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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第1章 別れと別れと再会と》
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第3話 出逢い

 天井が白い。暇すぎで天井の染みを数えて過ごすことが多かった。日によって染みの数がバラバラなことに気づいたオレは病院あるある七不思議に追記した。ただうるさい奴が来たときは暇潰しになって嬉しいが周りの患者には彼女や奥さん、家族で見舞いに来ているところもあるのに……と思ってしまうのは罰当たりだろうか。


「何をぶつぶつ喋ってるんですか先輩」


「いやなぁ心の声が漏れたみたいだ」


「誰も来ないよりいいじゃないですか。あっあと将来の"義弟"に媚びうるのも悪くないなと」


「年下の後輩を"お義兄さん"っなんて呼ぶのは無理。それよりまだ付き合ってもいないだろうに」


「大丈夫です!"男"谷口は美咲さんのハートを一発で射止めて見せましょう!!」


「谷口さん、シーっ!ですよ。ここ一応病院なんですから。」


「あっすいません美優紀さん」


「うわぁイイ年した大人が怒られた」


「浩司くんも茶化さない」

とオレにも叱るこの子は神崎美優紀。この自衛隊病院の非常勤看護師さんだ。ちなみに幼馴染みでもある。元々母親同士が仲が良くしょっちゅう喧嘩したり遊んだりしていた。

 

 美優紀は母親と二人暮らしで幼稚園から中学生まで一緒に過ごしたが、母親の再婚相手の転勤で地方へ行ってしまい、それ以降は年賀状のやり取りだけだった。あと、"美咲"はオレの姉ちゃんで谷口が今も顔を見たことのない恋愛対象だ。


 自衛隊病院の看護師や医師も一応自衛官として定期的に訓練すると聞いたことがあるが、美優紀には銃は似合わない。どちらかと言ったら女の子って感じだから見た目も悪くないしアイドルなんかがピッタリ来る。

 

 オレはあれからここの自衛隊病院に入院しお世話になっている。美優紀はオレの病室担当で仕事の話しとかでまた昔みたく仲良くなった。ただ、昔と違うのは滅茶苦茶可愛いくなっている点だ。



「ハイハイ、今日も元気がいいですね美優紀ちゃんは……何かいいことでもあったの?」


「解るぅ?ちょっとね!……う〜んやっぱり私にとっては凄く嬉しいこと!」


「へぇーどんなことだい?」


「ヒミツっ♪」


「あっ先輩!beautiful・snow・world出ましたよ!」


「マジか!?見せろ!見せろ!」


『メジャーデビューしネットで人気急上昇中のカリスマガールズバンド!beautiful・snow・worldで【justice】です、どうぞ!』


『♪〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』


「!?………浩司くんもこのグループ好きなの?」


「あぁ、ガールズバンドの中で一番だね。"も"ってことは美優紀もかい?」


「うん、まぁね。インディーズから知ってるんだ……」


「オレよりコアなファンがいた」


「皆レースの覆面してるけど、ボーカルの"ユキ"ちゃんの口元可愛いなぁあと歌声もステキだなぁ」


「おい、谷口。さっそく浮気か?」


「滅相もありません。所詮TVの中の話で実際自分らには縁のない世界ですよ。」


「まぁそれもそうだな。」


『━━━━━━━━━━━beautiful・snow・worldでした〜!では、お次は━━━━━━』


「イイ歌でしたね!」


「お前も判ってきたねー。…タバコでも吸ってくるかぁ」


「浩司くん、まだタバコ辞めてないの?あれだけ体に悪いこと説明したよね?!」


「長年吸ってるとなぁ…まぁ本数は減らしてっ………」


「何!?急に!?顔近いって!」

(ジーーっと見つめる篠崎)


「いや、誰かに似ているかなと思って」


「!?…よっよくある顔だって言われるよ私(どうしよう!?……浩司くんとキス出来る距離にいるよ〜〜わざとに転んだ振りしてキスしたゃう?キャー大胆!……!?……似てるって!?あわわわわ……)


