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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第3章 2つの世界》
22/66

第21話 偵察者

先日の大講堂室での話は衝撃的だった。

余りにも現実離れの話だったからか。



先日の大講堂室にて……


大隊長の説明が続く、

「────コードネーム"オーガ"……これが我が隊の目下(もっか)の標的だ」


大型モニターに写し出された静止画は目玉が一つしかない巨体な生物が何かを投げつけている瞬間を捉えた物だ。


「中々インパクトがあっただろう…私も司令部から聞かされた時は疑ってしまったよ……この地球上にこんな生物がいるはずがない…と」


「しかし、現実に"コレ"は存在するのだ…諸君は"コレ"が宇宙人と言われれば信じるかな?…残念ながら"コレ"は宇宙人…つまり異星人ではない…異星人は過去に何回も地球に飛来して来ている……が、"コレ"は異星人ではないと上は考えている」


何と!?今、宇宙人はいると政府が正式に認めているってこと??


会場内がざわついた。


「では、次にこれを観てもらおう…」


大型モニターが切り替わった。

何やら動画のようだ。

撮影者が移動するたびに画像が揺れているな。



うん?犬……いや…人だ…女…の子?


《…………ニネップ…ヤー………オチカ……オチカ……》



「この映像は特定秘密の部類に入るため漏洩したら重い処罰が待っているからな……」


おいおい、見せた後に言うとか手口が汚いぞ?


「さて、この映像の少女は観ての通り人間ではない。カテゴリーとして"獣人"と呼称している。この獣人の少女はとある村の奥から突然現れ、村まで逃げてきたらしい。」


おぉ、獣人ですか…ファンタジーだな…


「問題はこの後だ……この映像はコンバット・ウォーカーの情報と同じく特別防衛秘密の部類になるからな、先程よりも漏洩時の処罰は重いぞ」


何なんだよ…そんなこと言っても見せる気じゃん。


戦闘映像が流れる。


《『9時方向!!不明な(もや)が出現!靄に触れた軽装甲車が次々になぎ倒されていきます!』


『赤外線ゴーグルで捕捉!靄の中に……何か大きな……巨人みたいな影が見えます!』


『よし、迫撃砲隊!撃ち方よーい!…てぇー!』


『着弾確認!……状況送る……………ダメだ!対象の動きを確認!生きている!』


『クソ!……飛行隊!上空より制圧射撃を要請!』


『了解、目標100メートルまで近付き30ミリ機関砲で制圧射撃を実施する』


『火気管制、ロック解除。30ミリ機関砲制圧射撃。ファイヤー。』

ドドドドドドドドド……………………………


『……………────』


『初弾装填よし!照準よし!…車長!』


『3発制限射……テェ!!』

ボン!ボン!ボン!………


『……二発も直撃したんだぞ……何なんだよ……』》


映像が切れた。


場内は静まり返っていた。


「驚きを隠せないようだな。アパッチと96に軽装甲機動車を軽々投げつけて簡単に破壊してしまった……この一つ目の"オーガ"は地球上にいるどんな生物よりも腕力が優れているとの見解で、知性が備わっていると分析している。その根拠は数度の戦いにおいて奴らは"威力偵察"をしているとのことだ」


映像の最後には辺り一面が火の海になっていた。

今までの戦場では観たことがない惨状だった。

これと戦うのか?その為にコンバット・ウォーカーを作ったのか?

しかも威力偵察だと?そしたら、奥に控えている敵兵力は3倍以上になる…


「何故、コンバット・ウォーカーが作られたのか…これで諸君は理解出来ただろう。政府はこの"オーガ"勢力と戦う為にコンバット・ウォーカーを急遽開発・実戦配備を決めたのだ。我々が中東欧州戦争で人間相手に戦っていた時に日本に残っていた機甲科部隊が何とか持ちこたえ戦っていたのだ。オーガ勢力との戦闘での殉職者の数はこの度の戦争で散っていった自衛官と同じ人数に匹敵するらしい……」


場内の空気が重くなった。


「諸君はそんな散っていった者達を弔う戦いに参加する……我々の仲間が人知れず守り抜いた戦場だ。覚悟もって挑んでくれ!…それでは新しい仲間を紹介する」


楠木若菜(くすのきわかな)三曹!」


「はい!」


「楠木三曹は第一戦隊の96式改のオペレーターを務める」


「続いて楠木彩菜(くすのきあやな)三尉!」


「はっ!」


「楠木三尉は第二戦隊隊長兼イカズチ一号機の砲手を務める」


同じ名字…姉妹かな?


