十二人の近況
このところ、僕はセレナと一緒に昼ごはんを食べることが多いのだけど、今日、セレナは王女としての公務で外出していて、夕方まで帰らない。
午前中の訓練を終え、久しぶりに自室で一人飯しようと思っていたら、ゴメスから声をかけられた。
「ウシー、昼飯、外で食べないか?」
近頃、ゴメスは僕のことを『ウシー』と呼ぶ。
ゴメスのフルネームはアルベルト・ゴメスなので、僕の方は『アル』と呼ぶようになった。
「おう、一緒に食べよう」
この日、アルは午後から非番だ。
僕は魔王退治に関して何も期待されておらず、僕がぶらぶらしていても文句を言う者はいない。
結局、アルの知り合いが経営している店に行く。
相談したいことがあるとアルから言われ、個室に入る。
メニューを見て料理を注文した後、僕と一緒に召喚された十二人の近況を聞かされた。
勇者をリーダーとする二つの六人組パーティーが作られたことや、勇者が二人ともレベル10以上になったことは以前に書いた。
勇者の一人、真田丸仁は、レベル15になっていた。
才能は、レベル6の『格闘技』。
もう一人は女勇者の灰田ミラン(ハイダ ミラン)で、レベル14。
才能は、レベル7の『剣技』。
真田丸のパーティーは男六人。真田丸以外は、『剣士』『武闘家』『賢者』『僧侶』『聖女』が一人ずつだ。
ハイダのパーティーは女六人。灰田以外は、『剣士』と『賢者』が各二人で、『聖女』一人。
勇者以外のメンバーの大部分は、称号のレベルが4~6になっているのだけれど、落ちこぼれが二名いる。
一人は、五利羅王で、レベル1の『聖女』。
もう一人は、灰田パーティーの猫田未衣で、レベル1の『賢者』。
今のところ、猫田の方はパーティーのお荷物ではあるが、雑用を積極的に引き受け、仲間との関係は悪くないらしい。
問題は五利の方で、昨日、ついにパーティーから除名された。
アルの相談とは、五利のことだった。今日の午前中、五利は自室に引きこもり、訓練を休んだ。
「ウシー、五利のこと、どうしたらいいだろう?」
僕と五利の関係は悪い。はっきり言って、嫌いだ。
「放っとけば?」
「そうもいかないんだ。隊長から俺が五利を指導するよう命令された」
それは気の毒に。
五利のことはどうでもいいが、アルは友達だ。知恵を貸すくらいは構わない。
「召喚されてから、五利は少しは進歩したのか?」
「全然。男なのに『聖女』で、才能が『手芸』だったせいか、モチベーションも低いみたいだ。一応、訓練には参加してたけど」
「『技能』も駄目か?」
「『暴力』を持ってるけど、レベル1のままだ。まあ、今では十二人の中で猫田の次に弱いから、仲間に暴力ふるおうとしても負けるだけだな。猫田をターゲットにすることも出来ないだろう、灰田たちからの報復が怖いから」
「かなり厳しい状況だな」
「ああ、困ったもんだ。ウシー、何とかならないか?」
「飴と鞭」
「え?」
「指導の基本だよ。まあ、鞭の方に効果があるかどうかは分からないけど、今の五利には飴が必要だ。自信喪失してるから、優しくしてやることだ」
「なるほど」
そして数日が過ぎ、アルが僕に泣きついてきた。
「ウシー、五利をなんとかしてくれ!」