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夏の日差しというのはそれ自体が物質的な存在ではないかと疑いたくなるほどの熱がある。青天井に真ん中にいる自己主張の権化のようなそれから目を逸らすのだが、欧州の佳人の肌のように真白の砂の一粒一粒が光を乱反射させいやがおうにでも私に頭上の存在を意識させる。しかもその砂粒はただ眩しいばかりではなく、確かな熱さを私の足の裏にじわじわと伝えてくるのだ。視界の端まで広がるそれらすべてが私を鉄板の上に牛タンのようにする用意が十分であるという事実に、私はただ眩暈を覚えるのだ。それはただ汗が目に滲みる痛みであったのかもしれないが。
「海だぁ! ブルーだぁ!」
そう叫んだ少女は私が探検家のように恐る恐ると歩みを進めている間に、あのひっくり返る水のなかへと迷いなく飛び込んでいった。彼女は生物的な危機能力が喪失しつつある、まさにその最中であるのかもしれない。いったい何が原因となったのか頭を捻らせてみても、私の頭は考えることを拒むように思考が飛沫へと変化し、少女がそうしているように細かくなってその一粒を捉える前に消えて行ってしまう。結局、私は観念して原因として最たる例と思われる頭上に顔を向け、飢えた獣のようにうなり声をあげた。
「遊ぼうよ!」
「とんでもない! いいかいアヤカ、私は今大変な戦いの最中なんだ。だから遊んでいる余裕なんていうのは、足元にあるこの忌々しい砂粒ほども残っていないのさ」
そう聞くと少女、アヤカという名前は私の同居人が勝手につけたものなのでそう呼ぶ気はないのだが、弾かれたように顔を左右に振って辺りを見回した。しかし彼女が目にしたのはただ呆れるほどに続く海原と砂原で、あとは丘に広がるヤシの木々とその周りに生えている雑多な草木ばかりであっただろう。それらをたっぷりと視界に収め、そして二往復もしたころに私に向き直って首をかしげる。
「お父さんは誰と戦っているの?」
「分からないかい? 私はね、私を見下ろすものが等しく嫌いなんだ。それと私は君の保護者ではなく養育者だ」
少女は私の言葉についてしばらくの間思考していたようだが、すぐに諦めたようで、
「へんなの!」
と白い歯をむき出しにして笑った。その顔が日差しで十分に照らされていることを確認した私は、彼女の笑顔で熱に歪まないよう急いで日陰を用意することにした。
さて、今年はあまり夏を感じなかったので夏らしい描写を目指してみたのdが…まあこうなってしまったものは仕方がない。外国っぽい言い回しをしてみたのだがちょっとくどかっただろうか。それにしても人物を描くとそれにつられてサイドストーリーが勝手に現れてきてしまう。いったい彼らの関係がどういうものか私も気になるところだが、それはここでは語られることはないだろう。