「やっぱり思い出せないわ。谷口行くぞ!」


「先輩、TVの電源ぐらい消さないと大人なのに」


「うわ、さっきのこと根に持っ…………?」


廊下からタタタタタっ!と勢いよく走って来る音が聞こえ部屋を出ようとしていた篠崎が入口に振り向くと"大きな2つのお山"がユサユサ揺れながら顔面に飛び込んできた。


「コウジー!アイニキタワヨー!!」


オレはベッドまで押し戻され、マウントを取られる形で"大きな2つのお山"のお陰で天国に逝ってしま………じゃなくて窒息死する寸前。


「うらやましぃ………」

と横でぼーとしている谷口に替わり美優紀ちゃんが吠えた。


「ちょっ……何ですかあなたは!?ここは病院です!走ったり大声だしたらダメなんだから!……あと浩司くんから離れて!!怪我してるの!」


「why??アナタコソダレデスカ?ワタシハ、ワタシノ、イノチノオンジンニ、オレイヲスルタメニキタノヨ」


オレのマウントを取っている金髪美女は、エリザベス・メル・アルマン大使だ。


「よぅ!体の具合はどうだ?篠崎!」


「千葉分隊長、これはどういうことですか?」

千葉分隊長と話すのにアルマン大使は少し邪魔だったので無事な右手で避けさせてもらった。



…………………………柔らかいモノを鷲掴みした………………感触がととも気持ち良くて癒される…………………

気づいたときには遅かった……………………………………

「ヤァン!コウジハダイタンナノネ!」


「こっこれはわざとじゃな…!?美優紀"さん"?」

美優紀ちゃんから今までにないオーラを感じた。


「最っ低!!!」

と美優紀が叫ぶと同時ぐらいに左から何かが篠崎の顔にぶつかってきた。


「ゴフっ!」


「アラアラ、カンジャニキズヲオワセルナースナンテ、ナンセンスデスワ、ワタシガカンビョウシマスワ♪」

と再度倒れ込んだ篠崎の耳元で囁く。



「もう知らない!!」

と美優紀は病室を出ていってしまった。


美優紀ちゃ〜ん、背中のガーゼ取り替えてよ


自分でやってください(怒)!


エェ〜


廊下から第二の被害者の声が聞こえる。



「で、分隊長どうされたんですか?」

谷口が久々に真っ当な質問をした。


「アルマン大使たっての希望で、同盟最高議会に事の顛末を報告するのに国へ帰る前に、どうしても!白馬の王子様に会いたかったんだと、見舞いがてら俺が案内役ってわけだ!良かったな篠崎!逆玉だな!」


「ちょっ分隊長!」


「ソウヨ、コウジ!ワタシノチチハ、フクダイトウリョウヨ!ハヤクチチニ、ショウカイシマスワ!」


「しょっ紹介ってアルマン大使?!どういうことです?」


「ノン、ノン♪ワタシノコトハ"エリー"トヨンデクダサイ!カゾクハミナ、ワタシヲ"エリー"トヨビマス♪」


「家族ぅ?!」


「ハァイ!チチハ『ハヤクツレテキナサイ、マゴガタノシミダ』ト、イッテマシタワ♪」


「孫ぉ?!」


「篠崎ぃ、これはマジで国際結婚だな。金髪美女に日本人のハーフは可愛いだろうな」


「先輩…いつの間に…、でも大丈夫です!篠崎家と美咲さんは自分が守りますので安心して嫁ぎに行って下さい!」


「おい!行く話前提になってるじゃないか!」


「アラ、アンナニワタシヲ、ツヨクジョウネツテキナハグヲシテ、マッスグナアツイシセンデ"カナラズオマモリシマス"ト、イッテマシタワ♪」


「あれはアルマン大使の命を守……」


「"エ・リ・ー"デスワ♪」


「……エリーの命を守ると言う意味です、人生の伴侶にするとは言ってません」


「………篠崎、お前金髪美女を弄びすぎだぞ!エリザベスさんのどこに不満があるんだ?!こんなに美人でスタイルもよし!!……(毎晩あの乳を好きな様に触れるんだぞ!)ニヤ


「分隊長まで何を言っ!?」


エリーが大きな2つのお山を両腕で挟み込み、"たわわ"な谷間を作りこちらを見つめている。


「……(めちゃくちゃアピールされてますけど!?そりゃぁあんな見事な山を揉んでみたいし、あのスーツの中身を見てみたい衝動にかられるけど…だけど……!)」


「……エリー、ちょっと二人だけで話せませんか?2階にカフェがあります。」


「yes!ショウライニツイテカタリアウツモリデスネ!ダケドSPハハナレラレナイノデユルシテクダサイ…」


「いや、大丈夫です。谷口また昼に来てくれ!さっエリー行きましょう。」


「先輩!自分昼はデートです!」


「……(姉ちゃんとか…)わかったよ」


「いいねぇ〜若者は青春青春!ワッハッハー」


------------------------------------


 2階のカフェは昼でも客はまばらだった。迎えの食堂の方が賑わっていた。客が少ないのは良かった、こんな金髪美人に屈強なSPを引き連れていたらかなり目立つ。


「ゴホン、まずエリー。オレは君のことを親善大使であること以外知らないし、君はオレのことを自衛官であることしか知らないよね?…普通はお互いのことを知り深い絆が出来たら結婚をするものなんだよ。わかるかい??」


