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タクティクス・コンバット・オブ・オーガ  作者: トビオ
《第1章 別れと別れと再会と》
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第1話 英雄の消失

 朝6時丁度。信号ラッパが鳴る。


 駐屯地内でしている隊員は皆ラッパの音で目覚め素早く戦闘服を着て集合し点呼を取る。

 その後食堂にてオレの自衛隊生活最後の自衛隊飯を食べる。

 

 米飯には麦やら粟が混ぜられ日々厳しい訓練に勤しむ自衛官にとっては大切な米飯(えいようげん)である。新米だった頃に一度食堂勤務をしたことがあるが酷いもんだった。


 駐屯地にある食堂飯は自衛官自ら作っている。もちろんお世辞にも美味しいとは言い切れない。初めて料理を作ったという奴が居るくらいだ。野菜の切り方から教わる。


 ただ"あの一件"から飯を食べても味がしない…『病んでいる』と自覚している。オレの人生で"あの一件"は忘れることの出来ない経験であるから。

 


 8時になり大隊長室に足を向けた。普段は他のパイロットや整備班と一緒に控え室にて談笑している。


 やれあそこの飲み屋に可愛い子がいるやら、真面目に愛機の調整について話し合ったり・・・


しかし、その話し合う仲間の殆どが暗い表情で下をむいたままただ座っている。ここに居る奴らは皆整備班だが整備する()()がないのだ。


 アイツに全て壊されたからな。


 そんな雰囲気の控え室を通りすぎ、階段を昇り3階にある大隊本部室に入る。


「失礼します。」入り口一歩入ったところで脱帽し上半身45度曲げて敬礼する。


「大隊長が奥でお待ちだ。」


「はい」

 と答えて大隊長室の前に立つと後ろから


「本当にいいのか?まだ除隊申請は取り下げることはできるんだぞ」

 と声を掛けてきたのは部隊設立当初からお世話になった山田三等陸尉だった。オレは回れ右をして振り向くとデスクに座りPC画面から目をこちらに向けていた。


「自分はっ・・・無力・・でした。━━"奴"を倒すことは出来ましたが━━千葉隊長を助けられませんでした━━」


「千葉を救えなかったお前の気持ちはわかる。だがな俺達は自衛官で国民の生命と財産を守るのが仕事━━命を国に預けた身だ。それを千葉は一番よく解っていた」


「……はい。自分は隊長からいつも聞かされてましたので理解してます━━」


「なら、なぜ自衛隊を辞める必要がある?ココ《特甲戦(とっこうせん)》をさればいいだけだろ」


「━━自分はやりきりました」


「…そうか……まぁ俺の予想ではお前は戻って来ると思うがなっ」


「━━お世話になりました」


「達者でな」


オレは再度回れ右をして深呼吸をしてからノックをした。コン、コン、コン…

「篠崎一曹入ります!」


入室した篠崎一曹の背中を不適な笑みで見つめる山田三等陸尉であった……


「入れ」


「失礼します」


 室内にはこの部隊の大隊長である50歳手前の渋さが漂う大越二等陸佐が仁王立ちで何故か後ろを向いている。

 いや━━窓から外を覗いている様にもみえる。


「今日で最後だったな━━」


「はい━━」


「山田との話は聞こえていた━━」


「はい━━」


「私から言うことは何もない━━━━しかし、ただ1つ………我々《特甲戦(とっこうせん)》は設立目的から服務規定も他の自衛官と比べて若干特殊だ。解るね?」


「はい━━」


「よろしい。━━さて、その服務規定だが我々の宿敵である"アレ"と取り扱っている先進技術の塊である最新鋭の兵器…と言ってもまだ試作試験段階だが…この二つの情報は国家機密だ。おまけにその情報を持っている隊員がとても優秀ときた━━そして国外の要人にも顔が利くといった極めつけだ━━」


「・・・」


急にこちらに振り向くと顔が何か企んでいるような表情をしている。


「そこでだ!…そんないらん心配をしている上層部に我々の意見を具申したら中々面白いことに新しい規定が追記されることになった」


「━━どのようなことでしょうか」



『特殊戦術機械化装甲戦闘大隊(以下当部隊と呼ぶ)における服務規定第七十一条(新設)では該当隊員においては下記の制約を課す』

1.当部隊で知り得た情報を他言してはならない。但し、日本国家機関やそれに属する特別国家公務員又はそれと同等の公務員にはその限りではない。

2.上記1.の違反が確認された時点より強制的に収監される。

3.特別な状況下において自らの意志による原隊復帰することが可能である。※条件あり



「━━っと上層部はこの"制約"を告げてきた。言葉はあれだが悪いことだけではないぞ。情報漏洩抑止のために君には今後の就職先は国が指示した有名優良企業に就職してもらう」


「━━(それって天下りにならないのかな…)」


「監視がしやすい環境と余計な虫を払うためとのことだ。・・・きちんと正規の手続きを踏むから心配するな」


「そういうことでありましたら、自分も助かります」


「━それと制約の3.の"条件"についてたが━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」


 


 オレは大隊本部室を出て隣の隊舎に行くため渡り廊下を歩いていた。

 途中で開いていた窓から秋の陽気と一緒に自衛隊独特の掛け声が聞こえてきた。


『イチ、イチ、イチニー』『ソーレ』


 他の科の部隊の体力錬成だった。オレは常に一番を目指して頑張ってきた。射撃訓練や体力検定ではいつも同期の中では一番か二番を取っていた。

 

 オレは何か"人の役に立つ"ことがしたくて、高校卒業と同時に一般曹候補生として入隊した。特別勉強が出来る方ではないが悪くもないと自分では思っているし、何より空手の実力を買われ試験に合格できたと今でもそう考える。



でも……もう自衛官を続けるには心が折れた。

慕っていた人を守れず、仕舞いには自分だけがこうやって生きているのだ。


大隊本部の正面玄関に近づいた時、急に声をかけられた。


「………やっぱり去るのね…」


オレは振り返り彼女に視線を向けた。左目だけは上手に動かせなかった。眼帯をしているから相手には気付かれることはない。


「……先生には命を救ってもらい、本当に感謝してます……ですが…もう……気持ちが……心が…ダメなんです」


「あまり思い悩んだらダメよ、あの人のことは……あの人はただ、自分の命より部下が大事だったってこと、君にもいつか解るときが来るわ。自分の命より大事なモノがね。それまでゆっくりしなさい。左目……うちの病院でフォローするからね」


「ありがとうございます……それでは」

敬礼をして彼女に背を向け玄関を出た。


玄関には二人の女性が迎えに来ていた。

二人とも複雑な表情を浮かべているのがわかった。

「浩司くん…………」


「コウジ………」


「………家に帰ろうか…」


白いSUVに乗り込み駐屯地の正門へ向かう途中に国旗が見えた。



結局オレは何がしたかったんだろう………

入隊した頃を思い出していた……

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