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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第3章 2つの世界》
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第27話 覚悟

篠崎家の今日の夕飯はすき焼きである。みんなで食卓を囲んで食べる飯は旨い。

今日はアイシェちゃんと姉ちゃんが担当して作ってくれた。

アイシェちゃんも日本料理が上達してきてオレの胃袋はもはや3人の手料理なくしては生きてはいけない様子だ。


明日からまた長期任務に入る……その前にきちんとアイシェちゃんに伝えるべきか悩んだ。


何故なら、戦争が終わったにも関わらずいつ死んでもおかしくない任務についているからだ。


美優紀は同じ自衛隊員だから理解はある。エリーについては仕事柄"何と戦っている"かは知っているから危険性は理解はしているはず。


ただ、アイシェちゃんはこの件に関しては全く繋がりがない。一般人の立場だ。


今、オレには3人の許嫁かいる。

出来ればこのまま楽しく一緒に過ごしていきたいがいつ命を落とすかわからない。


突然、近くにいた人間が死に一生会えなくなってしまう……こんなに辛いことはない。


もしもの時に"覚悟"をしといてもらったほうがいいだろう……


アイシェちゃんにもきちんと伝えよう。


そう心の中で決心したら良い匂いが居間に充満していた。


「はい、プリーナちゃん熱いから気をつけてね」


「はぁい、アイシェお姉ちゃんありがとう」

プリーナちゃんもすっかりうちに馴染んでいて何よりだ。

思いの外、じいちゃんがプリーナちゃんを可愛がっていて毎日色んな遊びを教えている姿をみる。


「浩司様、どうぞ」


アイシェちゃんが笑顔で器に移したすき焼きをオレに渡してくれた。

なんて気が利く素敵な子なんだ……


「ありがとう、アイシェちゃん」

オレは早速一口戴いた。


「う〜ん…旨い!!」


「本当ですか?!良かったです」

アイシェは笑顔で首を少し傾け可愛さがさらに強調された。これは計算された仕草ではなく自然とでたものだ。


アイシェちゃん、可愛いなぁ……


「あのね〜私も作ったんですけどー」

美咲は少しムスっとした顔で言った。


「美咲さん、美味しいよ!おかわり貰ってもいいかな?」


「良かったぁ隆くんどんどん食べてね」


「ありがとう美咲さん」


「エリーさん、卵を割って入れるのよ」


「あら、日本食は生卵を使う料理が多いのネ。戴きます………う〜ん…デリシャス!美味しいワ!」



夕食を食べ終わりプリーナちゃんを寝かしつけに両親とハー助が居間から離れ、じいちゃんも自室へ戻ったタイミングで切り出した。


「皆、聞いて欲しいことがある。大事な話しだ」


いつになく真剣な表情で切り出したことでエリー、美優紀、アイシェちゃんは何かを察したのか真面目な面持ちになった。


「美咲さん、僕からも大切なお話があるので部屋に行こう」


「……うん」


悪いな谷口。気を遣わせたな。


谷口と美咲が退室したのを見届けてから浩司は話を切り出した。


「……オレと谷口は今"あるモノ"と戦っている。仕事柄美優紀とエリーはすでに知っているが極秘事項だから細かなことは言えない……」


アイシェは真っ直ぐ浩司を見つめた。


「"あるモノ"ということは、国家や人間が相手ではないということでしょうか?」


流石、宮殿メイドのアイシェちゃんだ…察しが良い。


「そう、人間ではないんだ。だからねアイシェちゃん……君にも知らせたかったんだ。多分、美優紀とエリーは危険性を理解しているから最悪な結果になればどうなるかは予想はしていると思う。アイシェちゃんだけが知らないのは酷なことだと思って今この場で伝えたかったんだ。オレはいつ死んでもおかしくない任務についている……自分勝手かもしれないけど…戻って来れなかった時の"覚悟"をしといて欲しい…」


オレが話し終わっても真っ直ぐに見つめてくるアイシェちゃんはどう思っただろうか……


アイシェは何か昔の出来事を思い出すかのように目を瞑り、そして静かに目を開いた。


「…………私も浩司様の仕事には理解をしているつもりです。覚えていらっしゃいますか?あの日、浩司様は身を挺して私の命を助けてくれました。あの時に助けて頂いていなければ今の私はいないでしょう。こうして異国の地に来てエリーさんや美優紀さんに皆さんと一緒に楽しく寝食を共にすることは出来なかったことでしょう。ここにいるアイシェ・ジブラは身も心も既に浩司様のモノです。私はあなたの妻に成るべくここにいるのです………覚悟は出来ています」


オレはただただ嬉しかった。

果たして今この場においてこの感情が正しいのかわからない。

でも、真っ直ぐに気持ちを伝えられたら嬉しくない奴なんていないはずだ。

そんな風にアイシェちゃんを見つめ返すことしか出来なかった。


「ただ、浩司様…1つだけ約束をしてくれませんか?」


「なんだい?」


「必ず生きて帰って来て……私をお嫁さんにして下さいね」


アイシェちゃん強がっている笑顔がとても愛おしかった。言葉ではああは言っているが不安で堪らないはずだ。

16歳の少女に"死ぬかもしれない"というのは重いのかもしれない。

ただ、彼女は真剣にオレとの将来を考えてくれているんだ。

オレも隠し事はせずに伝えなければいけない。


でも、まさかアイシェちゃんから逆プロポーズを受けるとは思わなかった。


オレが返事をしようとした時、横から黙って見過ごすことが出来ない2人から咄嗟に遮られた。


「アイシェ、抜け駆けは許しませんワ!コウジ!私とも結婚しなさイ!」

エリーがたわわな胸と顔を突きだしてきた。


「2人共ズルい!!浩司くん!私ともよ!」

美優紀も可愛いい顔を突きだしてきた。


「…あぁ。だから、3人には心配をかけるけどよろしくな」


あれ?今、オレは3人と結婚をする約束をした形になるのかな?…………

まぁなるようになれだ。


「エリーさんに美優紀さんも無理はしないで下さいね。私たちは浩司様の許嫁同士、これからも浩司様を支えていきましょうね」


「もちろんよ!」


「じゃぁ今日は皆でくっついて寝ましょうカ!独り占めはダメですワよ!」


「異論なぁし!」

「良いと思います!」


こうしてオレ達は普段と違っていつもよりも寄り添って寝ることにした。

でも、空いているのは左と右だけだよ?

あともう1人はどうやってくっつくのかな?


そんな疑問を持ちながらお互いのこれからの無事を祈りつつ皆仲良く寝室へ向かった。


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