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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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75話 家を探しましょう

「家を探そうと思います」


 翌日の昼下がり、宿屋の一室でタマを抱っこしながらアリアが言う。

 リリにフェリ、それにステラはキョトンとした顔をしている。


「リリちゃんとフェリちゃんも一緒に暮らすことになりましたし、正直この宿では手狭です。みんなで伸び伸び暮らせる大きなお家を借りたいと思います」


 つまりそういうことだ。

 今、アリアたちは二人部屋を借りて無理やり生活している状態だ。


 リリとフェリはタマをモフモフし放題だし、アリアとステラの胸を枕代わりに使うなど楽しんでいるようだが、シングルベッドではかなり窮屈だ。


 それは他の生活空間も一緒である。

 四人と一匹が狭い部屋を行き来するのはなかなかに厳しい。

何よりリリもフェリも遊び盛りのため、隣の部屋にも迷惑をかけてしまう。


 ならばいっそのこと、大きめの借家を用意してしまおうという考えだ。


「なるほど。寝床を変えるというわけか、我は賛成なのだ。強者たる我には広い寝床が相応しいのだ!」

「広いお家だったらタマと駆けっこし放題じゃないの?」

「それは素晴らしいです〜!」


 アリアの提案に、ステラにリリ、それにフェリも賛成のようだ。


(ふむ、我が輩も賛成だ。今のままでは手狭であるし、何よりご主人はAランク冒険者になったのだ。身分に相応しい住居を構えるべきだろう)


 そんな理由で、タマもアリアに向かってコクコクと頷くのだった。


「ふふっ、タマも賛成のようですし、さっそく不動産屋さんに出かけるとしましょう♪」


 タマを撫でながら、アリアは皆を連れて宿を出る。



「いらっしゃいませ! ――って、アリア様!?」

「え――? は、はい、そうですが……」


 迷宮都市の商業区、その一角にある不動産屋へと足を踏み入れたところで、従業員と思しき娘がアリアを見るや否や素っ頓狂な声を上げる。


 いったい何事かとアリアが尋ねると……。


「し、失礼しました! まさかAランク冒険者ともあろう方が訪れるとは思いもしなくて……」


 ……そんな答えが返ってきた。


 アリア自身にまだまだ自覚は無いが、何度も言うようにAランクとは英雄に与えられるランクだ。

 今、迷宮都市は新たなAランク冒険者が誕生した噂で持ちきりだ。

 そんな噂の渦中の人物が現れたことで、従業員の娘は度肝を抜かれたのである。


「今日は借家を探しに来たのですが、何か良い物件を紹介してもらえないでしょうか?」

「も、もちろん大丈夫です、アリア様! どのような物件をお探しですか?」

「広い寝床がある家が良いのだ!」

「そうね! それならみんなで寝れるわ!」

「私もそれが良いです〜!」


 娘が要望を聞くと、横からステラ、リリ、フェリが割って入る。

 皆、一緒に寝ることができる物件をご所望のようだ。


「なるほど、広い寝室ですね。他にご希望は?」

「そうですね、できれば浴室が付いた物件が良いです。やっぱり自分の家でゆっくりお風呂に入りたいですし……ね、タマ?」

「にゃ〜ん(もちろんだ、ご主人)!」


 タマもアリアの意見に賛成だ。


 公衆浴場はゆっくり湯に浸かるどころか、水浴びが当たり前だ。

 それに管理が杜撰なため、覗きや衣類の盗難被害などもよくあると聞く。


 大切な主人であるアリアの肌を他の男に見せるわけにはいかない。

 衣類を盗まれ良からぬ目的に使用されるなど言語道断である。


「かしこまりました。そうですね……それならちょうど良い物件がご案内できそうです。よろしければこのままお連れしますが……」

「ぜひお願いします♪」

「かしこまりました。それでは参りましょう!」


 娘に連れられ、アリアたちは物件を目指す。



「こちらがその物件にございます!」


 商業区からゴンドラに揺られて十分ほどで居住区へと辿り着く。

 そこからさらに数分歩いた場所に、今回紹介される物件があった。


「二階建てですね、それに庭まで付いてます!」


 物件の外観を見て、アリアが瞳を輝かせる。


 紹介されたのは庭付きの物件だった。

 造りは木造、二階建てでそれなりの広さがあることが分かる。


「中もなかなかに綺麗ですので、ぜひご覧ください」


 娘が言いながら玄関のドアを開ける。


 確かに、彼女の言う通り玄関は小綺麗だ。

 靴箱などの収納スペースも見受けられる。

「あ、本当に中も綺麗ですね。ダイニングキッチンですか♪」


 玄関を通り抜け奥へと進むと、そこにはダイニングキッチンが広がっていた。


「キッチンは薪をくべて使うタイプのものですが、オプションで〝マジックバーナー〟に取り替えることもできますよ」

「なるほど、その方が便利そうですね……」


 娘の言葉にアリアが唇に指を当てて考える。


 マジックバーナーとはマナを蓄積してそれを燃料に火を起こす家庭用マジックアイテムの呼称だ。


 値段は大きさとマナの蓄積許容量にもよるが大体相場は金貨一枚となっている。

 迷宮都市であれば金貨二枚で四人家族が一ヶ月暮らしていける額となる。

 少々高い買い物になるが、薪をくべる手間と今後かかる薪代を考えるのであれば、マジックバーナーを買った方が良いだろう。


「ねぇねぇ、私は早く寝室が見たいわ!」

「私もです〜!」


 娘のスカートの裾をリリとフェリがくいくいと引っ張りながら言う。

 そんな二人の様子に苦笑しながら、娘は二階の案内を始める。


「この通り、二階には寝室が二つあります。片方の部屋は広めなのでダブルベッドを二つ置いても余裕があります。もう片方の部屋は一人用と考えた方が良いでしょう。実際にご覧ください」

