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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第二章

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52話 ドラゴン娘の装備選び

「にゃぁ……。ステラちゃん、本当にそんな格好でいいにゃん?」

「もちろんなのだ! これが我にはピッタリなのだ!」


 都市の片隅、中規模な店構えの武具店――ヴァルカンズで、この店の女主人ヴァルカンが問いかけると、快活娘ステラは自信ありげに答える。


 朝食の席で、戦いが得意だとアリアに答えたステラ。

 それなら冒険者をやってみないか? とアリアが聞くと、ステラは目を輝かせて「やってみたいのだ!」と元気よく返事をした。


 アリアはステラが記憶もないのに適当に返事をしているのでは? と疑ったのだが……。


 そんなアリアに対し、ステラは「冒険者とはモンスターを倒し、金を得る人間のことなのだ!」と自分の持っている知識を披露した。


 ステラはアースドラゴンとして生を受けた時から、世界に対するある程度の知識を有していた。

 そして、彼女は前世で冒険者を名乗る者たちと、迷宮の中で戦った経験がある。そんな姿を見て、楽しそうだな……。と憧れを抱いたことがあった。


 つまり、アリアからの提案は彼女にとって嬉しいものであったのだ。


「でもステラちゃん、そんな格好をするなら、せめてガントレットくらいつけるべきだと思いますよ?」


 冒険者衣装に着替え、ご満悦な様子のステラに、アリアが心配そうな声で装備を増やすべきだと提案する。


 今、ステラの格好は非常に露出度が高い。

 上は革製のサラシのようなものを一枚巻いただけで谷間、それに下乳までもが露出してしまっている。


 下の装備もホットパンツ一枚のみだ。

 そして、このホットパンツのデザインがまた刺激的だ。


 サイズは極小なうえにかなりのローライズ。

 前から見るとほとんんど下着と変わらないような布の面積しかない。


 そして、後ろはもっと刺激的だ。

 なにせ彼女のむちっとした臀部……その上部が露出してしまっている……いわゆる〝半ケツ〟状態なのである。


 このホットパンツは、もともと一般的なデザインのものであったのだが、試着した際にステラが、「もっと動きやすいように面積を減らしてほしいのだ! 後ろ部分は尻を半分くらい出してほしいのだ!」とヴァルカンに注文をつけて出来上がったものだ。


「脚の防具は欲しいが、腕の装備は不要なのだ!」

「……? どうしてですか、ステラちゃん。ガントレットは不要なのにレギンスは欲しいなんて」


 アリアの提案に、チグハグな返答をするステラ。

 不思議に思ったアリアが問いかけるとステラは……。


「む? 口で言うより見せた方が早い、つまりこういうことなのだ!」


 そう言った後、「ぬん……ッ!」という言葉とともに力んだ様子を見せる。するとどうだろうか……・

 ステラの体、その腕部と臀部が淡い光に包まれた。光は輝きを増すとともに面積を増やしていく。


 そうすること数秒……。

 光が止むとそこには――


(な……!? この姿は!)

「ドラゴンみたいな腕、それに尻尾が生えてるにゃん!!」

「すごいです! もしかして、ステラちゃんは〝ドラゴニュート〟だったんですか?」


 驚きを隠せないタマとヴァルカン、それにアリア。


 ヴァルカンが言ったとおり、ステラの腕は通常よりも四倍ほどにも肥大化し、土色の巨腕と化していた。


 質感は、これまたヴァルカンが言ったとおり、爬虫類のような分厚いものであった。手の形も同じく巨大化しており、指の先からは鋭い爪が伸びている。


 さらに、ステラのホットパンツから露出した臀部からは、太い尻尾のようなものが生えていた。

 質感は腕と同じく筋肉質で爬虫類のような見た目をしている。


 そして、アリアがステラの姿を見て言った、ドラゴニュートという言葉だが……。この世界の人族の中には竜の血を宿したドラゴニュートという亜人が存在する。

 一見すると通常の人族となんら変わりはないのだが、自分の意思で体の一部をドラゴン化することができる種族なのだ。


 ドラゴン化した体から繰り出される一撃は強力だ。アリアも噂で素手で岩石を叩き割るほどだと聞いたことがあった。

 そしてアリアとヴァルカンは納得する。迷宮の中、記憶を失ったステラが生き残って入られたのは、彼女がドラゴニュートであったからなのだと。


 もっとも……記憶喪失という部分に関してはアリアたちの勘違いではあるが……。


「どらごにゅーと? なんのことか分からんが、この姿は我が力を解放した証なのだ!」


 ステラの半ドラゴン化の力は、ドラゴンから転生した際に備わったものだ。ゆえに彼女はアリアの言うドラゴニュートという種族ではない。

 ……はずなのだが、彼女の姿を見てタマはこんな思考を巡らせていた。


(この姿……。前世で見たドラゴニュートにそっくりだ。もしや、ドラゴニュートとはドラゴンが人間に転生した姿、あるいはその子孫なのではないか……?)


