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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第1章 別れと別れと再会と》
9/66

8話 T:AS《タス》対AS《スパイダー》

初めに戦闘を仕掛けたのはアルファvs盾スパイダーだった。


「隊長!仕掛けます!」

オレは先陣を切って飛び出した。壁に向かって。

「谷口!スモーク!」


「スモーク投下!」


すかさず千葉隊長と谷口がオレの意図を理解してフォローしてくれる。

T:AS装着訓練時に屋内模擬戦である能力見出だした。それを二人が思い出してくれた。


"壁抜き"


T:ASの足底は硬い鉄板で覆われていて、アシストスーツは元は下半身のアシスト能力から発展した代物だ。これも例外ではない。


"壁抜き"とはただ単純に壁を勢いよく蹴り破るのだ。


盾スパイダーはクスクス笑っていた。

「な〜にやってんだよ。スモークから突撃なんてセオリー通りじゃないか。すこ〜しガッカ〜リだな」

全面に盾を2枚を配置し、盾と盾の隙間からAK-12の銃口を構えた。


「まずは突撃してくる奴を蜂の巣ぅ〜……!?」

盾スパイダーは一瞬違和感を感じた。そう思った矢先に左の壁が勢いよく崩れだした。そこから人影が飛び出してきた。


「なーに〜!!舐めてくれちゃって!」


「…っ!!?(読まれた!?)」

勢いは止まらずそのまま突進した。


「ざ〜んね〜んでしたぁ次はこっちの番〜」

咄嗟に左側にシールドを配置し、篠崎の蹴りを受け止めていた。


「くそっ垂れ!!」

オレは左足を盾で受け止められている状態から

MINIMIを構えた。

撃とうとした矢先、体に急に痺れが走りだした。


「ぁぁぉう…………………」

言葉にならない声を出しそのまま地面に転げ落ちた。


…なんだ急に…電流が体内に流れてきた。

クソっ!体が…動かねぇ…

ヤバい、彼奴…笑いながら銃口向けてきた……逃げれない…


バババババン! バババババン!

「先輩!早く立って!」


「谷口!十字に撃ち込むぞ!」


「了解!」


「篠崎!早く立て!」

千葉隊長と谷口が銃撃で盾ヤローを牽制してくれている。

…簡単に言うなよなぁ、あちこち痛いんだよ…

痺れたらこの気持ちがわかるよ……

━━でも、こんな所で死んでたまるか!

「うぉりゃー!」


はぁはぁ、浩司が立った。浩司が立ったよ!


……あんまりふざけてはいられないか。


「お〜い、あんまり効き目ないのか〜い…電圧が低いのかぁ、命拾いしたね〜ククク」

盾スパイダーは上手に盾を動かし千葉隊長と谷口の銃弾を防いでいる。防ぎながらAK-12を乱射してくる。


この銃弾を防いでいるシールドの中央辺りにはちょっとした工夫がされていた。


"テーサーガン"

射程は短いが瞬時に電極が付いたワイヤーを射出し触れたものに電撃を流し込む武器だ。


不用意に近づくとテーサーガンで動きを封じられ、離れた位置からの銃撃はシールドで防がれてしまう。しかも、今は何とかオメガが機関銃ヤローの相手をしてくれているが、二人が連携したら厄介だ。


まずお互いを連携できないように離さないと。


「隊長!まず奴らを離しましょう!」


「ダメだ!」


「!?」

思っていたのと真逆の返答が飛んできた。


「どうしてですか!?奴等が連携したら手がつけられなくなりますよ!」

MINIMIを撃ちながら千葉隊長に食らい付く。


「俺達も同じなんだ!機関銃を持ったアシストスーツ相手に二人だけでは対処仕切れない!火力が違いすぎる!」


オメガを見た。

確かにお互い一歩も譲らない銃撃戦をしているが、谷口が何度かフォローしオメガの立ち位置を何とか優位にさせている。

適宜谷口からのフォローが無くなれば物陰に隠れることが出来ずに蜂の巣にされてしまう。


考えろ、考えるんだ━━何かいい対策はあるはずだ……奴らもアシストスーツでこちらもT:AS

を使っているんだ。


「な〜に考えてるのかな〜、そんなんじゃこっちから仕掛けちゃうぞ〜ククク」


「チっ」

MINIMIで距離を詰められないように千葉隊長と谷口も撃ち続ける。


大体何であのシールドはいい位置に動いて銃弾を防いでるんだよ!━━━━━━━


これじゃ弾切れになるのがおちだ。


━━!?

