表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毛の勇者、イキる  作者: 矢島 零士
6/6

十二人の近況

 このところ、僕はセレナと一緒に昼ごはんを食べることが多いのだけど、今日、セレナは王女としての公務で外出していて、夕方まで帰らない。


 午前中の訓練を終え、久しぶりに自室で一人飯しようと思っていたら、ゴメスから声をかけられた。

「ウシー、昼飯、外で食べないか?」


 近頃、ゴメスは僕のことを『ウシー』と呼ぶ。

 ゴメスのフルネームはアルベルト・ゴメスなので、僕の方は『アル』と呼ぶようになった。


「おう、一緒に食べよう」


 この日、アルは午後から非番だ。

 僕は魔王退治に関して何も期待されておらず、僕がぶらぶらしていても文句を言う者はいない。


 結局、アルの知り合いが経営している店に行く。

 相談したいことがあるとアルから言われ、個室に入る。



 メニューを見て料理を注文した後、僕と一緒に召喚された十二人の近況を聞かされた。


 勇者をリーダーとする二つの六人組パーティーが作られたことや、勇者が二人ともレベル10以上になったことは以前に書いた。


 勇者の一人、真田丸仁サナダマル ジンは、レベル15になっていた。

 才能は、レベル6の『格闘技』。


 もう一人は女勇者の灰田ミラン(ハイダ ミラン)で、レベル14。

 才能は、レベル7の『剣技』。



 真田丸のパーティーは男六人。真田丸以外は、『剣士』『武闘家』『賢者』『僧侶』『聖女』が一人ずつだ。


 ハイダのパーティーは女六人。灰田以外は、『剣士』と『賢者』が各二人で、『聖女』一人。


 勇者以外のメンバーの大部分は、称号のレベルが4~6になっているのだけれど、落ちこぼれが二名いる。


 一人は、五利羅王(ゴリ ラオウ)で、レベル1の『聖女』。

 もう一人は、灰田パーティーの猫田未衣(ネコタ ミイ)で、レベル1の『賢者』。


 今のところ、猫田の方はパーティーのお荷物ではあるが、雑用を積極的に引き受け、仲間との関係は悪くないらしい。


 問題は五利の方で、昨日、ついにパーティーから除名された。

 アルの相談とは、五利のことだった。今日の午前中、五利は自室に引きこもり、訓練を休んだ。


「ウシー、五利のこと、どうしたらいいだろう?」


 僕と五利の関係は悪い。はっきり言って、嫌いだ。


「放っとけば?」


「そうもいかないんだ。隊長から俺が五利を指導するよう命令された」


 それは気の毒に。

 五利のことはどうでもいいが、アルは友達だ。知恵を貸すくらいは構わない。


「召喚されてから、五利は少しは進歩したのか?」


「全然。男なのに『聖女』で、才能が『手芸』だったせいか、モチベーションも低いみたいだ。一応、訓練には参加してたけど」


「『技能』も駄目か?」


「『暴力』を持ってるけど、レベル1のままだ。まあ、今では十二人の中で猫田の次に弱いから、仲間に暴力ふるおうとしても負けるだけだな。猫田をターゲットにすることも出来ないだろう、灰田たちからの報復が怖いから」


「かなり厳しい状況だな」


「ああ、困ったもんだ。ウシー、何とかならないか?」


「飴と(むち)


「え?」


「指導の基本だよ。まあ、鞭の方に効果があるかどうかは分からないけど、今の五利には飴が必要だ。自信喪失してるから、優しくしてやることだ」


「なるほど」



 そして数日が過ぎ、アルが僕に泣きついてきた。


「ウシー、五利をなんとかしてくれ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