 タマは前世でドラゴニュートを見たことがあった。否、正しく言えば一緒に行動をともにしていた。

 騎士団の同僚に、ドラゴニュートの女騎士がいたのだ。彼女は戦闘になると今のステラのように腕をドラゴン化し巨大なバトルアックスを手に、猛威を振るっていた。


 そして、彼女とタマはパートナーであった。剛腕の彼女と多彩な剣技を放つタマのコンビは隊の中で最強と謳われていたものだ。


(そういえば、アイツもステラのように、体の一部をドラゴン化するために際どい格好をしていたな)


 二人で戦場を駆けた懐かしい思い出に耽るうちに、相棒であった彼女の格好を思い出す。

 彼女もまた、肩と臀部を露出した軽鎧を着ていたな……と。


「これならステラちゃんの格好にも納得ですねっ」

「んにゃ、冒険者衣装が決まれば、次は武器にゃ! ステラちゃんはどんな武器を使ってみたいにゃ?」

「おお、武器か! 武器というと剣や杖のことだな!」


 武器という言葉を聞いて、ステラは目を爛々とさせる。彼女はドラゴンであった頃、人間の冒険者たちが使う武器の数々を見て、自分も使ってみたい! と憧れを抱いていた。

 それがとうとう自分にも使えるチャンスが巡ってきたことに、興奮を抑えられないのだ。


「武器と言えば、剣! ……と言いたいところだが、やっぱり最初はアレ(・・)が欲しいのだ!」


 そう言って、ステラは店の中を何かを探し回るように歩き始める。


 何が欲しいのか聞いて、場所を教えてやろうとヴァルカンは思ったのだが、それはやめにした。

 何故なら、ステラがワクワクした様子で店内を物色する姿が、まるで宝探しをする子どものように思えたからだ。

 そんな楽しい遊びの最中に、答えを教えてやるなど無粋というものだ。


 ヴァルカンの心遣いを感じ取ったアリアも、優しげな微笑を浮かべてステラを見守るのだった。


「あった! まずはこれが欲しいのだ!」


 店の奥からステラの声が聞こえてくる。声のした方向へアリアたちがついていくと、そこは盾を扱うコーナーになっていた。

 そのど真ん中で、ステラが自慢げにあるものを掲げていた。


「んにゃ!? すごいにゃ! 黒鉄製の盾を片手で持ち上げているにゃ!」

「あれ? わたしの目がおかしいのでしょうか……。ステラちゃん、ドラゴン化を解いてますよね……?」

(素の状態で黒鉄の大盾を片手で持ち上げるだと!? いったいどんな地力を持っている!?)


 ステラが掲げていたのは身の丈ほどもある大盾だった。しかし、それはただの大盾ではない。

 大盾は鈍く光る黒銀色をしていた。その輝きは黒鉄と呼ばれる非常に重いことで有名な金属が使われている証だ。


 それをステラは、いつの間にドラゴン化を解いていたのか、純粋な人形態の細腕で持ち上げていたのだ。

 よく見れば多少重たそうにしているものの、通常の人間であれば片手で扱えるものではない。


 ヴァルカンにアリア、それにタマの驚きは当然というものだ。


 どうやらステラにはドラゴン化せずとも、かなりの膂力が備わっていることがわかった。


「ビックリにゃ……。まさかサクラちゃん以外に、あの盾を扱える子が現れるにゃんて……」

「あ、もしかしてあの盾ってサクラさんが使っていたものだったんですか?」

「そうにゃ、あの盾……〝メガシールド〟は、舞夜ちゃんとの子を妊娠して冒険者を引退する時に、サクラちゃんがこの店に置いていったものにゃん」


 黒曜鉄製の盾――ヴァルカンが言うメガシールドは、セドリックたちの所属する騎士隊のかつての隊長であり、その後ヴァルカンの冒険者仲間となったサクラの使っていた代物であった。


「サクラちゃんは上位スキル、《鉄壁》の使い手だったにゃ。致命傷以外のダメージ無効と、武具の重量無視というトンデモ効果だったにゃん」

「なるほど、そんなスキルがあったからこの都市最強のタンクと謳われていたわけですね」


 以前の仲間であったサクラのことを嬉しそうに語るヴァルカンに、アリアは納得した様子を見せる。


 そんなアリアとヴァルカンを尻目に、タマはそっとステラに語りかける……。


 ――意外だなステラ。好戦的なお前のことだ、我が輩は盾などではなく剣や斧に飛びつくと思っていたのだが……。

 ――おお、タマ! お前の方から念話してくれるとは嬉しいのだ! 転生する前は盾に興味などなかったが、我はお前との最後の戦いで防御の大切さを学んだ。あの時、我に防御する術があれば、お前に勝てる……とまではいかなくとも、生き残ることくらいはできたかもしれんしな。

 ――……そうか、盾に惹かれた理由は、我が輩の放った最後の一撃に恐怖してのものだったか……。

 ――ふんっ、滑稽だろう? 誇り高きドラゴンが、今や敵の攻撃に恐怖する小娘だ。笑いたければ笑うがいい。

 ――何を言う、敵の攻撃に恐怖するなど当たり前のこと。今までのお前の感覚がおかしかっただけだ。防御を学べただけ良かったと思え。……いや、お前に恐怖を与えた我が輩のセリフではないか。

 ――ぬ? 我を殺したことを気に病んでいるのか? 心配するな。我は気にしていないし、むしろ感謝しているのだ! お前に殺されることで本物の強さ、それに恋を知ることができた。そのうえ、こうして人間の姿となりお前に再び会うことができたのだからな!

 ――それは……。まぁ、お前がいいならそれでいい。


 ステラの再度の告白に、タマはそこまで言うと昨晩と同じように沈黙する。

 ステラの気持ちを真っ向から否定することができないのは、彼女を殺してしまった罪悪感と、まっすぐ過ぎる好意によるものであろう。


「動きやすい格好、防御力が揃えば……次はいよいよ武器なのだ! おお! アレがよさそうなのだ!」


 一方的に好意をぶつけるだけぶつけると、ステラはまた子どもような表情に戻り、剣の置いてあるコーナーへと突撃する。


 手頃な剣を手に取り、ブンブンと振り回しはしゃぐステラに、タマは心の中で苦笑するのだった。


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