あれって装着者の意思で動かしている分けではないのか?……いや、無理だ。オレ達が撃つ前に射線上に動いているようだから自動で動いてるはずだ。

あのシールドの動作が自動で動いているとしたら、あの動きに納得できる。それなら、カメラか何かのセンサーで銃口をキャッチしているのか?いや、蹴りにも対応出来ていた。

敵の動きに反応しているってことだ。


「隊長!自分に考えがあります!」


「なんだ!?」


「ちょっ…先輩も隊長も話しながら撃ってくださいよ!」

谷口から必死な声の説教が飛んできた。


「悪い悪い!それでどんな戦術だ?」


「三方向からの同時突撃です!」

MINIMIを撃ちながら答えたが、あまりにも無茶苦茶なことを言ったもんだと思った。


「先輩!それじゃ3人の内2人があのビリビリにヤられるじゃないですか!?」


「もちろんお前はビリビリ決定な!」


「でしょうね!」

わかってましたよ的な顔で答えた。


すまんな、谷口……お前も一回味わえ…

てのは冗談で、谷口は射撃は上手だが接近格闘は苦手だからだ。

だから、止めはオレか千葉隊長がいい。


「ならのこりの電撃は俺が受ける!止めは篠崎、お前がやれ!」


……隊長…男ですね。


「了解!」

よし、あとはタイミングで仕掛けるだけだ!



------------------------------------


その頃、オメガチーム対重機関銃スパイダーは………


Kord重機関銃が辺りの壁に穴を開けている。


"兄さん"と呼ばれた重機関銃スパイダーの男は

内心焦りを感じていた。

原因は二つある。


一つ目は、中々相手を仕留められないことだ。

奴らの動きが速いのだ。いくらアシストマニュピレータだからと言っても保持しているのは重機関銃だ。約60キロもあるのだ。改造前のバッテリーを主電源にしているため、この"スパイダー"はアシストマニュピレータもあるせいで電力消費が激しいはず…


二つ目は、"弟"だ。

本来ならこのAS(スパイダー)は、盾タイプと重機関銃タイプで装備を変更した時点で連携が必要になると考えていた。盾だからスパイダー本来のマニュピレータの奇抜な動きで敵を翻弄しスピードも活かせただろう。

しかし、重機関銃タイプならその装備重量から動きが鈍り、そこを突かれたら殺られてしまう。なので連携が必要なのだ。


だが、"弟"は一人で連携を忘れ戦っている(楽しんでいる)

