野営と出発
まだ陽奈視点です。
キャンプグッズも飛ばされてきていることを確認した後、ウロウロして現在地を調べるのは得策ではないと思い直す。迷子や遭難者の様なものだとしたら安易にこの場を動くのは宜しく無いのかもしれない。
……ヘリが上空を飛ぶ事もあるかもだし、そしたら助けてもらえるかな。
「お姉ちゃん、私達ってさ、何でこんな事になったんだろうね。」
空を見上げて、雲の数を数えながらひかりに声を掛ける。すると、カードケースを持った姉がこちらにかけよってきた。「オラクルカードで見てみようか?」とか素っ頓狂な事を言っている。一周回って面白い人だと思うが、この娘は現状を理解しているのだろうか。
「本気で言ってる?」
「うん。」
本気だったらしい。
「じゃあさ、それは後にして、テント張ろうか」
陽が登っているうちに助けが来れば御の字だが、来なかった時に困る。今は姉の過去ブームの中にキャンプがあって良かったとつくづく思う。
少し壊れているところがあるが、これならば問題なく使えそうである。四苦八苦しながら組み立てを完了すると、2人で中に入った。
「結構広いし丈夫そうだね。これなら多少の雨風は防げそうだね。山だからいつ天気が変わるかわかんないもんね。」
「お姉ちゃんのおかげだね。これ4人用だし!」
自分のおかげだと胸を張って言っている姉の肩をポンポンと軽く叩く。
2日が経った。
全く助けが来ない。というより空を何かが飛んでいるという事がない。普通は鳥ぐらい飛ぶだろう。雲だってここに来た時から動いていない気がする。風もなければ、雨が降る気配もしない。奇妙すぎる。
このままここに居続けたら餓死するか、脱水で死ぬ。
私と同じ事を考えていたのか、神妙な面持ちの姉が口を開いた。
「陽奈、もう移動しよう。ここで助けを待つねは諦めたほうがいいかも。案外マンションの近くかもしれないし。違ってても人に会いさえすれば状況を変えられるし……。このままいても食べ物と飲み物が底をつくよ。」
私は姉に一つ頷いてから一言二言かわすと、荷造りを始めた。乾麺や水などの食料と貴金属をリュックに詰める。山なので山菜もあるはずだから、食料でも重いものは持って行かないようにする。
「こっちは準備できたよ。」
リュックを背負って声を掛けると、「お姉ちゃんも」と返事が返ってきた。
次はウロウロします