セレナに告白
ダンジョンから王宮に戻るまでの間、セレナは明るく振舞っていたけれど、どこか無理しているように感じた。
セレナは、レッドローチとの遭遇の際に気を失ったことを気にしているのかもしれない。
夕食後、セレナの私室に呼ばれた。
僕が入室すると、セレナはすぐに人払いして、二人きりになった途端に謝罪してきた。
「ごめんなさい。私のせいでウスゲを死なせてしまうところだったわ」
「気にしないで、無事だったんだから」
「いいえ、私のミスよ。魔物の前で失神するなんて、言い訳できない」
「キス一つで許してあげるよ」笑って、セレナに言う。もちろん本気ではない。
すると、セレナは顔を赤らめ、黙って僕を抱きしめ、唇にキスしてきた。
ありがとうございます。キス、いただきました。
「責任とってくださいね」
セレナが優しく微笑んだ。
責任?
トラップ発動かよ。
この場合、どうするのが適切なんだろうか。
土下座する場面ではなさそうだし、結婚申し込みは早すぎる。
セレナの前で膝を折り、
「セレナ殿下のために頑張ります」と言っておいた。
セレナの満足する答だったようだ。
正直言って、セレナのことは好きだが、恋愛感情かどうかは分からない。
でも、セレナの笑顔を見ていたら、僕に出来ることはしてあげたい気がした。
「ウスゲ、ステータスのことは気にしなくていいのよ」
「……」
「私にはウスゲの本当のステータスは見えないけど、ステータスを隠していることは分かるの」
「セレナ…」
「私だって、王女としては落ちこぼれだった。普通、王族は最初からレベル5の才能を持ってるんだけど、私はオール1だったの。追いつくため、必死に努力した。だから、ウスゲが努力しているの姿を見て、友達になりたいと思った。そして、いつのまにか好きになっていたの」
まずい。
僕は冷静に行動するようにしているが、本当は感情的な人間だ。
今、猛烈に感動している。
セレナには、僕の本当のステータスを教えてもいい。そんな気持ちになってきた。
「セレナ、僕の本当のステータスを見せるよ」
「勇者だったのね!」
「才能は変だけどね」
「他の人には秘密にしておきたいのね」
「ああ、そうしてくれると助かる」
セレナは秘密を守ると約束した。名に懸けて誓ってくれたので、約束は守ってくれるだろう。
その後、セレナに僕の才能の使い方を説明すると、セレナは感心していた。
「ウスゲ、才能も素晴らしいわ。秘密にしなくてもいいんじゃない?」
僕はセレナに、ウスゲが薄毛を意味することを伝えた。
「一緒に王国に召喚された連中には、絶対に知られたくないんだよ」
セレナは納得した。
現在の僕の主なステータスは以下の通り。
名前: 臼井健
種族: 人間
性別: 男
称号: 勇者 レベル3
才能: 『高速育毛』『高速脱毛』『毛根移動』『毛質変換』『毛操作』
『ステータス隠蔽』『言語翻訳』
技能: 『剣技 レベル4』『身体強化魔法 レベル2』
『鑑定 レベル1』『火魔法 レベル2』