だから、敵と距離をとって撃ち続けるしかないのだ。


銃身が焼きつくのが先か…バッテリーが切れるのが先か…


幸い弾は沢山背負って持ってきた。


最悪な結果になる前に敵を殺る。

"兄"の脳内会議は終了した。



「ハァハァ…寺井!大丈夫か!?」

曹長のMINIMIが3発ずつに分け、撃ち続けている。


「曹長こそ、腰痛は大丈夫ですか?」

あまり表情を変えることがない寺井二曹も冗談を交えても疲労の表情だ。


いくらT:ASを装着していても12.7ミリの嵐から逃げ回るには神経が磨り減り、体力も奪われる。


「どうしたもんか……」

曹長は何度か後ろに回り、敵が背負っているボックス弾創の破壊を試みたが……無理だった。


援護射撃が続かないのだ。


寺井二曹が曹長の動きをカバーするため撃つが敵の方が火力があるため射撃が続かない。


「曹長、アイツの弾切れを待ちますか?」


「……寺井、それまで俺達の体力がもたん…」


「……いやっ…それもそうですね……」

寺井二曹は"体力ないのは曹長だけ…"と思ったが

言えなかった。怒らすと恐いからだ。

実は寺井二曹が陸曹教育を受けていたときの鬼教官が西曹長なのだ。

いざ、そんな鬼教官と同じ部隊になったら教育中の鬼の形相が嘘のように仏さんのように優しいのだ。

しばらくして曹長に聞いたことがあった。


なぜ、教育中は鬼のように厳しかったのに今はそんなに優しく後輩を指導するのか……


《昔はな、そんなに厳しくしなかったが、戦争で教え子がな……何人か戦死した。そこからだな、教え子には厳しく指導するようになったのわ……これでもかっていうぐらい厳しい訓練を科して、戦地でも生き延びれる決して諦めない精神力を養って欲しくてな……寺井もあの訓練は辛かっただろ?俺なら途中で投げ出したかもなワッハッハ》


ってなことを言っていたのを思い出した。


……まだ、諦めるのは早い……


「曹長、まだ諦めるのは早いですよ。何かしら相手がボロを出すまで持久戦で行きましょ」


…こいつ、いつの間にか成長したな…


西曹長は激しい銃撃戦の中で寺井二曹の成長ぶりに嬉しさを感じていた。


陸曹教育中で一番精神的に弱かったのが寺井二曹だったからだ。

寺井二曹は記試験ではいつも上位にいたが模擬戦や夜間行軍訓練では最低の位置にいたからだ。

そんな寺井二曹がなんとか教育を卒業したが、あまりにも心配で、上官に寺井二曹を自分と同じ部隊に配置してもらえないか具申したぐらいなのだ。

そんな寺井二曹が自分の教えを忘れていなかったのだ。

曹長は諦めかけていた気持ちを奮い立たせた。

一番心配していた教え子の言葉で。


「……そうだな、まだ諦めるには早いな。よし!寺井、波状攻撃でいくぞ!」


「了解」

二人は持久戦を覚悟した。


------------------------------------


アルファチーム対盾スパイダーは……


MINIMIを撃ち続けるアルファチーム。

次第に残弾も心許なくなってきた。


「あまり無駄撃ちしてると、弾切れになっちゃうよ〜ククク」


あの薄ら笑いムカつくなぁ


「隊長!谷口!タイミングはさっき言った通りで!」


「任せろ!」

「了解!」


篠崎は再び壁の裏へと消えていった。


「谷口!カウント10いくぞ!」


「了解!」


「っテェ!!」

二人同時にMINIMIを撃ち始める。


「10…9…8……」

谷口がカウントを数え始めた。


「何々〜今から何をするのかなぁ〜?」

盾スパイダーは余裕な表情である。


「この盾はもう"最強"と言ってもいいねぇ、君達の攻撃なんて絶対に僕には届かないよ〜ククク」


「7…6…5…4…」


「スモーク!」

「スモーク投下!」


「また、同じなのかい〜?つまんないよ〜芸が無いんだよ」


丁度カウントが0になった…………


ドコーン!!

大きな音をたてながら天井に穴が開いた。


「…!?」

…上からだと!!


天井の瓦礫から篠崎二曹が落ちてきた。

始めは"壁抜き"を見事に防がれたため、今度は死角の上から攻めたのだ。


谷口がカウント10を数えている間に隣の部屋に移動し、天井に穴を開けて2階に侵入。そこから盾スパイダーの上辺りに目星をつけて再度穴を開けたのだ。


どうやって穴を開けたのか。


まず天井に向けてMINIMIを撃ち、脆くしたところで、寺井二曹以外のT:ASの左手に装着されている"ガントレット"と左腕のパワーアシストをフルパワーにして、"突き"をしただけである。


ただ、これは制式な使い方ではないためどのように損傷するか不明であるが篠崎二曹はやって見せた。


「このヤロウ!調子に乗るなー!!」

"弟"はさっきまでの余裕な表情が消えていた。


「……!?」

ヤバい…盾が反応しない!?なぜだ!?


