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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第3章 2つの世界》
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第28話 逆襲の始まり

う〜ん……体が怠い……これはいつもと違った寝方をしたからに違いない……


オレは最初の案でも良かったんだけど……


昨夜は"くっついて寝る"を実践した。


最初、どうしたら3人全員がオレにくっついて寝られるかをエリー達は考えていたが良い案が中々出なかった。


誰か1人がオレの上に乗っかって寝れば?…………

なんて言えませんでした。


うちには沢山の誘惑があって合法ではあるかもしれないが今の状態で一線を越えてはいけないと天使なオレが叫んでいる。


結果として左腕と右腕と太腿の上に頭を伸せて"コウジ枕"にすることになった。


だから、体勢的にオレは寝返りが出来なかった。


そりゃ肩が凝る。


ただ、一度4時ぐらいに目が覚めてしまった。

右腕には美優紀、太腿にはアイシェちゃん、左腕にはエリーという状況。


左を向いたらエリーも目が覚めていたようで何やらオレの股辺りを観ていた。


なんだろうか……


自分の股を見たら男性特有の朝の生理現象をエリーに見られてしまっていた………


「(……いつでもお相手しますワよ)」


耳元で囁かれた。


他の二人には気付かれなかった。


以上が朝のちょっとした珍事件だった。

そのあとオレは二度寝してしまった。


---


いつも通りに起きて戦闘服に着替えて母屋向かった。今日から長期任務だ。気合いを入れなければ……


居間に入るとプリーナちゃんとハー助が元気よく駆け寄ってきた。


「こうじ!おはよー!」

「ワン!」


「おはようプリーナちゃん、ハー助」

最近、ハー助はよくプリーナちゃんにベッタリだ。なんだ?ハー助はプリーナちゃんをメス犬と勘違いしてるのか?いや、プリーナちゃんを見守るナイトのようも見える。


「あら、おはよう浩司。早く顔を洗ってらっしゃい」


いつもならアイシェちゃんに言われるセリフ。

何故か今日は母さんだった。


「あれ、皆は?」


「何やら朝から出掛けてったわよ」


「そう」


珍しい。朝から皆でどっか行くなんて……

まぁエリーと美優紀は同行するからいいとして……今日から1週間はアイシェちゃんに会えなくなるのにな……


「お義母さん、先輩おはようございます」


戦闘服姿の谷口が現れた。


「おはよう隆くん」


「おぅおはよう」


「美咲さん、見かけました?」


「美咲も皆と一緒に出掛けたわよ」


「?…そうですか」


谷口も同じ状況か。


「あっ!…話は変わるんだけど隆くんにお願いがあるんだけど」


「何でしょうか?」


「余り夜はハッスルし過ぎたらダメよ?うちにはプリーナちゃんがいるんだからベッドじゃなくて布団でした方が良いわ。結構ベッドが軋む音が響くのよ」


うわぁこれは恥ずかしいパターンだ。

義理の母親に夜の営みに小言を言われるとは…

恥ずかしい…


「あっえっ…すいません睡眠の妨げになってしまっているようで…以後気をつけます」


顔を真っ赤にする谷口。


「でも、孫の顔を早く見たいから控えなくて良いからね」

そう告げた雨は親指を立てて谷口にウィンクをした。


母さん……生々しい話はよしてくれ。



洗面を終えて居間に戻ったら、いつの間にか皆は戻ってきていた。


「?」

「?」


オレと谷口は何をしてきたのか全く検討がつかず、そして皆は何事もなかったかのようにテーブルを囲んで朝御飯を食べ終えた。



玄関で暫しのお別れの挨拶だ。


「じゃぁアイシェちゃん、オレ達は1週間は戻って来れない。家のこともあるけどアイシェちゃんは学校頑張ってね」


「はい!」


「美咲さんも……時間がある時は電話するから」


「隆くん…」


ここで女性陣がアイコンタクトを取り合いタイミングを見計らった。


「浩司様!!そして谷口さん!これから過酷な任務に就くということで安全を願って私たちから差し上げたい物があります」


女性陣を代表してアイシェちゃんから予期してなかった言葉が出てきた。


「何だろうか?」

「何でしょうか?」


「こちらです」


