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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第6章 関所砦攻防戦》
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第58話 女王の素質と男の甲斐性

 

 その日は雨が降り注いでいた。


 雨が降る日はどことなくき普段より騒がしさが幾分か下がるようだ。


 城下町では露店商もあまり客が足を留めないこともあり普段の半数以下しか店を出していなかった。


 代わりに屋内にあるブティックや日用金物店、酒場などに人だかりが出来て賑わっていた。


 大抵、雨の日は屋内での仕事は繁盛するが、反対に冒険者や行商人に露店商は早くにその日の仕事に見切りをつけて酒場に集まる習性がある。それはどこの国においても同様である。


 特に冒険者にとっては重要な判断材料の1つでもある。

 雨では視界も悪くなり、足場もぬかるむため魔物と対峙するときには普段の実力を発揮出来なくなり運が悪ければいつもならたいして強敵ではない魔物に返り討ちにあうことなどはよく聞く話なのだ。


 ティグラーガ王国に降り注ぐ雨は、どしゃ降りではなく、儚く誰かの哀しみを代弁しているかのように、そしてその哀しみを優しく包み込むようにも感じられる雨である。


 そんな雨が降り注ぐなか1人の少女と比較的大柄の男性、その後ろに少女とあまり体格に差がない小柄な女性が歩いていた。


 先頭を歩く少女の手には沢山の花がこれでもかという程の量を抱えていた。とても大切な壊れやすい物を持つかのように。


 少女は深々と黒い外套を被っていた。外套の下には華やかなさなど求めていない黒一色のドレスに顔は黒のベールで隠していた。

 どの地域、どの国、どの世界にでも死者を尊ぶ心と死者を送る儀式には黒を選ぶのは共通であるようだ。


 彼女らが向かう場所はティグラーガ城の裏門の横から少し離れた所にそれはあった。


 "王国騎士墓所"


 ここには名前からも推測出来るように命を落とした王国騎士達が眠る墓所である。


 王国騎士団は仕事柄、国境の警備から冒険者では太刀打ち出来ない魔物やその上位種である大型の魔物"魔獣"の討伐や国家間の戦に駆り出されることがある。


 そんな危険な任務をこなす騎士達は国王、そして国に忠誠を誓い危険を省みず命をかける。

 それは騎士として立派に務めを果たすことが何よりも民の生活の安寧に繋がると信じている。

 命懸けの仕事のため、どんな職よりも身分が保証され安定した高い給金が支払われる。


 だからなのか、若者達の間では一攫千金を狙える冒険者の次に人気の高い職でもある。


 ただ、どのような世界でも授かる命は1つだけ。


 国王、国に忠誠を誓い、どんなに民の為に任務をこなしたとしても無事に帰還を果たさなければ行き着く先は墓場なのだ。


 何かしらの犯罪に巻き込まれて、その命を散らしてしまったのなら取り残された家族は怒りや憎しみ、恨みをぶつける先があるかもしれない。

 しかし、民の為に命を落とした騎士達の家族は自分達の為に身を捧げてくれたことにやるせなくなる。


 それはきっと、平民に限らず王族もまた1人の人間。その気持ちは同じである。


 大柄な男と小柄な女性は一つ一つの墓石に花を手向ける少女から一歩下がった所から少女の後ろ姿を観ていた。


 少女の背中からは哀しみ以外何も伝わってこなかった。


 ここに眠る死者が少女にとってかけがえのない存在だった証でもある。


「貴殿方の王国への忠義は紛うことなき本物でした……貴殿方の活躍で今も私はこの地を踏みしめることが出来ています……貴殿方は立派な騎士でした。そして私の数少ない友人であり、兄のように厳しく姉のように優しくもあった存在でした……私は貴殿方の命を決して無駄には致しません。このララエナ・バージルポーンは誓います。貴殿方が繋いでくれたこの命を……全身全霊でこの王国の発展に尽力を注ぐことを……今はゆっくりと天国で休んでください。そして、これからの王国の姿を見守っていて下さい。 神への福道が開かれんことを、サラエイノ」