盾はきちんと作動していた。

ただ、篠崎二曹からの攻撃には反応したくても出来なかったのだ。


千葉隊長と谷口がスモークの中から射撃をしながら突撃をしてきたのだ。盾は二人の銃撃を受け止めないと"弟"が被弾してしまうから動けなかったのだ。


「舐めんなよー!!」


"弟"は咄嗟にAK-12を右手で腰だめ撃ちの体勢になり腰にあったホルスターからM9を取り出し篠崎二曹に向けて撃った。


パンパンパン!


しかし、当たらなかった。……防がれたのだ。


「何!?銃を盾に!?」


篠崎二曹は天井から落ちる間に拳銃を向けられ、咄嗟にMINIMIを盾にしたのだ。


……マジかよ。怖かったよぉ……


地面に着地はしたがMINIMIが破損してしまい瞬時に射撃が出来なかった。


「アホ丸出しだな〜、お前らも地べたに這いつくばれよ〜!」


千葉隊長と谷口はテーサーガンの射程距離に入っていた。

二人に向かってワイヤーが射出された。

電撃を浴びせた。


「ァァ…」

「イイっ…」


二人とも一瞬強烈な痛みを感じ膝をついてしまったが痺れはしなかった。


「……何だ?どうして……う!?」


急に盾を持っていたアシストマニュピレータが力が抜けたようにダラーんと宙ぶらりんになった。それと同時に盾を地面に落とした。


「くっ動かなくなった!?どうして!?」


スパイダーのバッテリーが切れたのだ。バッテリーが切れたアシストスーツはただの金属の重りだ。


篠崎二曹はいち早くこの状況を理解した。

「生憎、バッテリー切れのようだな。まともに拳銃も構えることも出来ないようだな…」


「あっ日本語で話しかけてもわかんないか?さっきは色々バカにしてたのだけは何となく伝わったぞ」

怖い顔をしながら篠崎二曹は近づいていった。


立場が急にアルファチームが有利になったことで"弟"は顔色が真っ青になっていった。

「ΟΠΙΚΞΕΑΡΟΠδΥκγε!!」

"弟"は必死に弁解しているようであったが、篠崎二曹は聞く耳を持っていなかった。

いや、言葉が分からなかっただけである。


「あの電撃は効いたぞ、これはそのお返しだ!!」


顔面にパンチをした。パワーアシストを若干弱めで。


パンチをされた"弟"は、軽く体が宙に浮いた。それから鼻が変な方向に曲がり、鼻血を見事なアーチ状に噴水のように出しつつ仰向けに倒れこんだ。白目が半開きで。



やっと倒したか……


「先輩…これ滅茶苦茶痛いですね…」


「おぅ、それをまともに喰らったオレはもっと痛かったんだぞ!」


「あぁ…すまんすまん。思いの外痛いもんだな。ワッハッハ…」


謝る気あるのかこの人は……



谷口が背中に付いているウィンチワイヤーを適度な長さで切ったモノで盾スパイダーをグルグル巻きにし拘束した。

それを確認しオメガチームの様子を見ていたら、どうやら同じタイミングぐらいで同様に"バッテリー切れ"を起こしたようだ。


流石、西曹長。相手に怪我をさせずに失神させた。それからは同じくワイヤーで拘束した。


初めての対アシストスーツ戦。

結果は勝利した。

しかし、数はこちらが有利だったはずなのに…死にかけたし、諦めかけた。

もし、戦争がまだまだ過激な時に敵がAS(アシストスーツ)を戦場に出していたら……"終戦"の二文字は遠退いていただろう。

出来ればアシストスーツを着た敵と戦うのは勘弁してほしい。これまでの歩兵の戦術が変わるかもしれないからだ。そうなれば仲間の戦死者数も増えてしまう。


あと8着が敵の手にある。気を引き締めなければ………


「各自、武器装備点検!」


「西曹長異常なし」

「寺井二曹異常なし」

「谷口三曹異常なし」


「篠崎二曹、MINIMI破損。その他異常なし」


「篠崎はUSP9で、敵の防弾シールドを持って先頭に付け!本来なら二手に別れる予定だが、敵にアシストスーツがまだあることを考慮し、戦力分散は避けたい。このまま第1から第2シェルターへと向かう!」


「了解!」

全員声が揃う。


「フォーメーション!……前進!」



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