エリーは大人しく目を輝かせながら、ミルクティーを飲みながら聞いていた。オレは優しく分かりやすく説明してお引き取りしてもらう方向に仕向けようと思った。

 オレの話が終わりエリーはティーカップを置き口を開いた。


「モチロン!ダケド、ニッポンニハ"イイナズケ"トイウ、セイドガアリマスヨネ?ソレナラ、オタガイシラナクテモO.Kネ!」


篠崎は口に入れた珈琲を噴いた。


「いやいやいや!えっそもそも許嫁は親同士がが決めないと話にならないでしょ?だいだい大前提にどうしてオレなんですか?」


「………ワタクシ、ハジメテ…ウバワレマシタ…」


「…!?!?!?」

エリーの言葉に衝撃が走った。人生で初めて女性に"初めてを奪われた"と言われた。…オレはいつ、どこで、エリーの"初めて"をもらったんだ?!

………と脳内会議をしていたらエリーの後ろに立つSP二人が懐に手を入れ拳銃らしきモノをちらつかせていた。


「…(ヒーィ!!)」



「……ハジメテダッタンデス……ダンセイニ、アンナニツヨクダキシメラレ……キモチヲウバワレタノワ」


「……(まぁ、そうでしょうね。脳内で揉みしだく妄想だけはした…)」


「ダカラ!チチニタノンデ、コウジノチチウエサマニ、レンラクシテモライマシタ!」


「!?」


「『ミスターシノザキハ、アンナムスコデヨケレバ、ドウゾ。アトハ、トウニンドウシニマカセマショウ!ワッハッハー』ト、イッテイタミタイヨ!!チチウエサマハハナシガ、ワカルカタデヨカッタデスワ♪」


完璧に逃げ道を塞がれた。オレの両親は相手が"同盟国の副大統領の娘"って知らないだろうな。……これじゃ完全に海外暮らし確定になってしまう。オレは……これでいいのか?……いや……オレにはまだやりたいことがあるんだ……



「………エリー、君の気持ちは正直嬉しい…こんなに美しい女性から好かれて嫌がる男なんていないよ……」


「ウレシイデスワ!ソレナラ、サッソク…」


「でも!!……今は…君とは一緒になれない。……オレにはまだ自衛官としてやりたいことがあるんだ!……まだ戦争は続く…でも少しずつ平和の道に進もうとしている……オレはそんな世界だから……沢山の人を助けたい!……平和な世界を作る力に成りたい!……だから……」


ウルウルとエリーの目に涙が溜まってきた。


「!?……(ヤバい!泣かすつもりは無かったのに、涙目になってるぞ!?)」


またSPが懐に手を入れようとした瞬間…


「ワタシノメニ、クルイハアリマセンデシタワ!」


「へっ??」


「コウジガ、ドレダケスバラシイダンセイカト、サイニンシキシマシタワ!♪」


「どうも……」


「ケッコンハマタ"コンド"にシマショ!キョウハチチウエサマ"コウニン"ノ、イイナズケニナレタダケデハッピーデスワ♪」


「今度!?」


「イイナズケニナレタノデス!ケッコンハイツデモ、デキマス♪……ソロソロジカンデスワ。」

と、急にエリーは立ち上がり"お山"が揺れる。


「シバラクアイニコレナイデス。ワタシモイソガシイカラ。…ダ・カ・ラ………(アイジンヲツクッテモダイジョブデスワ♪)」


耳元で囁かれた。そして、頬にキスをされた。


「ダンセイノ、セイシンエイセイハ、テイキテキニ"ハッサン"スルコトガ、タイセツ♪♪」


「………あっあのな…人を猿みたいに言うなよ」


「アラ、ワタシハ、オサルサンダイカンゲイヨ♪♪」


「………」


「シナナイデネ、コウジ…」

初めて見た不安な表情を浮かべたエリーがまた、キスをしてきた。今度は唇と唇で。


「……おぅ」


「good-bye〜コウジ〜♪アイジンタクサン、ツクッテハダメデスワヨ〜♪」


嵐のように現れて、嵐のように去っていった。



カフェの入口に隠れるようにナース服の女性が立っていたが誰にも気付かれずに去っていった。

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