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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第3章 2つの世界》
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第29話 襲撃

前回同様にデルタチームは駐留基地前方の平地に横隊で陣を構えていた。そのやや後ろには特甲戦の頭であり目でもある96式改タートルがいる。


《こちらデルタ1。タートル、第一戦隊の様子はどうなってるの?》


《こちらタートル。デルタ1、ドローンからはやはりデータに支障があり詳しい情報はわかりません》


《了解》


楠木姉妹のやり取りはここで途切れた。姉妹だからと仕事中況してや戦闘中に私語はしなかった。


ただ、姉の彩菜三尉はこの状況が不自然に感じていた。


「(何なんだ、この違和感は……哨戒班から連絡が途絶えたのなら敵がいる確率が高い。おまけにドローンからの情報は入ってこない……このままじゃ第一戦隊だけが先行し過ぎてしまう……………………)」


彩菜三尉は考えた。第二戦隊の中では一番実戦経験が多い人物である。

中東欧州戦争時には機甲科で戦車長を務めていた強者で女性自衛官初の戦車長でもあった。

当時は自衛隊内ではまだまだ女性自衛官の活躍の場が少ないことに疑問を抱き、"実力を見せつけて勝ち取ってやる"と意気込んでいた。


その為、色々な戦術を学び人一倍以上に沢山戦闘訓練を積んできたのだ。

その経験から今回の状況に初めから違和感を感じていた。


「(………情報が入らない………第一戦隊が先行"し過ぎてしまう"?……!!)」


彩菜三尉の頭の中で何かが繋がった。


《デルタ各機!!対地、対空迎撃体勢をとれ!!タートル!監視塔の情報を確認しろ!》


急に彩菜三尉から怒号が飛んだ。


《こちらHQ。どういうことだ楠木三尉?》

山田三尉が確認する前に大越からの映像通信が入る。

この時点では大越や嶋田指令の他、指令室にいた面々は気付いていなかった。

ただ、指令室に緊張感が芽生えつつあった。


《ジャミングです!敵はこちらの戦力を分散させるためわざと哨戒班に攻撃を…》


彩菜三尉が喋り終える前にタートルから無線が入る。


《2時方向にオーガを確認!数は…》

突如タートルのレーダーにミサイル警報が鳴り響いた。


《高熱源体捕捉!!来ます!!!》


若菜からの無線が入った直後、彩菜三尉は2時方向に左腕を構えた。


咄嗟の判断だった。


モニターが急に明るくなったと同時に物凄い衝撃がイカズチ全体に走った。


「くっっ!……臼井!レーダーで敵を捕捉しろ!」

一瞬意識が飛びそうになったのを堪えた彩菜三尉はすぐさま迎撃体勢に入るためレーダー要員である臼井に指示を飛ばす。


この時にはイカズチ1番機の左腕の上腕から先が地面に落ちていた。


付け根が溶解している。


イカズチ1番機の中ではシステム異常警報が鳴り響いていた。

"左腕前腕破損、左腕前腕破損……"


「うるさいシステムだな。左腕電力カット!」


"左腕電力カット実施。全システム損傷率30%"


「たった一撃でか!?」


「隊長!捉えました!こちらに近づいてきます!」


《デルタ各機!2時方向の森に照準固定!電撃槍(ブリューナク)射撃用意!》


イカズチに固定装備されている三連装射出式電撃槍の使用命令を下す。

タイプ:イの装備にあるランスバンカーの小型ミサイルバージョンであり、ランスバンカーの元になった電撃兵装である。


各イカズチは射撃体勢になった。


"左腰部射出装置に異常あり、左腰部射出装置に異常あり"


