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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

辛口

究極のRTA

 世界記録レベルのRTA実況で有名なヴァーチャルブロードキャスター《極超音速はいぱーそにっくカケル》は、最終回を銘打った配信の冒頭で中の人がリアル◯学生だと明かした。ネット界隈がわずかな個人情報の漏洩にも神経を尖らせるご時世、数億人ものチャンネル登録者の注目下でなぜわざわざ身バレをするのかというと、史上最速記録を狙う今回のRTAに必須だからだ。


「やっほー!!ハイどーも《極超音速カケル》ですー!いやー、ゲームのRTAもやり尽くした感があって、さすがに飽きてきました。特訓に特訓を重ねて世界一位になっても数時間経てば誰かがあっさり新記録ですからねー。それで今日はですね、ゲームの世界を飛び出しまして、ちょっと変わったRTAをやってみようかと思うんですー、ハイ。“人生”って、みなさん一度やったことおありだと思うんですけれども(笑)、なかなかRTAしようとまでは、まあ普通は思いつきませんよねー?えっと、時間がもったいないんでさっそくやっていきます。っていうか、人生のRTAですから、ある意味もうやってます。みなさん人生のゲームクリアって何だと思いますかー?こうです!!」

 生々しい破裂音に続いて金属塊が落下したような重たい音が響いたきり、《極超音速カケル》の美少女アバターはアルカイック・スマイルで斜め上を向いたまま動かなくなった。


 このRTA動画は視聴者の通報を受けてただちに削除されたが、配信を見ていた×才の少年が早くも数ヶ月後に世界記録を更新した。その後、当局による動画配信サイトの取り締まり強化や保護者への再三に渡る注意喚起にも関わらず同様の配信が相次ぎ、“今日びゲーム攻略ごときで満足してるような甘っちょろいブロードキャスターはRTAに人生懸けてねえ”と、若年層のみならず成人のあいだでも一大ブームが巻き起こった。最年少記録で若者に勝てないブロードキャスター達は、RTAを実行する際にマネートレードで荒稼ぎしておいた大金をすべて現金化し、“これぞ人生の究極の目標”とばかりにウェブカメラの手前に積み上げて火をつけ、その金額を競うなどした。

 現在、同種目のワールドランキングにおいて《極超音速カケル》の記録は第65536位に相当する。


おわり

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