風 煌っていう子だったよね。ごめんなさい、勝手に庭に入ってしまって。」
俺は驚いた。
俺が天津風家の者だと知っているのは姫氏原家と貢路家の人しか知らないはずだからだ。
しかし、すぐにその謎は解けた。
「私、貢路 愛珠海。よろしくね。」
ああ、なるほど、貢路家の現当主の孫か。
「ああ、よろしく。俺は...さっき君が言ってた天津風 煌だよ。...よろしく。」
その日彼女は当主の付き添いで来たことを語った。
あまり大人の話を聞いていても面白くないから抜け出して庭を見ていたんだとか。
彼女と打ち解けるのに時間はかからなかった
噂では才女や天才と呼ばれるほど優れていると聞いていたのであまり近づきがたい子なのかと思っていてが割と話しやすくて面白い子だった。
彼女は花が好きで彼女の家の庭にもいろんな花が咲いているのだという。
椿の花言葉は赤が「控えめな素晴らしさ、謙虚な美徳」、白が「完璧な美しさ、申し分のない魅力、至上の愛らしさ」、ピンクが「控えめな美、控えめな愛、慎み深い」という意味がある。
彼女はこう言った。
「私はどれも当てはまらないかな。煌には白が合いそうだよね。」
なぜかと聞いたら不思議な答えが返ってきた。
「だって、煌は女の人よりも綺麗に見えるから。」
意味が分からなかった。
今まで他の人に自分の顔をそんな風に言われたことがなかったのだ。
彼女は続ける。
「黒の綺麗な長い髪に菖蒲色の瞳、それに顔の整い方、全てが作り物みたいに完璧じゃない。」
ああ、確かに長い髪で女の子に間違えられることが多かったな...作り物、か。
俺はその時気づいた。
確かに女の子に間違えられることは多かった。
でも、いつも周りは俺のことを「綺麗」という言葉を使わなかった。
髪を長くしているのは一応理由があった。
昔から天津風家の長男は髪を伸ばしているから、ただそれだけの理由で伸ばしていた。
何か書くときは髪を束ねて視界を広くした。
俺は周りの同年代の男子とあまり関わらなかった。
いつも一人、それが俺の普通だった。
今も、昔も。
俺は生まれ変わった今でも髪を伸ばしている。
家の掟でもあるので伸ばしたままにしているのだ。
そのほかに伸ばしている理由があるとすれば、いつかまた彼女に「綺麗」だと言ってほしいからかもしれない。
次回の投稿は来週の日曜日の20時です。次回も彼の話を投稿する予定です。