 ララエナは真新しい数ある墓前の前で両膝を着き、自ら誓いを立てて死者の御霊に祈りを捧げた。


「先日、ギルバートの実家に寄ってきました。 ギルバートのお母さんが作るパンはいつも味が変わらずとても美味しいのです……私はあのパンが大好きです……お母さんはいつも通りにパンを作られていました……自分の息子が亡くなったのにも……です。とても強い女性です。 テレサの家からは旦那さんがトンカチを叩く音が聴こえてきました……テレサの旦那さんが作る鍋は焦げ付くことがなくて評判なんです、私のお母様も愛用させてもらってます……テレサ達の挙式には私も侍女達に無理を言って変装をして参列させて頂きました……花嫁姿の彼女はとても……とても……綺麗で━━彼女は結婚をしたばかりだというのに……」


 ララエナの目には大粒の涙が今にも溢れ落ちそうである。

 そんなララエナの後ろ姿をカールとモルはじっと見守ることしか出来なかった。


「……将来、子供が出来たら私が名付け親になる約束をして……、私は約束を守れませんでした」


「ダン、ケイル、タリスト、イギル、ルカ……皆、大義でした……」

 ララエナは天を仰ぐように空を見上げた。

 見上げた空は暗く雨が降り注ぐ。

 降り注ぐ雨がララエナの涙と共に頬を伝って流れていく。


「カール……ありがとうございました。私には今やるべきことがあります。それを成す為には貴方の力が必要です。 力を貸して頂けますか?」


「はっ。 このカール、姫様の近衛隊長として姫様のお力になることを誓います」

 カールと呼ばれた男は胸に手を当てて一礼した。


「…………モルも先生の護衛の任があるのにありがとうございます……何せ、私の我儘で近衛騎士の編成が遅れていますゆえ、助かります」


「いえ、滅相もありません。賢者様の護衛は今ならヒッグ1人でも十分ですので」


「そうですか……それであれば暫くはあてにしてもいいですか?」


「はっ」


 そんなララエナの姿をカールはただ見ていることしか出来なかった。

「(姫様……あなたは完璧過ぎる。まだ10歳になられたばかりだというのに……あなたは人の上に立つのには完璧過ぎるのです。 だから、あなたは危険なんです……)」


 ララエナは立ち上がると、ふと、自分に視線が向けられていたことに気が付いた。


 視線の先には"騎士長(チーフ・ナイト)"を示す赤色の鎧を纏った人物が立っていた。

 彼は雨が降っているにも関わらず外套を着ていなかった。


 その"騎士長(チーフ・ナイト)"はララエナと目が合ったらしく軽く会釈するとすぐに退散した。


「申し訳ございません姫様。 戦友を弔いに来ていたのでしょう。代わりに私が非礼をお詫びいたします」

 カールはいなくなった"騎士長(チーフ・ナイト)"の代わりに謝罪した。


「よいのです、墓所では皆が同じ立場。親しい人を亡くしたのですから」


「寛大なお心遣い、感謝いたします」


「では、彼女の元へ参りましょ」


 ポルータ村の件と今回の件は偶然じゃない、確実に私の命を狙ってのこと……必ず首謀者を突き止め、断罪します。


 ララエナは今、手に握られている竜と不死鳥が絡み合うように出来た十字架を強く握り直すと自分が何を成すべきなのかを固く決意した。


------------------------------------


 数日前にオレは将来は義理の父親になるであろうウェルクガイム国王から爵位と領地を与えられた。


 元々、オレはエリーのお父さんからは中東欧州戦争での活躍を評価されて"騎士爵(ナイト)"を叙爵されていたけど、こちらの世界では下級貴族に属するらしく、一応、一国の姫であり白戦姫であるリリエナと婚約を結ぶのに体裁が悪いとのことで、オレは新たに"男爵(バロン)"を叙爵した。


 そう、オレはバロン篠崎となった。


 自分で言ってて笑っちゃうな。

 本当なら何て呼ばれるんだ?


 サーバロンか?