「くそ!右だけでいい!」

彩菜三尉はタッチパネルで武装選択を右腰部のみに切り替えた。


《ってぇー!!》


彩菜三尉の号令に合わせて3機のイカズチから15本の電撃槍がオーガがいるであろう所に向けて発射された。


「どうだ!?」


「………ダメです!オーガ依然としてこちらに向かってきてます!!……会敵します!!」


レーダー要員の臼井一曹から報告が上がってくる。


彩菜三尉はモニター越しに前方をみていた。


森が途切れた所から一体のオーガが現れた。



「おいおいおい、敵さん殺気(やるき)じゃないか……これはヤバいな……」

彩菜三尉はオーガの姿を見てそう呟いた。


今、目の前にいるオーガは日本の甲冑のようなものを胴体と両前腕に装着し右手には金棒のような武器を持っていた。

そして、胴巻にも似た防具に突き刺さっている電撃槍を糸も簡単に抜いてみせた。


このオーガには目玉が二つに角が二本生えていた。


---


指令室では監視塔からの映像が大型モニターに映し出されていた。


「嶋田指令、この基地にある機甲戦力の投入準備をお願いできますか?」


「…………了解した。オペレーター!直ちに全中隊の出撃準備に取り掛からせろ」


「了解」

指令室にいたオペレーターの一人がインカムで各部隊に連絡を取り始めた。


そんな緊張感が漂っている指令室で一人の民間人が声をあげた。


「これは……今までのオーガと違いますワ……」


「本当だ………」

エリーの言葉にマリアが同意した。


「オーガ達が防具と武器を持ってきたと………しかしさっきの火の玉のようなものは何なのだ?」

大越もモニターから目が離せないでいる。


急に基地内に警報が鳴り響いた。


「これは何だ?!」

嶋田指令がオペレーターに確認しようと近寄った。


驚愕しているオペレーターから驚きの答えが返ってきた。


「…………………侵入者です」


その場にいた全員が戦慄した。駐留基地の前方で今まさに戦闘中に侵入者が現れたのだ。


「何処からだ!?」


「基地左翼側より川を使って近づいてきた可能性が高いです」


別のオペレーターから報告が入る。


「指令!機甲部隊格納庫に足軽多数侵入!それ以外にもあちこちから侵入報告が来ています!!」


「くそ!頭が切れる奴等だ………」


エリーや美優紀にマリア、天道先生も不安な表情を隠しきれていなかった。


「大越大隊長、第三戦隊を足軽掃討に出動お願いできますか?」


「もちろんです。オペレーター!第三戦隊に基地に侵入した足軽共を一匹残らず退治しろと命じてくれ!」


「了解」


「あと、第一戦隊にこちらの状況を伝えろ。無線が無理なら信号を撃て」


「わかりました」


---


その頃、第一戦隊はポイントに到着していた。


ルートから左右にやや離れすぎた位置で両チームは周囲を観察していた。消息を絶った哨戒班の痕跡を探していたのだ。


《見当たりませんね》


《もっとモニターをみろ、レーダーからは目を

離すなよ》


《アルファ2、難しいですよ》


《アルファ3、アルファ2の言うとおりだぞ》


《了解》


やや暫くしてオメガの方で動きがあった。


《こちらオメガ3、軽装甲車のと思われるタイヤを発見した。ただ、本体が見当たらない》


オメガ2の寺井二曹も近くに駆け寄り捜索する。


すると突然、オメガ2の足元の地面が凄い音をあげながら瞬時に盛り上がり大爆発を起こした。


《オメガ2!大丈夫か?!》

オメガ1から無線が入る。オメガ1はその場から動かなかった。いや、動けなかったのだ。

先程の爆発が地面に埋められていた地雷だと咄嗟に見抜いたからだ。


オメガ2は後方によろめきながら片膝を着く形で落ち着いた。


《だっ大丈夫ですオメ……》


生体レーダーに反応が出た。それも突然。


《オメガ3!近くにレーダー反応あり!気を付けろ!!》


《どこですか!?》


《6時方向!!》


そう、今オメガ2のレーダーにしかオーガを捉えていない。

オメガ2の装備は他のタイプ:イと違い幾らか索敵と通信能力を向上させる機器を搭載している。その為背部のハードポイントにはランスバンカーがセットされていなかった。


オメガ3は6時方向にゴルシコフの銃口を向け構えた。


この判断は致命的であった。この時に瞬時に銃弾を発射していれば状況が変わっていたかもしれない。


オメガ3はオーガに"飛び道具"が無いという前提で動いていた。


「来ないのか……」


天道技曹は冷静を保とうとしていた。


次の瞬間緑色の塊が飛んできた。


オメガ3は左腕で防いだ。直ぐに右腕で保持していたゴルシコフで前方に銃弾を撃ち込んだ。


「やったか!?」


しかし、生体レーダーにはまだこちらに向かってくる反応が消えていなかった。


オメガ3は撃ち続けた。


突如、対空警報がなった。


「何!?」


上空を見上げたらこちらに向かって落ちてくる影が見えた。

それが何か直ぐにわかった。


オーガが跳躍してきたのだ。


「くそー!」

ゴルシコフを両手で構えて上空にいるオーガに射撃したが間に合わなかった。


そのままオーガは金棒を振りかぶりオメガ3に叩きつけ着地した。



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