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 夏が終わる。


 そう聞くと、どこか切ない気持ちになる。存在しない想いでが走馬灯のように駆け抜け、それが二度と取り戻せない青春のような気がしてならない。

 渓流で誰かと魚を素手で取ろうとしている。夜、雑草の茂る庭の縁側で鈴虫の声を聞いている。カンカン照りの太陽、木陰の揺れるアスファルトの上でチャリンコを押している。車に揺られて意識もうろうとなりながら両親の何気ない話を聞いている。

 あるはずのない夏の思い出が郷愁を帯びて通り過ぎていくのだ。そこには子どものころ特有のワクワクがあったように思えて、もう一度あの光景をと考えてしまう。これらはきっと漫画や小説を元に、私が描いた夏の思い出なのだろう。


 早いもので、もうすぐ八月が終わる。私にとって夏とはそれと同時に終わるものだ。今年も何か思い出があったわけではない。時間は当然のような顔して過ぎ去るが、この歳になるとその早さに驚かされるばかりだ。一日をやり過ごすのは上手になったが、もう下手になることはできそうにない。


 大人になるというのはどういうことか、よく何かのテーマになりがちな話だ。少なくとも、こうやって感動が減ることだとは思いたくないものだ。模範的な回答をするなら、それは社会の一員としての役割を果たすことであり、その責任を負うことだ。しかし私が欲しい答えはそんなつまらないものではない。

 もっとこう、自分が納得できるような答えはないだろうかと考えてみる。みたのだが、素敵なものは残念ながら思いつかなかった。なりたいものはそうではない、自分の限界がわかってくる、そういった現実が見えてくるのが大人になるということのように感じる。


 小説家になろう、において稚拙な文章をバカにすることが何度もあった。だがこれは無駄に知恵をつけた大人の悪い癖のように思えてしまう。なぜ貨幣が寒村に流通してるのか、明らかにもっと正しい選択肢があるように思える、そういったつまらないこじつけが多くなる。ものを知らないころは、もっと自由に素直に物語を楽しめたのに。


 きっと朝だからこんなにセンチメンタルな気持ちになっているのだろう。今日はなぜかうまく寝付けず結局4時半に起きているのだ。なぜ朝は感傷的になるのか、これについては以前書いた気がするのだが、どうだったろうか。

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