 分からん。

 貴族様の世界はオレには分からない世界だからな。


 最初は"伯爵"をと、謁見の間で国王様はオレに話してきた。


 さっきも言ったけど、姫様と婚約を結ぶのにはそれ相応爵位がないとカッコ悪い。

 だから、少しは王国の運営に関わりつつ存在アピール、そしてきちんと収入が貰えるようにと"伯爵"の地位をどうかと言われたけど、これにザネンダ執政大臣が良しとしなかったんだ。


 "周囲の大貴族に示しがつかない"

 "周りを認めさせるために実力と実績を作らなければ"

 "今の婿様には負担になる"

 "だから、領地運営を学ぶために男爵から"


 って、色々アドバイスをされて、国王様の無謀な叙爵から逃れることは出来た。


 ザネンダ執政大臣の意見はごもっともだ。


 この世界の常識も何も知らない人間には荷が重い。だから、村1つの領地から初めて色々学ぶつもりだ。

 まぁ、自衛官としての仕事が優先だからどこまで出来るか分からないけど。


 あぁそれにしてもこの旅は辛い。


 旅とは言っても1日と数時間の短い旅だ。


 谷口と彩菜三尉が一足先にポルータ村に居る大越大隊長にオレの婚約(ほぼ婚姻)した件を報告しにマリンさんは、ベンダー村長に領主が決まり受け入れ準備をしに王都に残してあった最後の高機動車でオレ達より先に出立していた。


 その為、こちらの世界での移動手段を取らざるえなくなった。


 それは"馬車"だ。

 引っ張っているのは馬じゃなくて"プートル種"っていう魔物だ。


 一度、ポルータ村で撫でたことがある恐竜みたいな生き物で、見た目と違って人懐っこい性格で調教しやすく、草食だから人に危害を加えることもなく、この世界での生活には欠かせない存在らしい。


 そんなプートル種が牽引するこの馬車は王族用の特注品。


 座り心地はまぁまぁで3トン半トラックよりかは大分良い。あれに長時間揺られると痔になるってよく新米だったころに先輩陸曹に言われてたな。


 因みにこの馬車は儀礼用と違って、外見は装飾らしい物は殆んどない。


 だけどな、中は全然違うんだ。


 気持ちいいクッション性抜群な椅子に金で出来た装飾があって、テントが張れない場所での野営時は椅子が連結して簡易ベッドにもなる優れもの。おまけに蛇口が付いていて捻ると水が出てくる出てくる。これは魔導石(マギーロッシュ)って呼ばれる高価な鉱石の欠片で"水石"ってそのままのネーミングなんだけど、呪力を通すと水石の中に蓄えられている水が出てくるんだ。旅には欠かせない。まるでキャンピングカーだ。


 こんな物を作るなんて流石、王族だ。


 ただ、この短い旅立ちを辛くしている要因は別にある。


 それは将来を約束したリリエナさんだ。


 王都を出発してから急に膨れっ面になったんだ。


 オレには原因がさっぱりわからない。


 一度も目を合わしてくれない。


 何か、既に倦怠期が到来したのか?

 早すぎませんかね?