アイシェと美咲が並んで可愛らしく両手を差し出してきた。


二人の手の中には御守りがあった。


そういうことか………

オレと谷口はやっと府に落ちた。

感の良いやつなら初めから気付いていたかもしれないがオレ達はニブチンだ。


女性から御守りを貰うなんて……経験がない。

それだけオレ達の身を案じてくれているということ……想われてるなぁ。何か幸せだな。


「皆でお賽銭いれて願ってきましたワ」

浩司の腕に寄り添ってきた。


「あそこの神主さんて昔から変わらないね、安全祈願をしたいって言ったら普段はあまり出さない御守りをくれたの」

美優紀が懐かしむように話した。


「だからね……また無事に帰って来てね」

美咲は笑顔で谷口を送り出そうとしている。


「皆、ありがとう」

「美咲さん、ありがとう」


「じゃ、行ってきます」

「行ってきます」


急かさず朝の日課の"いってらっしゃいのキス"が行われた。


この配置なら今日はオデコにアイシェちゃんかな?そう思いされるがままにみんながキスしやすい高さに若干足を曲げた。


……えっ!!!!


唇から柔らかい感触が伝わってきた……


朝のキスは皆の顔が近いこともあり皆目を瞑りキスをしている。たまにエリーがオデコにキスする順番の時に目を開けてたわわなお山とお山の間に出来る峡谷を眺めることがあるが…


目を開けたら、そこには満面な笑みのアイシェちゃんがいた。


「それでは皆さん行ってらっしゃい」



------------------------------------


長期任務が始まって2日目。

今にも雨が降りだしそうな天気だ。オレは駐留基地の倉庫に来ている。オーガ討伐の命令が出るまでの待機中だ。


前回の作戦には出動しなかった第三戦隊の面々も揃っている。次の討伐作戦では対足軽(爬虫類みたいな奴等)戦においてT:ASがどのように有効な運用が出来るか実地試験も組まれるようだ。また、16式機動戦闘車のバッテリー調整も無事に終わり運用されることになった。

しかし、配備が第三戦隊へと変更になった。理由としてはイカズチは火力としては十分に武装が備わっている点、また連携するには16式の方が火力不足であり射程にも大きな差が出てしまい効果的な支援が見込みにくい。それに比較し、第三戦隊のような歩兵戦力には携行出来る火力には限りがあり全体の火力向上と後方支援を担える16式は配置変更となった。


柳曹長が16式から降りてきた。

「柳曹長、調整は終わりましたか?」


「あぁ、こいつはお前らが使っているタイプ:イと比べれば赤ちゃんみたいなもんさ」


「そんなもんですか?」


「こいつは既製の16式をバッテリー動力型に手を加えただけの車輪で進むだけ、だがタイプ:イは二足歩行だ。あの巨体を支えるのに全てがこの足にのし掛かるからな。だから、それだけ整備にも手間がかかる遣り甲斐のある装備だ」


「いつもありがとうございます、オレ達が戦えるのは柳曹長達がいてくれるからです」


「礼には及ばんさ、それが俺達の本分だ。ただな、俺が現役の間にこんな装備が実用化されるとは思ってはいなかったがな」


「確かに……人間の進歩は早いですね。ちょっと昔は馬に乗って刀を持って戦っていたのに」


「人間はもの作りが好きってことさ」


「では、そろそろブリーフィングなので失礼します」


「おう」


オレは柳曹長に敬礼をして指令室横の大広間でブリーフィングを受けた。


今回も同じく第一戦隊が進行し、第二戦隊が砲撃支援する流れだ。ただ、足軽が出現したらそいつらはスルーして第三戦隊が対応することになった。まぁ先に話があった通りだ。第三戦隊は3両の96式と3両の16式で進行する。

そして予定されていたT:ASの実地試験には新たにT:AS1型改が使用されることになった。

"改"と言っても今までのT:ASにプレートアーマーが追加されただけの代物だが、耐弾性能は上がったがその分機動力が若干低下している。どれだけ使えるかってところか。相手は弓矢だから貫通はまずあり得ないだろう。



控え室でIMSに着替えたオレと谷口で今の篠崎家について話していた。


「何か不思議だなぁ」


「何がです?」


「何がって後輩が姉と婚約して実家で同棲するようになって、元親善大使に元アイドルと宮殿メイドがいきなり許嫁ですって紹介されて一つ屋根の下で暮らし始めて、加えて異世界の獣人の少女も同居してさオレの人生がガラッと変わったなと思ってな」