「おぉ! 本当に広いのだ! これならみんなで寝れるのだ!」

「みんなで寝ればタマをモフモフし放題ね!」

「アリアさんとステラさんのおっぱいもポヨポヨし放題です〜!」


 寝室の広さを見て、ステラとリリ、フェリがはしゃぎ始める。

 そのはしゃぎっぷりはまるで小さな子どものようだ。


(ほう、もう一つの部屋もなかなか良いではないか。我が輩もたまには一人で寝たい時もある。そんな時はこの部屋を使わせてもらおう)


 もう片方の寝室を見て、タマはそんなことを考えながら満足げに頷く……のだが――


「タマ、もしかして一人でねんねしようと考えてませんか? ダメですよ、タマはお姉ちゃんのおっぱいの中でねんねするって決まってるんでちゅから♡」


 そんなセリフとともに、アリアに抱きしめられてしまう。


(むぅ、ご主人よ。最近我が輩に対する態度がどんどん赤子に接するようになってきている気がするぞ……?)


 赤ちゃん言葉で甘やかしてくるアリアに、タマはそう思わずにはいられない。


 実際、アリアは事あるごとに自分を守り、癒してくれるタマに、ますます愛情を募らせていた。

 過度な甘やかしも、その気持ちの表れなのである。

 それに、ステラというライバルに、タマを取られてはなるまいというのも理由の一つだ。


「ふぁ〜、タマちゃんは本当に可愛いですね。アリア様とともにアンデッドドラゴンに立ち向かったとは信じられないです」

「ふふっ、こう見えて、タマはこの中の誰よりも強いんですよ♪ 何度守ってもらったことか……」


 あまりに愛くるしいタマの見た目に溜め息を吐く娘に、アリアは微笑しながらタマの頭を愛おしげに撫でる。


 アリアの甘い匂いと柔らかな感触、それに優しい手つきに、タマは気持ち良さげに目を細めるのだった。


「ぐぬぬぬ! またアリアだけタマとイチャイチャしてズルいのだ!」


 そんなアリアとタマの様子に、ステラはお冠だ。

 大きな胸の前で両拳を握りしめながら、歯軋りしている。


「それでは最後にお風呂をご案内いたします」


 一階に戻り、トイレなどを案内してもらった後、ようやくアリアが楽しみにしていた浴室へと案内される。


「これは……露天風呂ですね!」

「はい、元々この家にお風呂はついてなかったのですが、前に住んでらっしゃったお客様がここに増設したのです。蛇口を捻ればお水が出てきますし、キッチンと同じく薪かマジックバーナーを使えばお湯にすることも可能です」


 案内されたのは裏庭だった。


 この家には裏庭へと続く出入り口がもう一つ用意されており、そこには少し広めの露天風呂が併設されていた。


 前の住人が増設したとのことだが、そのクォリティは高く、今使用している宿屋の浴場と変わらない――否、それよりも装飾などが凝っているように感じられる。


(ふむ、庭には囲いがついておるし、ここは居住区の外れであるからゲスどもに覗き見される心配もないであろう)


 露天風呂の造りに感心しながらも、タマはその辺のチェックを忘れない。


「アリア、我はこの家が良いのだ!」

「私もここが良いわ! これならみんなでお風呂に入れるもの!」

「同じくです〜! みんなでお風呂、楽しみです〜!」


 露天風呂のクォリティに、アリアが瞳を輝かせていると、ステラ、リリ、フェリもここが良いと盛り上がる。


「ふふっ……そうですね、わたしもここが良いと思います。即決にはいくら必要でしょうか?」

「家賃を半年分先払いしていただければ、すぐに成約とさせていただきます!」

「分かりました。ではみんな、ここに決めましょう♪」

「やったなのだ!」

「わ〜い! 新しいお家よ!」

「みんなで伸び伸びできるの嬉しいです〜!」


 ここにするというアリアの言葉でドラゴン娘とピクシー娘、それにドライアド娘がまたもやはしゃぎ出す。


 ひと月の家賃は平均より少し高めだったが、この条件であればそんなに悪くないだろう。


 何よりアリアはAランク冒険者であり、貯えもそんじょそこらの冒険者と比べ物にならないくらいのものがある。

 少し奮発しても問題なしだ。


「ふふっ、新しいお家も確保できました。タマ、これからたくさん〝にゃんにゃん〟しましょうね……♡」


 はしゃぐステラたちを尻目に、アリアはそう言って、こっそりタマの額に――ちゅっ……っと軽いキスをする。


 タマは驚き「にゃっ!?」と、小さく鳴き声を漏らすことしかできなかった。


 そんなタマを、アリアは頬を染めながら優しく優しく、その豊かな胸の中に抱きしめるのだった。


【コミック版のお知らせ】

本日(7/13)より、コミック版 《ベヒーモス》が「ヤングアニマル嵐」から「ヤングアニマル」本誌へとお引越しとなります!


本誌へ移行してさらにパワーアップしたタマやアリアたちの活躍をぜひご堪能ください!

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