 馬車の中では無言なんだが、時折、魔物が出現すると随伴の騎士よりも早く、馬車から飛び出してはバッサ、バッサと斬り倒していく。


 周りの騎士達からの視線もあって流石にオレも観ているだけでは体裁が悪いと思って、MINIMI・MKⅢで射撃フォローに入った。


 そしたら、さっきまでの膨れっ面はどこにいったかと思う程の爽やかな表情になってたし。


「浩司殿、ありがとうございます」


 オレの援護もあって、リリエナさんは一度に化けキノコを10匹倒した。


 化けキノコは別名、マッシュモス。


 一言で言えば椎茸の巨大化したモンスターだ。


「浩司殿のお陰で今夜の夕食が確保できました」


「はい?」


「こいつの傘の部分は焼いたら美味しいのです」

 美しい顔が笑顔で話してくる。


 こちらの世界は魔物も食糧、美味らしい。


「いっいえ、食糧なら自分ももってきているので大丈夫です……」


 オレは丁重にお断りをして、背嚢に入れてある鶏飯缶とたくあんで何とかあの化けキノコを食べることを回避した。


 だってな、さっきまでこの化けキノコの柄に大きな口が開いてて、ベロまでだしてたんだぞ。


 傘の部分を切り落としたら柄の部分にあった口はいつの間にか消えてなくなってたけど、あまりにもグロテスクだから無理。


 翌朝、ポルータ村を目指して馬車を進めた。


「(やっぱり、何かどことなくつんけんしてるなリリエナさんは……)」


 リリエナは一向に視線を合わそうとしなかった。


「(なんだろうな、このツンツン理由は……わかんないな━━━)」


 オレは大変なことに気がついてしまった。


 今、オレ達が乗っているのは所詮、馬車は馬車だ。


 高機動車と違って、サスペンションなどはないに等しい。いや、むしろないだろ。


 と、言うことは、乗っている中の人間にはそれなりの振動が伝わってくる。


 それでどうなるかって?


 今、オレの目の前で胸当て(プレートアーマー)でその存在は目立ってはいないが、その豊満なお山から成しえる谷間が馬車が舗装されていない道を走る度に揺れ動いているのだ。


 まさに眼福。


 いやぁー、とんでもない所に小さな幸せが落ちているもんだな。


 これは、合法。


 今のうちに目に焼き付けておかなければ。


 そう思い、オレは暫くの間、ガン見していた。


 たゆんたゆん。


 まさに揺れ動く表現にピッタリな言葉だな。


 ただ、なんだ。暫くして何やら視線が刺さってしょうがない。


 浩司はふと視線を上げるとリリエナが浩司のことを真っ直ぐに見つめていた。


「あっ」

 浩司の口から間抜けな声が出ていた。


「……浩司殿、貴方は私が婚姻相手に認めた男性です……だから、観るな……とは言いません。 いつかはそのような関係を持つ日もくるでしょ……しかし、今は━━その……時と場をわきまえてもらいたい……」

 リリエナは頬を真っ赤に染めながらモジモジと恥じらいながら答えた。


「はひっ!」

 情けない返事しか出来なかった。


 じゃ、何か?お触りオッケーってこと?


 合法? 合法だよな? 合法だ!


 国王様からも許しが出ているんだ!


 ヤバい、顔がニヤけて仕方ないよ。


 何、この恥じらい。可愛いんですが。


 これはあれだ。


 今晩あたりどうかな、マイスウィートハニー。


 こんなセリフが言える日が来るなど思ってもいませんでした。生きててよかった。ありがとう神様。そして、これからもよろしく。


 でもな……


 何か大切なことを忘れている気がする。


 自衛官として平和を築く使命……


 これを忘れたことは1ミリもない。


 ただ……別の何か……なんだっけか……


 そう浩司が自問自答していたら馬車は急に歩みを止めた。

 それは同乗していたリリエナも気が付いた。


「浩司殿、着きましたよ。ポルータ村です」


 先にドアを開けたリリエナに促されるように浩司はポルータ村の地に足をつけた。


「何か懐かしく感じるな」


 こちらの世界に来てからというもの、今日まで色々ありすぎて濃い日々だったな。


 七色蛙から猫耳少女を助けて、門番に槍で刺されて、ララエナが姫様で、オーガと戦って、囚人になって、覗き魔になってビンタされて、婿にさせられて、賢者にあって、アサシンと戦って、綺麗な許嫁もらって……こんな短期間でイベント盛りだくさんだったなぁ。


 浩司が少し感傷的になっているとリリエナが脇に差してある太刀を鳴らしながら顔を覗き込んできた。

「では早速、村長の所に挨拶をしに参りましょ。 マリンが手筈を整えいるはずですから、多分、浩司殿の指揮官殿も居られるはず」


「そうですね、部隊へ顔を出すのは後にして、行きましょうか」


 そうだ、今日からオレは領主様。


 村人に宣言しに来たんだ。


 オレとリリエナさんが屋敷へ向かおうとした時、後方から聞き慣れた声が聞こえた。

 その声は段々とオレ達に迫ってくる。


 はぁー、やっぱりアイツはオレにベッタリな可愛い後輩だな。


 可愛い後輩でもあり義弟、気心知れた親友でもある。


 村長や大隊長よりも先に顔だけ見せてやるか。


 そんな軽い気持ちで谷口の方へ振り向いた。


「先ぱーーい!」


 おぅおぅ、そんなにオレに会えて居ても立ってもいられなくなる程寂しかったのか。

 可愛いやつだな。


「━━━が、━━━したぁ!!」


 まだ距離が遠くて上手く聞き取れないな。


「あ━ちゃ━━が、でき━━したぁ!!」


 あちゃがどうしたって?