「まぁ確かに。でも、先輩の家族になれて自分は嬉しいですよ」


「どうした急に?気持ち悪いな」


「話してませんでしたっけ?自分、父子家庭なんですよ。婆ちゃんと父さんと3人暮らしで、普段は婆ちゃんが居たから寂しくはなかったですけど、あぁやって皆でワイワイご飯を食べたりするの憧れていたんです。だから、好きな女性と会えて大人数で楽しく過ごせる篠崎家は自分にとって守りたいかけがえのない帰る場所ですよ」


「そうか、そんな風に思われてたなんて嬉しいね。可愛い後輩がこんな良い奴だとは…」


「今さらですか?」


「ハハハハ」

思わず笑ってしまった。谷口も笑っている。

これが家族ってもんなのかな。

この戦いで谷口は死なせたくないと心の底から思った。姉ちゃんを必ず幸せにしてくれる奴だし、何より篠崎家を大切に思ってくれているんだ。オレにとって義理兄になる前に親友だ。

そんな親友がいれば安心して戦える。


そんな話をしていたらエリーと美優紀が入ってきた。


「あら、何を楽しく話していたのかしラ?」


「私たちも交ぜてよ」


「男同士の話」

オレはイタズラっぽく答えた。


「妬けるわネ〜ねっ美優紀?」


「いいわよ、美咲お姉さんに言いつけるだけだしぃ」


「いやいや、告げ口はよくないですよ」

谷口が慌てる姿が面白い。


戦いの前だって言うのにこの時間が楽しく感じる。


そんな時間はを壊すかのように警報が鳴った。しかし、"レッド"ではない。


《イエローアラート!イエローアラート!特甲戦の隊員は倉庫に集合せよ!繰り返す……………》


「何でしょうかね、イエローだなんて」


「行ってみればわかるさ、行くぞ」


オレ達はタイプ:イが格納されている倉庫へと向かった。


---


大越大隊長を正面に全員が隊列を組んで状況説明を受けた。マリアちゃんにエリーや竹田先生と渡辺事務次官は大隊長の横に並んだ。


「先程、哨戒班からの連絡が途絶えたことが判明した。最後の定時連絡から1時間が過ぎている。これは哨戒班に何かしらのアクシデントが生じたと指令部は判断した。よって、これより哨戒班の捜索を含め敵が潜伏していないか索敵のため出撃命令が下された。山田三尉」


「はっ!これより第一戦隊のアルファチームが先攻、オメガチームが後攻で進行し、第二戦隊は駐留基地前方で展開、第三戦隊はいつ要請が来ても出られるよう搭乗待機だ。以上!各自準備にかかれ!」


「了解!」

全隊員が敬礼をし持ち場へ移動を開始した。


オメガ3のコクピットへ搭乗しようとした天道技曹の元に1人の少女が駆け寄った。


「……輝矢!」


呼び止められた天道技曹が振り向いた。そこにはいつも一緒に過ごすことが多い少女がいた。


「なんだ、マリアか。急にどうした?」


「なんだとは何よ!人が折角気合いを入れに来てあげたのに!」


「マリアが気遣いするなんてな珍しい。でも、生憎俺はいつも気合いは入っているよ」

余裕な表情でマリアに応えた。


「……じゃあ何で手が震えてるの?」


「…っ!?」


「輝矢は昔からそうだよね……普段から自信満々で何をやっても卒なくこなしちゃうから周りの人達は流石天才だねって言ってる………けどね………だけどね、私は知ってるもん!!輝矢は本当はいつも"天道"の名前のせいでいつもプレッシャーが襲ってきて不安で不安で仕方ないから、人より沢山努力してるって………だけど、いつも左手の震えに悩まされてること……私が気付かないと思ったの?」