「続いて松井忠(まついただし)三尉!」


「はいっ!」


「松井三尉には第三戦隊の隊長を務めてもらう……では、各隊員の名前を読み上げる───」


新しい隊長に隊員の紹介が終わり作戦が決定されるまで各隊は装備の点検に模擬戦をすることとなった。


------------------------------------


第一戦隊事務室にて……


「では、我が戦隊に新しい隊員を迎えることになった、楠木三曹だ」


「楠木若菜…です…よろしく…お願いします」


「よろしくな!」

バシン!っと急に千葉隊長は楠木三曹の背中を叩いた。


「キャ!!」


「隊長、セクハラ〜」

谷口が言った。


「おぅ、すまん気合いを入れたつもりだ。ただな谷口や……」


「なっなんですか?」


急に千葉隊長の凄みを感じた。


「この隊で一番恐ろしく怖いのは楠木だぞ?」


え?だってこんなに辿々しい感じの彼女が?


「何せ楠木は陸曹教練で、彼女のオペレーティングはピカイチだ!わざわざ山田三尉と一緒に人材発掘してきんだぞ!…ただ…性格が…な…」


何?性格に難ありなの?モジモジしてる奴が?


「まぁ、これから96式改を含めた模擬戦を行うからわかるだろう。では、各自搭乗準備にかかれ!」


「了解!」

全員の返事が揃った。



今、演習場でアルファチーム対オメガチームで模擬戦を行っている。

96式改には山田三尉が実地監察として同乗し、運転手に山岸士長、砲手兼偵察ドローン操作手に岸本士長、オペレーターに楠木三曹、救護班として天道先生に美優紀も乗っている。


率直に言おう。

彼女(くすのき)は凄い。

逐一、チームがおかれている現状を伝え一手先を考え地の利を生かしたポジションへと誘導してくれる。また、タイプ:イから送られてくる各自のバイタルデータから体調・精神面をサポート……してくれている?のだ。…多分…彼女なりのやり方なのだろう…馴れるまで時間がかかりそうだ……


「おい!谷口三曹!移動が遅すぎ!何ちんたらしてるんですか!?のろま!早くポジションへ移動!…千葉隊長!援護射撃が薄い!きちんと弾幕張りなさい!!…おい篠崎!そんなにドタバタ移動したら相手にバレるでしょ!?もっと静かに移動しなさい!…何脈拍上げてるのよ!しっかりしなさい!!…オメガ!早く陣地を構築!アルファが来るわよ!!───」


観ての通りオペレーター業務になると彼女(くすのき)は人格が変貌する……


ねぇ、オレは一曹だよ?君より階級上なんだよ一応…なんでオレだけ呼び捨て?


あとから聞いた陸曹教練での彼女の噂は思った通りだった。

普段はいつもモジモジしているモジっ子がオペレーターの席に座った途端にジトっとした目がつり目に変わりインカムごしに罵声を飛ばしてくるのだ。

最初は周囲の男性達も外見に騙され「あいつは俺が守ってやらなくちゃ」なんて勝手に彼氏気取りな奴も出てきたりしたらしいが、いざオペレーターとして班を組んだら撃沈した奴は数知れず……何せ彼女のお姉さんの楠木彩菜も外見は綺麗なお姉さんでよく美人姉妹と有名らしいが

お姉さんも中々な俺様で姉御肌らしく"残念姉妹"と陰で噂されている。


「………」

「………」


そんなオペレーターの姿を見ていた天道先生と美優紀は絶句していた。


「ねぇ、山田三尉?良い人材を発掘して来たのよね?」

天道は彼女に聞こえないよう耳打ちした。


「…まぁ、仕事は完璧…だろ?…」


山田三尉も噂は聞いていたが生で見たのは今が初めてだった。


《……なぁ千葉…俺達はみる目があったのか?》


と、心の中で千葉隊長に問いかける山田三尉だった。



一応、アルファチームが勝利という形で模擬戦は終了し基地へ帰投した。


両チームタイプ:イをハンガーに固定しコクピットから出てきた。


出迎えたのは美優紀と天道先生だった。


「…みんな…大…丈夫?じゃないよね……」


美優紀はパイロット全員が手を地面に付けてうなだれている姿を観て次にかける言葉が出てこなかった…


「……隊長、意見具申です……チェンジでお願いします……」


「……却下…」


「マジですか…」

谷口は心底ガッカリしている。


「…あれはな…口は悪いが皆を思っての発言だから…慣れろ!」


96式改からモジモジと彼女がこちらにやって来た。


「あの…皆さん…引き…ましたよね…すいません…自分…でも…直そうと…したんですが…どうしても…血が…騒いでしまい…」


血が騒ぐって……でも見た目はジト目で美人なんだけどね…あれだ…"ツンモジ"だ!

ツンツンとモジモジが合体。

うまくやっていけるか不安しかない……


山田三尉が大声で伝えてきた。

「今日はここまで!大隊長からパイロットはもう退勤しろとのことだ!」


「みんな、今日はここまで…お疲れさん…」

「お疲れさまでした…」

「お疲れさんでした…」

「お疲れ様でした…」

「お疲れ様です…」

「おつかれさまです…」



そんな第一戦隊に作戦が通達されたのは2日後のことだった。



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