「何だってぇー?!」


 浩司が聞き直すと谷口は猛スピードで走り抜き、浩司の目の前まで来て、息を切らしながらこう告げた。


「ハーっハー、だから……あかっゃんが…ハー、出来っんです……ハーっハー」


「ハーハー言ってて分からないんだが」


 谷口の顔は喜び表情が緩んでいるが、目が血走っているようにも見えた。

 谷口は自分の気持ちが先走っていたのを自覚し、深呼吸をして一拍おいた。


「先輩!赤ちゃんが出来ました!」


「━━へっ?オレに?」

「……」


 オレ、清いお付き合いしかしてませんよ?


 だれが妊娠?エリーか?美優紀か?……もしかしてアイシェちゃん?!


 オレが知らない内に寝込みを襲われてそんなことになっていたのか!?


 だったら、可能性はエリーが一番怪しいな。

 普段からアプローチが過激だったからな。


 それにエリーは研究職だから人を眠らせる薬品なんか手に入れ易いはず……


 待て待て待て……


 その理屈なら美優紀も怪しくなる。


 美優紀も看護師だ。隊内の医務室から薬品を持ち出すのに疑われない……


 あぁ……それならアイシェちゃんもだ。


 アイシェちゃんは母国で看護師免許持ってるんだった……いや、でも、二人と違って薬品の入手経路がない。なら、無実だ。


 あっ━━でも、あのエロ王子やシャリーさんならアイシェちゃんをまるめこんでやりかねない……


 誰だよ……妊娠したのは……


 オレの横には笑顔が引き吊りながら微動だにしないリリエナさんがいるっていうのに、誰を正妻にするとかあやふやにしたままなのに何でこのタイミングで報告しに来るんだよ、バカ谷口。


「いや、だから自分と美咲さんとの間に赤ちゃんが出来ました!!だから先輩は叔父さんになるんですよ」


 浩司の脳内会議は閉会した。


「……あっ妊娠は姉ちゃんか、良かったなー谷口。おめでとう」


「ありがどうございます、やっと、やっと自分の家族を持つことが出来ました!」


「何言ってんだよ。姉ちゃんが家族になって、オレもお前の家族なんだぞ」


「谷口殿、おめでとうございます」


「ありがとうございます」

 谷口は鼻水と涙で顔がクチャクチャだった。


 谷口は父子家庭だって言ってたもんな。

 人一倍、人並みの幸せな家庭に憧れてたしな。


 さてさて、感動の場面に水を差して悪いが、あんだけ毎晩のように盛んにしていたら、そりゃ出来ますがな。

 とは、言えず。


 許嫁達を疑った自分が情けないというか、少し罪悪感。


 帰ったら何か労いっていうか、どこか旨いご飯に連れていってあげよ。


「そうだ、先輩。今、第二陣の受け入れ準備のために、補給物資と一緒に手紙が届いてるんです。 はい、コレ。3人からの手紙です」

 そう話す谷口は浩司に一通の手紙を手渡した。


 浩司は手渡された手紙を見ると、3人の連名であった。


「あっ」


 浩司は気が付いた。


 許嫁というか、ほぼほぼ結婚が確実な婚約者が出来たことをどう説明をすれば良いのか。


 篠崎浩司。


 只今、許嫁と婚約者を合わせて4名。

 一人は、大統領の娘で生物学者の金髪美女。

 一人は、幼馴染で元アイドルの看護師自衛官。

 一人は、宮殿で王子御抱えの現役JKメイド。

 一人は、一国の姫様で戦姫として名高い猫耳獣人。


 世の男性から羨ましがられるハーレム環境。

 ただ、解決しなければならない問題は山積み状態。

 男の甲斐性とは何か、自問自答している実直な自衛官である。


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