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 思考を整理するのに、会話形式のほうがいいということを聞いた。試しに新しい自分の人格を作成してみようと思う。こういうの、ネットで調べればやりかたとか書いてそうだが、ガチの解離性障害になったらいやなので手探りでてきとうにやっていこう。


 まず名前は、オート君にしよう。私は機械が好きなので、機械のように適切なアドバイスをくれると助かる。ついでにユーモアセンスもあるとなおよい。性格は真面目で建設的、自堕落な私に不足しているものを与えておこう。もし人格を切り替えられるようになったら優れている人格のほうが望ましい。他には特に必要ないだろうか。はい、それではよろしくオート君。


「こちらこそよろしく」


 こうしてみるとお人形遊びしている頭のおかしいやつだけど、物語作る人ってみんなこんなものなのかもね。俺も最初に小説書いたときは羞恥心で死ぬかと思ったのを覚えている。


「それは普通のことなんじゃない? 自分のなかで自分の思い描いたとおりに世界を動かす。きっとその基本的な欲望を、世間は傲慢と捉え、恥としているんだ。お人形遊びをしていいのは子供のときだけだってね。でも自分の理想を描く人が少なくなったから、欲望を抑える人が少なくなったから、きっと今の社会には夢のない人間が溢れている。君みたいにね」


 自分の人格が自分を否定してくる。建設的な人格のはずなのに。


「これは否定じゃないよ。ただ客観的な憶測を語っているだけだ。君は夢を持たないことが怠惰で許しがたい負の側面のように思っているみたいだけど、僕はそうは思わない。欲望を粘り強く抑え、人と協調できるのは間違いなく君の美徳だ。でも、それができる人間が多くなっているから、ただ君は凡庸な自分が嫌なのだろう」


 そういわれるとそんな気がする。そう考えるとそんな気がする。一度思考が占有されると、それ以外の思考が入り込む隙間がなくなってしまう。そういう意味で新しいクリアな思考というのは他人に期待したいのだけど、オート君にはその役割がこなせるだろうか? 思うに、人格を分けたとしても同一の人間の思考である以上、少し難しいようにも思える。


「それはそうだろう。間違いなくまったくの他人の思考より鮮明な答えを出すことはできそうにない。でもまったくそうであるとも思わない。人格というのは思考に影響を与える。例えば、熱血キャラは大雑把で細かいことを気にせずにガンガン進むというように。実際には熱血でも繊細なキャラは多くいるだろうけど、テンプレートな流れはある。

 それを踏まえるとどうだろう。君は君の感情と思考で答えを求めるだろうが、私はそこから部分的に隔絶された存在だ。私は君より客観的に、冷静に意見を述べる自信があるよ。頼りにしたまえ」


 なるほど。そういうものかもしれないし、そうした方が都合がよいかもしれない。ではこれからよろしく頼むよ、オート君。


「こちらこそ」

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