絶対に周囲には気付かれないように隠してきたことが見事に見抜かれていた。

いつも妹のように接していたマリアが今の天道技曹の目には一人の女性として写っていた。その真剣な表情、眼差しは立派な大人の女性である。


「だからね……」


身長155センチのマリアが背伸びをして天道技曹の肩に両手を添えてきた。


「!!!」


マリアは天道技曹にキスをした。


互いにゆっくり顔を離した。


「マリア……俺でいいのか?」


マリアが恋する乙女の顔になっていることに気付いた。


「輝矢だからだよ。これで不安はなくなったかな?」


「………」

左手の震えが治まっていた。


「あぁ不思議とな。お前のお陰だ」


「ならよし!………輝矢、タイプ:イは万能じゃないからね。まだまだ改良が必要な兵器なの……だから、あまり無理しないで」


「わかってるよ。じゃ行ってくる……ありがとうマリア」


「どういたしまして、輝矢は昔から手がかかるんだから」

そう言ったマリアはあまり山が出来ていない胸を広げ、両手を腰に当ててお姉さん気取りのポーズをとった。


そんなオメガ3から離れてハンガーに繋がれていたアルファ2に浩司は搭乗し起動準備にはいっていた。

起動自体にはそんなに時間はかからない。


この起動OSの画面も見慣れたな。


不意に映像通信が入る。指令部からだ。


「コウジ…」

「浩司くん」


「二人ともそんな顔しないで。前のようにすぐ帰ってくるよ。それにオレにはこれがある」

オレは右手で首に飾っていた御守りを二人に見せた。

二人の不安がこれで解消されるなら、必要なパフォーマンスはするさ。


「そうよね、だから言ったじゃない美優紀。コウジは大丈夫だって!」


「いやいやいや、エリーさんさっきまで私よりオドオドしてたよね!?」


「ありがとう二人とも。それじゃ行ってくるよ」


「気を付けてね」

「気を付けてネ」

二人の声が重なった。

オレは帰らなくちゃ。待っている人がいるのだから………


《識別信号取得》

《全システム、オールグリーン》

「タイプ:イ、コールサインアルファ2起動よし」


順次、起動完了の報告が無線に入ってきた。

そんな中でオレは疑問を感じていた。


今までのオーガ勢力出現パターンから考えるとこれは異例…いや、異常だ…

これは何かしらの奴等の作戦行動なのか?

でも、発光現象が確認されていないからオーガ勢力とは無関係のイレギュラーが起きているのか?………今すぐに答えは出ないか…


「全機起動完了、では第一戦隊出撃する!」


千葉隊長の号令でオレは思考を切り替えた。


浩司は何か引っ掛かるものを感じながら鉄の巨人を発進させた。


---


「山田三尉、ドローンの映像が不鮮明でこれ以上の偵察は無理です」

岸本士長がお手上げな手振りで告げた。


「仕方ないな。楠木三曹、今ある情報をまとめて予測地を割り出せるか?」


「可能です」


「やってくれ」


「了解」

急かさず彼女の手がキーボードを叩いて凄まじいスピードでデータがまとめられていく。


《こちらタートル、第一戦隊各員へ。ドローンを偵察に出しましたが天候の影響からかデータ送信が不良のため有益な情報はないわ。だから、地形図に哨戒班のパトロールルートを重ねて、そこから最後の定時連絡から時間を逆算し消息を絶った大体の位置を割り出して敵が潜伏しやすい場所のデータを送る》


《アルファ1、了解》


《聞いての通りだ。各自データを確認しろ》


オペレーターの席に着いた楠木三曹の声色から気が引き締まる。


《アルファ1、これならパトロールルートよりチーム毎に若干左右に広がった方が索敵は効率的ではないでしょうか?》

オメガ1の西曹長から無線が入った。


確かに…このまま各チームがパトロールルートを進むだけなら哨戒班の二の舞になる可能性もある。

タイプ:イの走破力なら多少地形が悪くても問題ないはずだ。


《よし、オメガ1の案で行くぞ。ただし、チームが互いに支援出来る範囲で広がる。各自の距離を確認しつつ生体レーダーに注視しろ》


《了解》

命令通りに各チームは左右に展開しつつ進軍することになった。



もう少しで楠木三曹が示したポイントに到着する。ここまで進軍して何も起こらない。てっきり途中で駐留基地に向かってくるオーガと会敵するだろうと思っていた。

敵がいるという先入観があるからなのかやけに静かに感じてしまう。やはりこちらの行動を読んで何処かに潜んでいるのか?………




そうオレが思考を巡らしていた時に起こった。

オレの自衛官人生を左右する出来事が……


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